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猫の蛋白尿と血圧 ある症例から考えたこと

カテゴリ : 腎・泌尿器


ある猫で、血液検査の数値に少し変化が出ました。

クレアチニンが初めて2を超え、BUNも40台になっていました。

「これは腎臓病の初期かもしれない」

そう思い、そのとき初めて尿蛋白クレアチニン比(UPC)を測定しました。


初回の検査結果


初回の検査結果は次の通りでした。


UPC:2.24

UPCは猫の蛋白尿を評価する検査で、

0.2未満:正常
0.4以上:蛋白尿

とされています。

この猫の2.24という値は、かなり強い蛋白尿でした。


当日の血圧について


本来であれば、この時点で血圧も測定しておくべきでした。

しかしこのときは事情があり、当日の血圧測定ができませんでした。

ただ、この猫は約2か月前の血圧測定で152mmHgでした。

猫では150〜159mmHgは、いわゆるグレーゾーンとされています。

そのため、血圧の影響による蛋白尿の可能性も考え、フォルテコールをの投与を開始しました。




蛋白尿とは何か


腎臓は血液をろ過する臓器です。本来、体に必要なタンパク質は尿に漏れないようになっています。

しかし腎臓に余計な圧がかかると、このフィルターに負担がかかり、タンパク質が尿に漏れてしまうことがあります。

つまり蛋白尿は、腎臓の中のフィルター(糸球体)に余計な圧がかかり、腎臓が負担を感じているサインと考えることができます。


フォルテコールの働き


フォルテコールはACE阻害薬という薬です。この薬には血圧を下げる作用と、腎臓の糸球体にかかる圧を下げる作用があります。

その結果、腎臓のフィルターにかかる負担を減らし、尿に漏れるタンパクを減らす効果が期待できます。


半年後の再検査


投与開始から半年後に再検査を行いました。

結果は次の通りでした。




UPC:0.09

つまり蛋白尿は消えていました。

さらにこのとき血圧を測定すると、120mmHgでした。

フォルテコールによって血圧が下がり、糸球体にかかる圧も下がった結果、蛋白尿が改善したと考えました。


反省点


この症例では、初回に血圧を測定していなかったことが少し悔やまれます。

もし当日の血圧を測定していれば、より正確に評価できたと思います。

臨床では、こういう「あとから思うこと」も少なくありません。


この症例から感じたこと


猫の蛋白尿は、腎臓の糸球体に余計な圧がかかっているサインであることがあります。

そして血圧や糸球体の圧を下げる治療によって、蛋白尿が改善する場合があります。

この症例は、そのことを改めて考えさせてくれた症例でした。

脊椎障害のある猫の排泄管理

カテゴリ : 消化器

     ※結腸~直腸にびっしりと詰まった便

数年前にも取り上げました、保護したときから脊椎の障害がある我が家の猫です。

歩行も少し不自由ですが、いちばん気を遣うのは排泄です。

自分のタイミングでうまく出すことができません。

便は腸にたまり、ある程度たまったところで腹圧がかかったときに“ところてん”のように押し出されます。

完全に出し切れるわけではありません。

そのため、半年に一度ほど鎮静下で腸内の便を掻き出す処置を行っています。


神経が関わる排便の問題


脊椎に障害があると、直腸の感覚が鈍くなったり、排便のタイミングがつかめなくなったり、うまく力が伝わらなくなったりします。

腸がまったく動いていないわけではありません。

ただ、「出す」という最終段階がうまくいかないのです。

だから治療の中心は、“出させる”ことよりも、“ためすぎない”ことになります。


日常の管理


この猫では、いくつかを組み合わせて維持しています。

便の量を減らす目的で、低分子プロテイン食を使用しています。

消化吸収率を上げ、残渣を減らすためです。

便の水分バランスを整えるために、サイリウムを少量使っています。

量が多すぎると逆効果になることもあるため、慎重に調整しています。

腸の動きを補助する目的でモサプリドも使用しています。

正直に言えば、モサプリドは猫の便秘に対して強いエビデンスが確立している薬ではありません。

結腸主体の便秘にどこまで有効かという議論もあります。

それでも、消化管運動促進作用に期待し補助的に使っています。

劇的に変わる薬ではありませんが、破綻させないための一つの要素だと考えています。


完璧にはならない


この管理で、正常な排便になるわけではありません。

それでも、直腸の過度な拡張を防ぎ、巨大結腸の悪化を抑え、掻き出し処置の頻度を保つという意味があります。

排泄管理は、「治す医療」というよりも、「崩れないように支える医療」です。


地味な医療の価値


半年に一度の処置は必要です。

でも、半年で済んでいるとも言えます。

派手な治療ではありません。目に見える劇的な変化もありません。

けれど、日々の小さな調整の積み重ねが、この猫の生活を支えています。

排泄の問題は、生活の質を大きく左右します。

うまくいかない日があっても、管理が続いていること自体が、大切な医療だと思っています。

同じように排泄のことで悩んでいる猫は少なくありません。

派手な治療ではなくても、支える方法はあります。
2026-03-04 03:00:00

猫石と、猫医師

カテゴリ : その他


先日、何気なくネットを見ていて、目に留まった一枚の浮世絵。

歌川国芳の
見立東海道五拾三次 岡部 猫石。

岡部宿に伝わる「猫石」という怪談をもとに描かれた作品だそうです。

※岡部宿に伝わる猫石の実際の写真は、藤枝市公式サイト「ふじえだ東海道まちあるき」に掲載されています。
https://fujieda.tokaido-guide.jp/location/80

夜になると石が怪異に変わる――
そんな話を、国芳は大きな猫の姿で表しています。

石なのか、猫なのか。

少し不気味で、でもどこか愛嬌がある。

ポスターになった小さな額装が販売されていて、
千円と手頃だったこともあり、院内の飾りにでもと思い購入しました。

眺めながら、ふと気づきました。

猫石(ねこいし)。

猫医師(ねこいし)。

同じ音ですね。

猫は本当に静かな動物です。

慢性腎臓病も、膀胱炎も、関節の痛みも、
最初は石のように黙っています。

怪談の石は夜に姿を変えますが、
病気はもっと静かに、ゆっくりと形を変えていきます。

町の猫医師として、
その小さな変化を拾っていけたら。

そんなことを思った夜でした。
2026-02-25 05:00:00

神殿の横の猫と、慢性腎臓病の話

カテゴリ : 腎・泌尿器



猫の慢性腎臓病と診断され、
これからどう向き合っていけばいいのか、不安を感じておられる方へ。

慢性腎臓病は、出来ることがたくさんある病気です。

けれど、出来ることを全部やることが、必ずしも正解とは限りません。

焦らず、その子に合った形を探すことが大切だと、私は考えています。

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先週の土曜日、診察が終わってから妻と阪急本通商店街のガストで昼ごはんを食べました。

その帰り道、「茨木神社に寄ってみようか」という話になりました。
お正月には毎年神社の前までは行くのですが、人が多くて、そのまま帰ってくることがここ数年続いていました。

お正月以外なら空いているだろう、と。

境内は静かでした。

本殿の裏に、もう一つ小さな神殿があります。

その横を通りかかったとき、妻が「ちょっと待って」と言ってスマートフォンを構えました。



視線の先には、黒白ぶちの猫。

耳のカットから、おそらく雌猫です。

神殿の縁に体を預けて、ただ静かにくつろいでいました。



人が通っても慌てる様子はありません。

猫は、自分の時間で生きています。

その姿を見ていると、診察室で向き合う慢性腎臓病の猫たちのことを思い出しました。

慢性腎臓病は、急にすべてが悪くなる病気ではありません。

気づかないうちに、少しずつ進んでいきます。

だからといって、慌ててあれこれ手を打てば良いというものでもありません。

当院では、クレアチニンやSDMAといった血液検査の値だけで判断することはしていません。

尿比重がどの程度保たれているのか。

尿中蛋白はどうか。

血圧は安定しているか。


体重や食欲はどう変わっているか。

それらを合わせて、いまその猫がどの位置にいるのかを考えます。

慢性腎臓病の管理は、やろうと思えば出来ることはいくらでもあります。

検査も、薬も、食事の調整も。

けれど、それをすべて並べて進めることが正解とは限りません。

猫が嫌がっていないか。

通院や投薬が負担になっていないか。

飼い主さんが無理をしていないか。

そこをきちんと話し合わずに積み重ねても、長くは続きません。

出来ることを全部やるのではなく、
その猫とそのご家族にとって無理なく続けられる形を一緒に探します。

慢性腎臓病が進行した場合、自宅での皮下補液が必要になることもあります。

けれど、それも一律に始めるものではありません。

体重や食欲、脱水の程度、生活環境を見ながら、本当にその子に必要かどうかを判断します。

無理に始めることも、逆に必要なのに先延ばしにすることもありません。

強くいくこともあれば、
あえて少し抑えることもあります。


完璧さよりも、続けられることを大切にしています。

慢性腎臓病は短距離走ではありません。

あの神殿の横の猫のように、
急がず、しかし目を離さず。

地味ですが、その積み重ねが結果につながると考えています。

茨木で猫の慢性腎臓病の継続管理をご希望の方は、ご相談ください。

アムロジピン単独では不十分だった猫の高血圧症例 ― テルミサルタン併用で安定した一例

カテゴリ : 循環器

     ※入院翌朝の血圧で来院時直ぐのものではありません。

猫が、突然の嘔吐と元気消失を主訴に来院しました。

診察時に血圧を測定したところ、200mmHgを超えていました。

この猫には、もともと血圧を下げるお薬をだしていました。

入院とし、まずはこれまでと同じ内容(アムロジピン)で投薬を行い、経過を観察しました。

翌朝(2月3日8時)の血圧も202mmHg(最初の画像)で、大きな変化はありませんでした。

この時点で、今までの治療だけでは血圧が下がりきっていないと判断し、作用の仕組みが異なるテルミサルタンを追加しました。

アムロジピン2.5mg錠を1/4錠で1日2回、テルミサルタン20mg錠を1/4錠1日1回としました。


同日17時半の血圧は182mmHgでした。



翌日(2月4日朝)の血圧は185mmHgでした。

まだ十分な低下とは言えなかったため、アムロジピンを1/2錠1日2回に増量し、テルミサルタンは同量で継続しました。



同日16時前の血圧は156mmHgまで低下しました。



翌日(2月5日朝9時半)の血圧は150mmHgでした。

この時点では、アムロジピンの増量で血圧が安定しているのであれば、テルミサルタンは不要かもしれないと考え、一度中止しました。



同日夜の血圧は174mmHgに再上昇しました。



翌朝(2月6日9時前)の血圧も174mmHgでした。

この経過から、アムロジピン単独では血圧を維持できていない可能性が高いと判断し、テルミサルタンを再開しました。



同日夕方の血圧は146mmHgでした。

確認後退院としました。

この推移から、この猫ではアムロジピン単独では不十分で、テルミサルタンの併用が血圧の安定に大きく関与していると判断しました。

また今回詳しい説明は省略させていただきますが、初診時の検査で、胸水の貯留や左心房の拡張など、一般的には心臓の病気を示すことが多い所見が認められました。




そして血液検査では心臓に負担がかかっていることを示す指標であるproBNPの高値も確認されていました。



ただし今回の経過をみる限り、心臓そのものの病変というより、血圧が高い状態が続いたことによる影響が、これらの所見として現れていたと考えています。

血圧が安定するにつれて、嘔吐や元気消失といった初診時にみられた症状は改善し、退院時には認められなくなっていました。

あわせて、初診時に認められていた上記の画像所見についても、退院時には改善傾向が確認されました。




2026-02-11 06:00:00

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