
今年19歳の雌猫ちゃんですが、腎不全による脱水症状の緩和のため昨年から週1回のペースで皮下補液とよばれる点滴治療のために通院をお願いしていました。
ところが春ごろから脱水症状の悪化を認め補液の回数が週2回必要となり、それに伴い補液による心臓への負担が心配になってきました。
脱水緩和のためには補液による水分補充が有効なのですが、急に体の中に入ってきた水分が心臓をパンクさせてしまうことがあるためです。
そこで心臓の評価を行いました。
まずは血液の中のBNPと呼ばれる成分の濃度を測定してみました。

基準値をオーバーしていました。 これは心臓に負担がかかっているということを示しています。
負担がかかると心臓の壁が肥大したり、心臓が拡張したり、心臓が硬くなったりしいずれも心臓の正常な働きが奪われます。
次にエコー検査で心臓の形を見てみました。
※心臓の縦断面です
※心臓の横断面です
点線の個所でその幅を測定しています。
1は心室中隔と呼ばれ心臓の左右を分けている壁の幅を測定しています。
2は心臓の左側の壁の幅を測定しています。
これらの数値が6mmを超えてくると心臓の壁が肥大していると考えます。
下の画像の2で6.1㎜となっていますので心臓の壁の肥大があるようです。
心臓の拡張や、心臓が硬くなったりはしていませんでした。
今回詳しい説明は省きますが脱水症状があると心臓の壁が厚くなりますので腎不全による脱水が心臓の壁の肥大の原因とも考えられますが、この猫ちゃんには高血圧と軽度の甲状腺機能の亢進があります。
高い血圧や甲状腺の機能の亢進により過剰に分泌された甲状腺のホルモンは心臓に負担をかけますのでこちらが心臓の壁の肥大の原因かもしれません。
いずれにしましても今後の皮下補液はより慎重に実施していかなければなりません。

※TT4が基準値(0.8~4.7)を超えていると甲状腺の機能亢進を疑います。現在は基準値をわずかに上回るだけですのでこれに対しては経過観察としています。