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小さな体にマダニが……見逃しやすい寄生虫にご注意を

カテゴリ : 感染症・予防


保護猫活動で出会った、まだ生後1か月ほどの子猫ちゃん。
身体検査をしていると──ん? 汚れかな?
よく見ると、それは「マダニ」でした。
 
 
ノミと違って見逃されやすいマダニ
 
ノミは動き回るので、飼い主さんも「あ、ノミがついてる」と気づきやすいのですが、
マダニはじっとしているため、発見が遅れることも多いです。

気づいたときには、すでに血を吸ってパンパンに膨れている……
というパターンも少なくありません。

今回の子猫には、
まだ血を吸う前のマダニと、吸ったあとのマダニの両方がついていました。



画像では拡大しているのでわかりやすいのですが、
血を吸う前のマダニは本当に小さくて、じっと動かないため見逃しがちです。

実際、この子には5匹のマダニが確認されました。

すぐに駆虫薬を使用して、すべて駆除しました。
 
 
マダニが媒介するSFTSとは?
 
マダニは、**SFTS(重症熱性血小板減少症候群)**というウイルス感染症を運んできます。

人にも猫にも感染し、命にかかわることがある怖い病気です。

2025
年現在、北摂地域ではSFTSの報告はまれなようですが、
猫を保護したときや、外に出る猫ちゃんがいるご家庭では注意が必要です。
 
 
まとめ|マダニにも目を配りましょう
 
ノミだけでなく、マダニも猫の健康に大きく影響します。

とくに保護直後の子猫は、免疫力も弱いため注意が必要です。

小さな寄生虫でも、命にかかわる病気につながることがあります。

・保護した猫ちゃんの身体を丁寧にチェックする
・見逃さないように、よく観察する
・見つけたらすぐに駆虫薬で対処する

こうした心がけが、猫ちゃんと飼い主様の健康を守る第一歩になります。

「これってマダニかな?」と不安なときは、どうぞお気軽にご相談くださいね。
 
2025-06-04 05:00:00

保護猫あられちゃん、FIPと診断されて

カテゴリ : 感染症・予防


保護猫活動を始めて、今年で4年目になります。

これまで多くの子猫たちが新しいおうちへと旅立っていくお手伝いをしてきました。

毎年この時期は、保護猫さんとの関わりが自然と増えてきます。

多くは12か月齢の小さな子猫たちですが、今回は少し珍しい大人の猫ちゃんとの出会いがありました。
 

気になっていた大人猫2匹を保護

 
ある日、妻の友人がずっと気にかけていた大人の猫ちゃん2匹を保護しました。

この方は、我が家の黒猫ジャックを保護してくれた方でもあります。

1か月、自宅で大切にお世話をされた後、新しい飼い主さんが見つかったそうです。

どちらも警戒心が強く、やっと少しずつ心を開き始めていた頃の譲渡でした。
 

譲渡後の体調不良。検査でFIPの可能性が浮上

 
そのうちの1匹、あられちゃんはキジトラの子。

譲渡後しばらくして、妻の友人から「ごはんを食べなくなり、どんどん元気がなくなってきた」と連絡がありました。

ちょうどその方の近所に、私の友人の動物病院があるので、そちらで診てもらうことに。

血液検査の結果、TP(総タンパク)の値が異常に高く10



さらに、耳に明らかな黄疸も見られたそうです。



なお、下の写真は治療を始めてしばらく経ったあとのもので、黄疸はかなり落ち着いてきた状態です。

初診時には、もっとはっきりと耳が黄色く見えていたとのことです。

この時点で、猫伝染性腹膜炎(FIP)の可能性が非常に高いと判断されました。
 

確定診断を待たずに治療を開始

 
FIPの確定には特別な検査が必要ですが、結果が出るまで数日かかります。

しかしその間にも症状は進行するため、検査を待たずに治療を開始することにしました。

友人の病院にはFIPの治療薬がなかったため、こちらで薬を準備してお渡ししました。

投薬開始後は徐々に食欲が戻り、元気も出てきたとのことです。

そして後日、確定診断の結果もFIPの発症を裏付ける内容でした。
 

FIPの引き金は環境の変化だったかもしれません

 
FIPの発症には、ストレスが大きく関与すると言われています。

今回のケースでも、短期間での環境の変化が引き金になった可能性があると感じました。

それでも、あられちゃんは保護されたからこそ治療を受けることができた命です。

もし保護されていなければ、過酷な環境の中でひとり静かに発症を迎えていたかもしれません。
 

あられちゃんに、これからの穏やかな毎日を

 
あられちゃんは少しずつ元気を取り戻し、新しい生活にも慣れてきているようです。

これからも体調の波はあるかもしれませんが、そばには見守ってくれる飼い主さんがいます。

今回のような出会いや支え合いが、またひとつの命をつないでくれました。
 
2025-05-21 07:00:00

高齢の猫ちゃんにワクチンは必要?──抗体価検査という選択肢

カテゴリ : 感染症・予防


うちの猫、もう年ですけどワクチンって本当に必要ですか?

そんなご相談をよく受けます。

そんな時にご提案しているのが、ワクチン抗体価検査という方法です。
 

ワクチンの“備え”が残っているかを調べる検査

 
抗体というのは、猫ちゃんがワクチン接種によって手に入れた病気に対する備えのようなものです。

この抗体がまだ十分に体に残っているかどうかを確認できるのが「抗体価検査」なんですね。

備えがしっかり残っていれば、「今回はワクチンの接種は見送りましょう」と判断することもできます。
 

検査の前に知っておきたい“免疫”の3つの仕組み

 
少しだけ難しい話になりますが、ワクチンと関わる免疫の仕組みをざっくり3つに分けてご紹介しておきますね。

液性免疫(えきせいめんえき)


血液やリンパ液の中に溶け込んだ抗体(主にIgG)が病原体をやっつける仕組み。
ワクチンで得られる代表的な免疫です。

細胞性免疫(さいぼうせいめんえき)


T
細胞と呼ばれる細胞が、病原体そのものを記憶し、再び出会ったときに直接戦ってくれます。

局所免疫(きょくしょめんえき)


鼻や目、口、腸などの粘膜表面で働く免疫。IgAという抗体が関わります。
ワクチンでは増やしにくく、過去に自然に病原体に触れた経験によって備わることが多いです。
 

抗体価検査でわかること

 
3種混合ワクチンの抗体価検査」では、以下のウイルスに対するIgG抗体の量がわかります。
  • 猫パルボウイルス(FPV
  •  
  • 猫カリシウイルス(FCV
  •  
  • 猫ヘルペスウイルス(FHV
  •  
ですが、ここで一番注目するのは猫パルボウイルスの抗体価です。
 

なぜ猫パルボだけ注目するの?

 
実は、猫カリシや猫ヘルペスに対しては、液性免疫だけでは十分に防御できません。

これらのウイルスに対しては、細胞性免疫局所免疫の働きがとても重要とされていて、
抗体価(IgG)が低くても、体の中ではしっかり備えができていることが多いんです。

そのため、抗体価の高低だけで「安心・安心じゃない」とは判断しづらいウイルスなんですね。
 

では、ワクチンを打つべきか?

 
よくあるご相談への答えはこのようになります

  • 猫パルボの抗体価が高ければ接種を見送る選択もあり
  •  
  • 猫パルボの抗体価が低ければワクチン接種をおすすめします
  •  
  • カリシやヘルペスが低いだけなら生活環境や既往歴をふまえて判断します
 
まとめ

 
高齢の猫ちゃんにワクチンが必要かどうか――
それを考えるうえで、抗体価検査はとても有効な手段のひとつです。

猫ちゃんの体に残る備えをきちんと確認したうえで、
必要なタイミングだけワクチンを接種してあげる。

そんな選択肢があることを、ぜひ覚えておいてくださいね。

気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。
 
2025-04-30 07:00:00

猫白血病ウイルス(FeLV)ワクチンって必要なの?

カテゴリ : 感染症・予防



今回は、猫白血病ウイルス(FeLV)感染症に対するワクチンについてのお話で
す。

FeLVワクチンがコアワクチンに?

2024年に改訂された**WASAVA(世界小動物獣医師会)**のワクチンガイドラインでは、FeLVワクチンが新たにコアワクチンに加えられました

コアワクチンとは、「すべての猫ちゃんに接種が推奨されるワクチン」のこと。

従来は、

  • 猫パルボウイルス(FPV
  • 猫カリシウイルス(FCV
  • 猫ヘルペスウイルス(FHV

3種混合ワクチンが基本でしたが、これに**FeLV(猫白血病ウイルス)**が加わるかたちになりました。

でも、日本ではどうなの?

このガイドラインは**義務ではなく、あくまで「推奨」**の位置づけです。

つまり、「各国・地域の感染状況に応じて、最適な接種プランを考えてくださいね」というスタンスなんですね。

たとえば、少し古いデータにはなりますが、2013年時点の調査では日本はFeLVの好発地域とされていました

とはいえ、完全に室内で飼われていて、外に出ない子やFeLV陽性の猫と接触しない環境であれば、感染リスクは非常に低いと考えられます。

そういった場合には、従来どおり3種混合ワクチンをコアワクチンとして考えても問題ないと思います。

FeLVワクチンはどうやって打つの?

FeLVワクチンは、以前は単独でも接種できましたが、現在は「4種混合」または「5種混合」ワクチンとしての形でしか入手できません

  • 4種混合:3種混合+FeLV
  • 5種混合:3種混合+FeLV+クラミジア
  •  
という構成になっています。

初年度の接種スケジュール(FeLVワクチンを含む場合)

  • 生後8週齢:4種または5種混合ワクチン
  • 12週齢:4種または5種混合ワクチン(初年度ブースター)
  • 以後は:年1回の追加接種が推奨されています。

外に出る猫ちゃんの場合は?

最近は「うちの子、外にも出します」という飼い主さんは減りましたが、
外出の可能性がある子猫を保護した場合など、FeLVの予防が必要なケースでは、
以下のようなスケジュールが一つの目安になります。

接種時期 内容(ワクチン)
生後8週齢 4 or 5種混合
生後12週齢 4 or 5種混合
生後16週齢 3種混合
生後26週齢(約6か月半) 3種混合
12週齢から1年後 4 or 5種混合
以後毎年 4 or 5種混合

これは、
  • FeLVワクチンは初年度に2回接種
  • 3種混合ワクチンは16週・26週でのブースター接種が推奨
という2つの原則を組み合わせたプランです。

ちょっと複雑に感じるかもしれませんが、これはあくまで一例に過ぎません

猫ちゃんのライフスタイルや環境に合わせて、無理のないスケジュールを一緒に考えていければと思います。

ご不明な点があれば、どうぞお気軽にご相談くださいね。
2025-04-23 07:00:00

子猫のワクチン接種スケジュール|感受性の窓を考慮した最新ガイドライン解説

カテゴリ : 感染症・予防



今回は、先週お話しした「感受性の窓」と関係の深い、子猫のワクチン接種スケジュールについてご紹介します。

2024年に改訂された**WASAVA(世界小動物獣医師会)**のガイドラインでは、子猫のワクチン接種時期の見直しが行われ、「感受性の窓」に関する記述がこれまで以上に強調されるようになりました。


感受性の窓ってなに?

「感受性の窓」とは、ワクチンを接種しても、十分な効果が得られにくい期間のこと。

子猫はお母さん猫からもらった抗体によって、ワクチンの効果が阻害されてしまう場合があります。

このため、適切なタイミングでの接種がとても重要になります。


子猫のワクチンプログラムはこう変わった

新しいガイドラインでは、以下のスケジュールが推奨されています:

  • 6〜8週齢で初回接種
  •  
  • その後は4週間ごとに接種
  •  
  • 16週齢以降で初期ワクチンプログラムを終了
  •  
つまり、16週齢の時点で多くの猫ちゃんが「感受性の窓」を抜けるとされており、そこまでしっかり接種することがポイントです。


当院の考え方と実際のスケジュール

たとえば…
「この子、母乳をあまり飲めていなかったみたいだから、抗体も少なかったかも」
と判断される猫ちゃんの場合には、

  • 6週齢
  •  
  • 10週齢
  •  
  • 14週齢
  •  
  • 18週齢(仕上げ)
  •  
という4回スケジュールを組むこともあります。

ただ、これだと少し接種回数が多く、飼い主さまのご負担も増えるため、当院では次のようなシンプルな3回スケジュールを基本としています:

  • 8週齢
  •  
  • 12週齢
  •  
  • 16週齢
  •  
もちろん、必要と感じた場合やご希望があれば6週齢からスタートするプランもご提案しています。


次の接種はいつ?

従来は「完全室内飼いなら3年後」「外に出るなら1年後」としていましたが、現在は26週齢(約6か月半)での追加接種をおすすめしています。

その理由は:
  • 一部の猫ちゃんでは「感受性の窓」が24週齢ごろまで続くことがある
  • 抗体がしっかりついていても、その効果をさらに押し上げる**「ブースター接種」**として有効
という2つの観点からです。


そのあとはどうする?

WASAVAの最新ガイドラインでは、

  • 26週齢で追加接種
  •  
  • その1年後に再接種
  •  
  • 以降は3年ごとに接種
  •  
となっています。

ただし、当院では26週齢の時点で十分な効果が確認できた猫ちゃんについては、次の接種を3年後としています。


室内猫ちゃん向け|当院おすすめのワクチンスケジュール

年齢 接種内容
8週齢 初回接種
12週齢 2回目
16週齢 3回目(初期プログラム完了)
26週齢 押し上げ接種(ブースター)

このスケジュールは目安です。生活環境や猫ちゃんの状態に合わせて最適なプランをご提案します。


接種間隔が「4週間」なのはなぜ?

ワクチンは3〜4週間おきの接種がもっとも効果的とされています。

当院では、わかりやすく継続しやすい4週間間隔を基本としています。

また、「8週齢」といった場合は、生後56〜62日目の1週間の範囲を指すのが一般的です。


次回は…

FeLV(猫白血病)ワクチン」についてお話しする予定です。

猫ちゃんの健康を守るためにも、引き続きご参考いただければ嬉しいです。
2025-04-16 06:00:00

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猫のフィラリア症ムービー(リンク先に動画があります)
https://www.nekomamo.com/parasite/filaria/movie/

  1. 動物園勤務から病院へ
  2. プロフィール
  1. 週齢はどれくらい?
  2. まず行うこと
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  5. 体重管理・食事管理
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