
鼻汁のご相談で来院された高齢の猫ちゃん。
診察のついでに「爪切りもお願いします」とのことで四肢を確認しました。
そのとき気づいたのが、4本すべての脚で爪が太くなっていることでした。
「爪が太くなる理由は年齢だけではない」
高齢になると、爪とぎの回数が減ったり活動量が落ちたりすることで爪が伸びやすくなることはよくあります。
ただ今回は少し気になりました。飼い主様に伺うと、どこの足とは言えないが、なんとなく歩きづらそうとのことでした。
「関節が痛くて爪とぎをしなくなっている可能性」
猫は痛みをとても隠す動物です。
実際には、ジャンプが減る、爪とぎをしなくなる、動きがゆっくりになるといった変化として現れることが多いです。
そこで今回は関節の痛みを疑い、レントゲン検査を行いました。
「レントゲンで見えた変化」
画像は左肘のレントゲンです。
注目してほしいのは、関節の受け皿側、つまり体重を受ける側の部分です。
この部分が、他の場所よりも白く強く写っています。

※高齢猫の肘関節。受け皿側の白さが強くなっています
「白く見えるのは何が起きているのか」
これは軟骨下骨硬化と呼ばれる変化で、長年の負担によって骨が硬くなっている状態です。
「なぜこれが痛みにつながるのか」
関節は本来、骨と骨の間にクッション(軟骨)があり、衝撃をやわらげながらスムーズに動く構造になっています。
しかし、軟骨がすり減る、骨同士が近づく、当たる力が直接骨にかかる、骨が防御反応で硬くなる(=白く見える)という変化が起きると、衝撃を吸収できなくなり、動かすたびに負担がかかる状態になります。
つまり、白くなっている部分は負担が集中している場所であり、その分、動かすと痛みが出やすい状態です。
「たとえると」
本来はクッションの上で関節が動いているのに対して、今は硬い板どうしが直接こすれているような状態です。
「若い猫との違い」
比較として、3歳の猫の同じ部位のレントゲンも見てみます。
同じ場所でも、若い猫では白さが均一でやわらかい印象です。
少し分かりにくいかもしれませんが、この白さの違いが負担の蓄積の違いです。

※若齢猫の肘関節。白さが均一で滑らかです
「診断と今後の対応」
今回の猫ちゃんは、変形性関節症が疑われる状態と考えられました。
猫では非常に多い病気ですが、鳴いたり足を引きずったりしないため、見逃されていることが多いです。
今回のケースでは、ソレンシア(月1回の注射による痛みのコントロール)をご提案しました。
「最後に」
猫は「なんとなく元気がない」「動きが鈍い」といった形で痛みを抱えていることがあります。
爪が太くなってきた、ジャンプしなくなった、動きがゆっくりになった、グルーミングが減ったといった変化があれば、一度関節のチェックをおすすめします。
小さな変化の中に、ヒントが隠れていることがあります。

























