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インスリン治療から離脱できなかった糖尿病②

カテゴリ : 内分泌:ホルモンの異常や糖尿病


前回の続きです。

先週のブログは「ある糖尿病の猫ちゃんでインスリン注射を一旦終了し経過を見ていくことにしました」との内容でした。

下は経過観察(インスリン投与中止後)10日目 のGLU(血糖)、FRU(フルクトサミン)の結果です。




いずれも高い値を示しておりこの事からインスリンを注射するにしろ新しい内服薬を選択するにせよお薬を使用する必要のあることが分かりました。

詳しくは前回のブログを見ていただきたいのですがインスリン投与開始後25日目のフルクトサミンの結果285μmol/Lを①と判断し投与を中止したのですが②と判断しなければならなかったようです。

インスリン治療中のフルクトサミンの解釈


治療の再開に当たっては9月から利用可能になった内服薬を選択したいところですが残念ながら血液中にケトン体が認められました。



血液中にケトン体が認められた場合はこの内服薬は利用できません。その理由については8月14日のブログを参考にしてみてください。
 
治療はインスリン注射で再開いたしました。

ところで何故私はインスリン注射にしろ内服薬にしろお薬の投与が一旦必要なくなったと考えたのでしょうか。

それはこのような理由からです。

人間の糖尿病には主に

a.インスリンを製造・出荷している膵臓という工場が様々な理由で破壊されインスリンが製造・出荷されずに糖尿病になってしまう1型糖尿病



b.インスリンは製造・出荷されてはいるのですが「何らかの理由」で製造・出荷量が減少したり、インスリンの効果が発揮されにくくなり糖尿病になってしまう2型糖尿病

に分けられます。 

それでワンちゃんでは人間で言うところの1型糖尿病、猫ちゃんでは2型糖尿病が多いと言われています。

ですのでワンちゃんでは生涯にわたってインスリンの投与が必要になることがほとんどなのですが、猫ちゃんでは「何らかの理由」の方を解決してあげるとインスリン注射にしろ内服薬にしろお薬の投与が一旦必要でなくなるケースも見られます。

それでは今回の猫ちゃんの解決した「何らかの理由」とはどういった事と私は考えたのでしょうか。

この猫ちゃんに糖尿病の症状がみられ始めたのが今年8月に入ってからですが
さかのぼること2か月前、6月に茨木市へ引っ越しをされてきていました。

引っ越しという一大イベントは猫ちゃんにとっては相当のストレスとなりそれが糖尿病の引き金になったのではと考えました。今回詳しい説明は省きますがストレスは糖尿病の原因の一つです。

上の画像はこの猫ちゃんの初診時に右側から撮影したものです。画像では分かりにくいのですが右わき腹から太ももにかけて毛が薄くなっています。

その範囲を青いラインで囲ってみます。ピンクの矢印の箇所は特にひどく地肌が薄ピンク色に透けて見えます。左側も同様でした。脱毛は当初もう少しひどかったそうです。



猫ちゃんはストレスを受けると毛づくろいをして落ちつこうとするのですが過度なストレスにさらされるとそれが行き過ぎてしまい毛が抜けてしまうのです。

これをストレスが原因の心因性外傷性脱毛と呼びます。

今回は

引っ越しというストレスが原因となり脱毛や糖尿病を発症。

あたらしい環境にもなれストレスが軽減し糖尿病の原因の方はなくなってきていたが糖尿病の症状は残ってしまい元気・食欲廃絶。

治療により糖尿病の症状が改善。

ストレスという糖尿病の原因が無くなっていたので糖尿病が寛解。

インスリン注射や内服薬の必要が一旦無くなった。

という風に解釈し治療を中断。

糖尿病が落ち着きよかったなあと喜んでいたのですが・・・そう単純な事ではなっかたようです。

現在インスリン注射の再開で糖尿病が良好にコントロールできています。

※寛解とは一旦病気がよくなることで完治という状態ではありません。いつか再発する恐れもあり投薬治療が必要でなくなってもそのような状況にならないように生涯にわたって注意が必要です。
2024-10-30 06:00:00

インスリン治療から離脱できなかった糖尿病①

カテゴリ : 内分泌:ホルモンの異常や糖尿病


今年8月14日のブログで紹介しました糖尿病の猫ちゃんの経過ですがインスリン治療で食欲も回復し、飲水量・尿量とも問題なく順調な経過をたどっていました。

9月に入り待望の飲ませる糖尿病治療薬が発売されましたのでインスリン注射からの切り替えを考え来院していただきました。

1日2回注射でチクリチクリされるよりも1回の内服で済めばそちらの方がいいですもんね。

それで現在の状況を確かめるためGLU(血糖)およびFRU(フルクトサミン)の測定を実施しました。

フルクトサミンはおおざっぱに言いますと過去2~3週間の血糖値の平均値のようなものでその期間に糖尿病が上手くコントロールできていたかの指標になります。

その結果です。

インスリン投与開始から25日目


下はインスリン注射治療開始2週間目と初診時の結果です。

2週間目


初診時


検査で出たフルクトサミンの解釈は以下の通りです。



健康な猫ちゃんのフルクトサミンの基準値は191~349μmol/Lです。

したがって初診時の485は糖尿病を疑います。

インスリン投与開始から2週間目の340は治療によって上手く糖尿病のコントロールが出来ていることを示しています。

そして今回の結果285は

①外から注射でインスリンを投与しなくても自前のインスリンで血糖値がコントロールできるようになった。

②あいかわらずインスリンの投与は必要な状況が続いてはいるのですが「非常に」上手く糖尿病がコントロールされている。

③インスリンが効きすぎて低血糖状態が続いていた。

の3つの可能性が考えられます。

③の低血糖状態はとても危険な状況でとても普通に生活を続けることはできません。現在元気食欲もあることから除外しました。

②は同時に測定したGLU:血糖値が150mg/dlでした。これは直前のインスリン投与から12時間後の値です。通常インスリン投与が必要な糖尿病の猫ちゃんでは前回投与から12時間も経過していますと血糖値がもう少し高くなっている事が多いように感じています。

ですので今回のフルクトサミン値285は①の可能性と一旦解釈しました。

そこでインスリンの投与も内服薬への切り替えもおこなわずに経過観察をしていくこととなりました。

次回に続きます。
2024-10-23 06:00:00

新しい猫の糖尿病内服薬センベルゴ続き~ケトン体

カテゴリ : 内分泌:ホルモンの異常や糖尿病

先週末「トイレに何回も入りおしっこが臭います。食欲もありません。お水はたくさん飲んでいた。腎臓病でしょうか?」と老猫さんが連れてこられました。

オーナー様には「腎臓病も心配ですが、糖尿病など他の病気も考えられますね。血液検査でチェックしていきましょう」とお話しました。

採血をしながら「万が一糖尿病ならもう少しだけ発症を待ってもらえていたならインスリンの注射ではなく新しい内服薬センベルゴでの治療を提案してあげられるのになあ」と考えてしまいました。

※センベルゴについては7月17日のブログを参考にしてみてください。本年9月1日より発売されます。

糖尿病の治療にはインスリンの注射が基本1日2回必要なのですがセンベルゴは1日1回の内服で済みます。誰だって1日2回チクリチクリされたりしたりするよりは1回の内服で済めばそちらのほうが良いですよね。

ただしこの新しい内服薬の使用には大切な条件があります。

それは血液中にケトン体とよばれる成分が出ていないという事です。

糖尿病はとういのは何かの理由で血糖というエネルギーを体にとりこむ助けをするインスリンが少なくなったり、効きにくくなったりすることで血糖が利用できなくなる病気とも言えます。

血糖が利用されないままですので血液中に糖分があふれおしっこにも出てくるようになります。これらの出来事は様々な害を体にもたらします。

ところでインスリンの助けを受けられなく糖分を利用できなくなった体は脂肪を分解しケトン体とよばれるものを作りこれをエネルギー源にします。

ケトン体は酸(アッシド)の仲間で溜まってくると血管を傷つけ様々な悪さをします。(このような状況をケトアシドーシスと言います)

ケトン体が出ているという事は自前のインスリンの助けを受けられなくなっている可能性があるという事です。

新しい内服薬センベルゴは増えすぎた血糖をおしっこと一緒に体外に捨てる働きがあります。

余分な糖分を捨てることで血糖値を程よい状態に保ち血糖が高いことでもたらされる害から体を守りましょうという戦略です。

センベルゴは余分な血糖を捨てる働きはあるのですが糖分をエネルギー源としてからだに取り込む働きはなく、その役割はなんとか頑張ってくれている自前のインスリンに頼らなければなりません。

ですのでケトン体が出ている子では自前のインスリンによる糖分の取り込みが全く期待できない可能性がありセンベルゴによる治療の選択はできません。

外部からのインスリン投与による治療が必要になります。

血液検査や尿検査の結果から連れてこられた猫ちゃんは腎臓病ではなく糖尿病でした。


 GLU(血糖値)


FRU(フルクトサミン):おおざっぱに言いますと過去2~3週間の血糖値の平均値のようなものです。

GLU、FRUともに高値で尿検査で尿糖も出ていましたので糖尿病と診断しました。

合わせて血液中にケトン体の存在が証明されましたので今手元にセンベルゴがあったとしても治療には利用できませんでした。

老猫ちゃんには入院していただきインスリン投与による治療を実施しました。

血液をチューブに入れ遠心機にかけると血漿と呼ばれるお水の部分と主に赤血球からなる血球とよばれる部分に分かれます。

お水の部分は普通は無色透明なのですが糖尿病が酷いと薄めた牛乳のような色になることがあります。それを「乳び」というのですが下の画像で確認できます。

このお水の部分をある試験紙に垂らしたのですがケトンを調べる箇所が紫色に変化しています。これはケトンが存在するという事です。



インスリン治療を開始しますと体調が回復し食欲も元にもどりました。

下の画像はその時の血液検査時のものですが治療開始前に見られた「乳び」
が消えケトンの反応が無くなっています。

ケトンが消えていますのでセンベルゴへの切り替えを試み毎日の注射チクリから解放してあげられるかもしれません。

2024-08-14 07:00:00

猫の糖尿病新薬・センベルゴ、飲む治療薬

カテゴリ : 内分泌:ホルモンの異常や糖尿病


本年6月12日のブログで紹介しました糖尿病の猫ちゃんですが治療開始からおよそ一か月のフルクトサミン値を測定したところ以下の結果を得ました。

フルクトサミン値は簡単に言いますと過去2~3週間の血糖値の平均を表すような数値でその期間に糖尿病が上手にコントロール出来ていたかどうかを見る指標になります。



今回276μmol/Lという結果でこれはインスリンの投与が必要でなくなった可能性があります。

そこで一度インスリンの投与を中止するとともに再度リブレを装着し血糖値の変化を追いながら2週間後にもう一度フルクトサミンを測定してみました。



リブレで血糖値の変化を見てみますと治療を要するほどの高血糖になっている時間帯は無く、2週間後のフルクトサミン値は262μmol/Lでした。



以上の結果から糖尿病が寛解(完治ではありません)し現在のところインスリンの投与は必要なくなったと判断しました。

これは何故でしょうか?

猫ちゃんの糖尿病は人間の2型糖尿病に近いと言われています。2型糖尿病は生活習慣の乱れの結果(例えば肥満で)インスリンが出にくくなったりインスリンが効きにくくなったりすることで発症するのですが、自分の体からインスリンが全く出なくなったわけではありません。

インスリンは太るためのホルモン(体の細胞が糖分:エネルギーを取り込むためのホルモン)とも言われており、肥満の子は普通の体重の子に比べてインスリンが必要以上に分泌されている状態とも言えます。

そうするとやがてインスリンを分泌している膵臓が疲れてしまいインスリンの出が悪くなり血糖値がコントロールできなくなり糖尿病が引き起こされるのです。

猫ちゃんの場合は糖尿病の治療で外部からインスリンを投与してあげるとそれは膵臓を休憩させる時間をつくってあげることになります。その結果再度自身で十分なインスリンを出すことが可能になり糖尿病が寛解することがあるのです。

今回の猫ちゃんもインスリンの十分な分泌が再開されたものと考えられます。

前置きが随分長くなりましたが、このインスリンが分泌はされているという2型糖尿病の性質を利用した全く新しい糖尿病治療薬が9月1日より利用できるようになります。人では以前より普通に利用されています。

このお薬は血液中の余分な糖分をおしっこと一緒に捨てることで高血糖値状態が継続しないようにし膵臓を疲れさせないようにして自前のインスリンの分泌を程よく保っていきましょうという戦略のようです。

これは画期的なお薬になりそうです。

1日1回の内服薬となりますので今までのインスリン注射のように毎回猫ちゃんはチクっとされる必要がなくなり痛い思いをせずに済みオーナー様の心理的負担もかなり軽減されるのではないでしょうか。

また細胞への糖分:エネルギーの取り込みは自前のインスリンに頼りますので
インスリンの過剰投与によりおこる危険な低血糖の心配もないようです。

さらにインスリンの投与量はその子その子によって違うため適切な量が決まるまで時間がかかるのですがこのお薬は体重当たりで投与量が決まっているので余分な時間を省くことができます。

インスリン量決定の為にリブレなどを装着し血糖値の変化を追うようなことが基本必要ないという事になりそのための費用も節約できます。

現在インスリン投与中の猫ちゃんもこのお薬への切り替えが可能です。

このお薬は余分な糖分をおしっこに捨てる作用しかありませんので糖分の細胞への取り込みは自前のインスリンに頼らなければなりません。ですのでインスリンが全く出ていないいわゆる1型糖尿病のタイプ(ワンちゃに多い)の子には利用できません。

以上のお薬の作用についての説明は先日製薬メーカーに電話で問い合わせて聞いたものになります、9月にセミナーがありますのでメリット・デメリット合わせてさらに詳しいお話を聞いてこようと思います。
2024-07-17 08:00:00

糖尿病とフルクトサミン

カテゴリ : 内分泌:ホルモンの異常や糖尿病

  
以前ブログで糖尿病の話題を特に血糖値センサー(リブレ)についての話題をさせて頂いたあとから、糖尿病についてのセカンドオピニオンを求められる機会が何回かありました。

「他動物病院の獣医師と比べて糖尿病について特に詳しいというわけではありませんが宜しいですか」と最初にお断りの上ご相談をお受けしています。

それで全てのケースでそうだったのですがワンちゃんも猫ちゃんも糖尿病の治療を開始されたばかりの飼い主様からのご相談でした。

基本的にワンちゃん猫ちゃんの糖尿病の治療にはインスリン投与が必要なのですがその量がその子その子により違い投与量の決定に時間がかかることが普通に多いのです。

特に猫ちゃんの糖尿病は人間の2型糖尿病に近いと考えられており、生活習慣が原因で単にインスリンが出にくくなっていたり、効きにくくなっていたりするだけのこともあり、そこに外部から投与するインスリの量を合わせていくことの難しさがあります。

インスリン量の決定に少し時間を要する事が飼い主様に不安を生じさせ「他の病院でも聞いてみよう」となるようです。

ご相談を聞いてみますと「私もそちらの先生の治療方針を尊重します。当院でも治療方針は変わらないと思います」ともとの病院での継続治療をお願いするケースがほとんどでした。

今回の画像の猫ちゃんも糖尿病治療が始まって3週間くらいで最初は飼い主様のみでご相談にこられました。

お話を聞く限りでは多飲多尿といった糖尿病に特徴的な症状も改善してきているようでしたので治療は順調なように感じました。

ただ段々と体重が減少(インスリン量が適切でないと体重が減って来ます)してきていることから「もう少しインスリンの投与量を増やしてあげる必要があるのかな」と感じましたのでそうお伝えしたところこの猫ちゃんの性格から入院が難しいとの事でした。

入院が難しいとはどう言う事を意味するかといいますとインスリン投与量の決定には病院でお預かりしある量のインスリンを投与しその後その量で血糖値が適切にコントロールできているかを数時間毎にチェックしていかなければならないのですがそれが難しくインスリン量がきちんと決められないという事です。

それで「自宅で血糖値をチェックしインスリン投与量を決めたいのでリブレを装着してほしい」とのご依頼でした。

そのような事情がありましたので今回はお引き受けすることにしました。

まずお話の印象から糖尿病の治療は上手くいっているように感じられましたので一度フルクトサミンあるいは糖化アルブミンを調べてみられてはと提案しました。

これらの測定値は過去2~3週間のインスリンの投与量が適切であったかどうかをみる指標になります。

ここに問題なければわざわざリブレを装着する必要も転院していただく必要もありません。

下はフルクトサミン(FRU)の測定結果で532μmol/Lです。



この値が450以上の場合はインスリン量の再考が必要という事です。

フルクトサミンの測定結果からインスリン量の再考が必要な事が示されましたので一番上の画像のように血糖値センサーを装着しリーダー(読み取り器)をお貸しし自宅で血糖値の測定をしていただく事にしました。

↓リーダー


下のように自宅での測定結果をメールで送って頂き、電話やメールでインスリン投与量をアドバイスをさせて頂きました。

2024-06-12 07:00:00

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猫のフィラリア症ムービー(リンク先に動画があります)
https://www.nekomamo.com/parasite/filaria/movie/

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