昨年5月8日、5月15日、9月18日のブログで「FIP猫伝染性腹膜炎の治療に当院ではモルヌピラビルというお薬の海外(具体的にはインド産)ジェネリック薬品を使用しています」との話題をしました。
その中の9月18日のブログで最後の方に赤字で「このお薬を処方する事に私自身葛藤があります。」という事を書きました。
葛藤の理由はいくつあるのですがその一番の理由は「このお薬が日本では未承認薬」でありまた「このお薬はパテントを無視したお薬では」とのご指摘を受けることがあるからです。
新薬の開発には莫大な研究費がかかります、その会社のパテントを無視することはこの研究費を圧迫することにつながりそれは新薬の開発を待たれている患者様の利益を削ぐことにつながってしまいます。
このお薬の正規品はラブゲリオという製品名で販売されている本来は人間のコロナウイルス感染症に対して使用されるお薬で米国の製薬メーカーが開発しました。
本来はとても高価なお薬なのですが所得の低い国々の人たちにも利用できるように米国の会社がインドの製薬会社にジェネリック薬品の製造を(おそらく)パテント料を下げて許可することによって安価での供給を可能にしたと聞いています(少し解釈に間違いがあるかもしれません)。それはパンデミックに対応しないといけないからです。
※当院が使用していたインド産ジェネリック薬品はインドのH社が製造しているのですがこの会社が米国の製薬メーカーから低所得者向けジェネリック薬品製造の許可を得ているかどうかははっきりしていません。インドには特許への緩い考え方?があってそれに基づいて製造されているだけかもしれません。
FIPの正規薬品はどれも高価で多くのオーナー様がその価格に驚かれそのために治療をためらわれてしまいます。
そこでこのH社のインド産ジェネリック薬品のお話をすると皆さん変な表現ですが経済的にほっとされ治療を受け入れてくださいます。
ただ昨日1月20日にFIP猫伝染性腹膜炎についてのセミナーに参加したのですがやはり講師の先生もこのH社のインド産ジェネリック薬品の使用には否定的なご意見でした。
今まで自身には葛藤がありながらも「人間と同じように経済的に苦しい猫ちゃんが助かるならこれでいいんだ」と言い聞かせていましたがやはり無理があるかもしれません、というのもFIPはパンデミックが起こっているわけではないですしまたH社が製造許可を得ているかどうかもわかりませんので。
今後は当院でも正規品のご利用を勧めていく形となりそうです。