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乳腺腫瘍:リンパ節の切除

カテゴリ : 腫瘍



上の画像は乳腺を切除する時に付属するリンパ節をとっている様子を撮影したものです。

猫ちゃんの乳腺はワキの下から始まり後ろ足の付け根まで続いていますが、乳腺腫瘍の時は腫瘍のある箇所だけを切除するのではなく乳腺すべてを切除します。

と言うのは猫ちゃんの乳腺腫瘍はそのほとんどが悪性で触ってみて何ら変化の無い箇所にも既に細胞レベルでがん細胞が転移をしている可能性があるため、その取り残しをできるだけなくすためです。

下の画像で黒い線で囲ったところをすべて切除します。


乳腺をすべて切除することともう一つ大切なことは付近のリンパ節も一緒に切除することです。

リンパ節は細菌やウイルス、がん細胞が周囲に広がっていかないように関所のような働きをしています。

リンパ節を一緒にとるのは既にがん細胞をとらえているかもしれず、そのままにしておくと一部が転移してしまうかもしれないからです。

乳腺ではワキの下と後ろ足の付け根付近にリンパ節があります。

ワキの下には2か所あるのですが、一番上の画像ではその一つ「副腋窩(ふくえきか)リンパ節」をとっています。

とれた「副腋窩リンパ節」です。




術後の画像です。



2022-09-14 09:01:00

猫の膵外分泌腺癌

カテゴリ : 腫瘍


ある日「3日前から元気がなく、食べては嘔吐していた。昨日今日は食べておらず嘔吐が続いている。」との相談を受けました。

嘔吐はたくさんの病気で認められる症状ですので決めつけはよくないのですが、「膵臓や肝臓、腎臓が問題をおこしてるのかな」、「高齢なので胃腸にデキモノがあるのかな」、「2日前までは食欲はあったようなので単純に毛玉でも胃にたまっているのかな、それとも何か飲み込んだかな」などと考えながら診察に当たります。

まず触診をしてみました。小腸などにできたデキモノがある程度おおきくなっていり、腸で何か詰まっていたりすると触診で発見できるケースがあるからですが、今回は問題ないように感じられました。

次に毛玉のチェックのために簡単に胃にエコーを当ててみましたがこれも問題ありませんでした。

膵臓・肝臓・腎臓の問題は血液検査でみていきます。

血液検査では猫膵特異リパーゼという値が異常値を示しましたので、オーナー様には「膵炎かもしれませんね。」とお話ししました。

リパーゼは膵臓から分泌される消化酵素の一つで脂肪の分解にかかわっています。膵臓が炎症をおこすとリパーゼが漏れ出し自分の体を消化するようになり、腹痛・食欲の減退・嘔吐・下痢などの症状を引き起こすようになります。

ただ膵炎などの激しい炎症の場合、猫SAAという数値が異常に跳ね上がることが一般的ですが今回正常値
であったことが心に引っかかりました。

SAAは血清アミロイドAというものですが、膵臓に限らず体のどこかで炎症があると急激に増えてくると考えてください。

先ほどの続きになりますがオーナー様には「膵炎かもしれませんね。症状は膵炎と一致します。だた膵炎と診断するにはSAAが正常であるのが気になります。4,5日膵炎の治療を行ってみて改善が乏しいようなら二次病院での精査をお願いします」と説明し治療を開始しました。

5日間治療を続け嘔吐はおさまりましたがチュールを2,3本食べるようになっただけで改善には至りませんでしたので二次病院にCT検査を依頼しました。

その結果が上記の画像です。ピンクの矢印で示した部位になるのですが、膵臓に癌がみつかりました。その右上の三日月状に見えている臓器は脾臓です。

病理細胞診検査の結果「膵外分泌腺癌の疑い」とのことでした。

膵外分泌腺とは膵臓にありリパーゼなどの消化酵素を分泌しています。

今回癌化し異常に増えた外分泌腺のため通常よりも多くのリパーゼが分泌されたため猫膵特異リパーゼが上昇し、癌であり炎症ではないので猫SAAは正常であったのかもしれません。

また当院でも画像検査としてレントゲン検査を実施していたのですが、膵臓領域に少し違和感を感じましたが「膵炎を反映した像かな」と考察していました。








2022-08-03 09:00:00

十二指腸・回腸リンパ腫のおくすり

カテゴリ : 腫瘍


当院では7歳以上の猫ちゃんやワンちゃんには年1~2回の健康診断を、当然万能の検査ではないのですがその入り口の検査としてまずは血液検査をお勧めしています。

昨年末健康診断の血液検査の結果を聞きに来られた12歳の猫ちゃんのオーナー様から「昨日から急に嘔吐し始めた、食欲はあります。」との相談を受けました。

この猫ちゃん血液検査では何も異常がありませんでした。急な嘔吐ですと肝臓やすい臓といったところを血液検査では注目しますが問題ありませんでした。

オーナー様との話し合いでまずは毛玉症や胃炎のお薬、療法食で様子を見ることとしました。

それで症状は一度おさまったのですがしばらくして再発してしまいました。

このように「シニア世代の猫ちゃん・ワンちゃんが食欲はあり比較的元気なのに嘔吐が続いている、血液検査では問題ない」と言った場合は要注意なことがあります。

それは血液検査では調べることができない胃や腸に何か大きな問題、具体的には腫瘍性の疾患がが隠れていることがあるのです。

そのような時はエコー検査や内視鏡による病理検査、CT検査などを組み合わせ診断を進めていきます。

当院ではエコー検査までは可能なのですがその他の設備がありませんので、今回の猫ちゃんには2次病院を受診していただきました。

内視鏡による病理検査の結果以下の診断が得られました。



十二指腸と回腸に小型のリンパ球の浸潤が認められ小細胞性リンパ腫の可能性が高いとの診断でした。

「リンパ腫の可能性が高い」と表現され「リンパ種です」と断言されていないのは何故でしょうか?

それはリンパ球は炎症反応でもその部位に浸潤してきますので、さらに炎症性の反応か腫瘍性の反応かを鑑別しなければならないからです。

鑑別の為、リンパ球クロナリティー検査と呼ばれる検査を行います。

「クロナリティーあり」との結果は「腫瘍性の反応ですよ」と言うことになります。





以上から「十二指腸・回腸の小細胞性リンパ腫」との診断にたどり着きます。

今回「小細胞性」との診断でしたので上記画像のお薬とステロイドを服用していけばで予後は良いものと思われます。

ちなみに「大細胞性」の場合は複数の抗がん剤の注射や内服薬を組み合わせた治療が必要になります。
2022-04-27 09:00:00

猫の乳腺腫瘍

カテゴリ : 腫瘍


猫ちゃんの乳首は一般的に左右4対で計8個、ワキの下から後ろ足の付け根のあたりまでだいたい等間隔で並んでいます。ときおり片側が一つすくない7個の子を見かけたりもします。

今回「お腹にしこりがを見つけた」との相談を受けました。

胸のあたりにしこりがさわりましたので毛を刈ってみますと、上の画像のよう右側の上から2番目の乳首の周囲に腫瘍を認めました。

拡大した画像です。



猫ちゃんの乳腺腫瘍は腫瘍の大きさ、付近のリンパ節の腫れ(腫瘍細胞の浸潤)、他の臓器への転移などから4つのステージに分けて考えます。数字が大きいほど悪いと考えてください。

今回は腫瘍の大きさが2・5cm、リンパ節の腫れと転移はない事から臨床的にステージ2ではと考えました。

※「臨床的」にとは、「獣医師がその現場でできる検査の範囲で」と言うことです。

治療は外科切除になるのですが、一般的にステージ3以上では腫瘍切除後に抗がん剤療法を組み合わせることが推奨されています。

術後の画像です。



今回臨床的にはステージ2と考えましたが、病理診断(切除した腫瘍を病理専門医に顕微鏡でどのような腫瘍かをしらべてもらう)で「リンパ節に腫瘍細胞が浸潤していましたよ」となりましたらステージ3以上と考えなくてはならず、抗がん剤療法を組み合わせなければなりません。

※周囲のリンパ節に腫瘍細胞が浸潤しているということはそれを超えて他の場所に腫瘍細胞が転移している可能性があります。リンパ節は病原体や腫瘍細胞をできるだけ食い止める関所のような働きをしています。

一般的に猫ちゃんの乳腺の腫瘍はその90%が悪性腫瘍と言われています。




2022-03-30 09:00:00

猫 腎臓型リンパ腫

カテゴリ : 腫瘍


腎臓型リンパ腫になった猫ちゃんの腎臓のエコー像です。

みなさんは普段腎臓のしかも猫ちゃんのエコー像を目にされることはあまりないはずですので、どこがお

かしいの?となると思います。

獣医師はエコー検査時まず大まかにいつもみる正常像から逸脱した箇所がないかを探していきます。

今回この猫ちゃんの腎臓にエコーを当てた時、下の画像のオレンジ色で塗りつぶした部分に違和感を感じ

ました。



専門的に表現しますと「被膜と腎皮質間に低エコー領域を認める」となります。このような像がエコーで

認られた時には獣医師はリンパ腫の可能性を考えます。

診断はこの部位に針を刺し細胞を採取し行います。当院では実施できませんので二次病院に依頼しまし

た。

診断書です。



治療は複数の抗がん剤を投与し行います。

抗がん剤投与8週目のエコー像です。



下はドキソルビシンとよばれる抗がん剤を投与中の画像です。







2021-11-17 09:00:00

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猫のフィラリア症ムービー(リンク先に動画があります)
https://www.nekomamo.com/parasite/filaria/movie/

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