※二次病院で装着していただきました。
上の画像は食道の中へ流動食を流すためのチューブを装着された猫ちゃんの様子です。チューブの先端から注射ポンプを使って流動食を流し込みます。
ある日「2週間近く前から食欲がありません」と三毛猫さんが連れて来られました。
血液検査をおこなってみますと著しい黄疸を認めGPT、GOT、ALP、TBiL(ビリルビン)という血液中の成分がいずれも高くこれらの事は肝臓が弱っていることを示しています。
特にALP(当院での基準値は1歳以上で58U/Li以下)の上昇があると猫ちゃんでは著しい肝臓のダメージがあると考えなければなりません。
ビリルビン(当院での基準値は0.4mg/dl以下)は赤血球が寿命をむかえ壊れると出てくるもので黄色い色をしています。 この値の上昇は肝臓や胆管という場所のダメージをあらわしている可能性があります。
ビリルビンは肝臓に集められ胆管という管を通って十二指腸に排泄されます。
ウンチが黄色いのはビリルビンの影響です。
肝臓や胆管に何かの問題(例えば胆管が詰まったなど)があるとビリルビンが十二指腸に上手く排泄されずビリルビンの渋滞がおこります。
行き場を失ったビリルビンは血液中にあふれ出し血液は黄疸という状況になります。
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血液をチューブに入れ遠心機で回すと主に赤血球からなる血球と呼ばれる部分と血しょうと呼ばれるお水の部分に分かれます。
お水の部分はワンちゃん・猫ちゃんでは普通は無色透明なのですが黄色くなっていますね、これを黄疸と呼びます。
血液のお水の部分が黄色くなって全身の血管を流れますので皮膚や粘膜が黄色くなります。
この猫ちゃんのおなかの皮膚です。エコー検査のため毛を刈ってあります。
「えっそうですか?」となると思いますが黄疸のため皮膚が黄色くなっています。
肝臓の状態を確かめるためエコー検査を実施したところ肝臓と十二指腸をつなぐ胆管と呼ばれる管がやや拡張しているように感じました。
これは胆管が十二指腸への排泄口のところで詰まっている可能性も考えられ排泄口付近の状況をチェックしなければならないのですが当院では確実に実施できなかった為、肝臓の精密検査もかねて直ぐに二次病院を受診していただきました。
結果は肝臓のリンパ腫(癌の一種)および肝リピドーシス(脂肪肝)との診断で胆管の拡張も軽度で詰まりもないとの事でした。
今回の黄疸はリンパ腫や脂肪肝により肝臓の働きが弱りビリルビンを上手く処理できなかったためだと考えられました。
脂肪肝はリンパ腫のため食欲の低下がおこり引き起こされたものだと考えられました。
食欲が低下し充分な栄養を取れなくなると猫ちゃんの体は自分が蓄えている脂肪分を分解しエネルギー源にしようとします。
その過程で大量の脂肪分が肝臓に集められるのですが処理しきれなくなった分が肝臓に蓄積され脂肪肝となります。脂肪肝はさらに肝臓の働きを弱めます。
脂肪肝の治療は充分な栄養を与えることが非常に大切になりますので一番上の画像で示したようなチューブを装着します。チューブは自力で採食できるようになるまでつけておきます。
リンパ腫については週1回抗がん剤の投与を実施しました。
治療開始後およそ3週間目ALP値は低下、TBiL(ビリルビン)値は基準値に回復しましたが、自力採食はチュール1,2本のみ。
さらにそのおよそ3週間後にやっと充分な量を自力採食できるようになりましたのでチューブを外しました。外せるまで一か月半を要しました。
皮膚の黄疸も無くなっています。抗がん剤治療はしばらく継続していきます。