3日前からの嘔吐、元気・食欲の消失を主訴に、3歳の若い猫ちゃんが来院されました。
若い猫ちゃんが急に嘔吐を繰り返した場合、まず頭に浮かぶのは異物誤飲です。
しかし飼い主様にお話をうかがった限りでは、誤飲を疑うような心当たりはありませんでした。
ペースト状のものは少量食べるものの、それも吐いてしまうとのことでした。
まずレントゲン検査を実施すると、腹部に白い陰影が認められました。

さらに腹部エコー検査を行うと、胃の後ろから十二指腸の始まり付近にかけて、大きな嚢胞状の構造物が描出されました。(※最初の画像)
当初は「何か異物が詰まり、その手前に液体が貯留しているのではないか」とも考えました。
しかし、よく観察すると壁の性状が腸管らしくありません。
同時に実施していた血液検査でも特筆すべき異常は認められませんでした。
正直なところ、この時点で私にはこの構造物が何なのか分かりませんでした。
ただ、主訴は嘔吐です。
もし消化管閉塞などの緊急性の高い病気であった場合、迅速な対応が必要になります。
私自身では診断にたどり着くことができず、また様子を見てよい症例とも思えなかったため、夜間救急対応が可能な病院を受診していただくことにしました。
夜間病院での診断
翌日、飼い主様のみが結果報告のため来院されました。
夜間病院では痛み止めの注射を受け、帰宅後は元気・食欲ともに回復し、嘔吐も認められなくなったとのことでした。
診断としては、差し迫った緊急性はないものの、子宮断端の拡張が疑われるとのことでした。
この猫ちゃんは以前に当院で避妊手術を受けています。
そのため、避妊手術後に残る子宮断端が何らかの理由で拡張している可能性が考えられたようです。
ただし確定診断には至らず、CT検査などによるさらなる精査が必要との判断になりました。
私自身も、この時点では「なるほど、そういう可能性もあるのか」と思いました。
CT検査で見えてきたもの
後日、二次診療施設でCT検査および嚢胞内容液の検査が実施されました。
その結果、診断は「膵嚢胞疑い」でした。

※FAXによる報告書ですので少し文字がにじんでいます。
どうやら私がエコーで確認していた大きな嚢胞状病変は、子宮ではなく膵臓由来の病変である可能性が高いとのことでした。
検査時には嚢胞内容液の抜去も実施されました。
嚢胞内容液中の膵酵素値は基準値内で、明らかな膵炎を示唆する所見は認められませんでした。
その後は嘔吐もなく、元気・食欲も維持できています。
今回の症例では、大きくなった嚢胞が胃や十二指腸を圧迫し、それが嘔吐の原因になっていた可能性があります。
内容液を抜去したことで圧迫が軽減され、症状の改善につながったのかもしれません。
現在は投薬を終了し、二次病院で定期的に嚢胞の状態を確認しながら経過観察となっているようです。
状況によっては外科的に嚢胞の切除も必要になってくるとのことです。
振り返ってみると
後から考えると、最初のエコー検査で見えていた病変は確かに胃の後ろから十二指腸付近に存在していました。
しかし、その時点で私にはそれが膵臓由来の嚢胞だとは分かりませんでした。
若い猫ちゃんの嘔吐というと異物誤飲を考えることが多く、実際に私もまずそこを疑いました。
夜間病院では子宮断端の拡張が疑われ、その後のCT検査で膵嚢胞疑いという診断に至りました。
若い猫の嘔吐から始まった症例でしたが、最終的には膵嚢胞が疑われるという意外な経過をたどりました。
私自身、とても勉強になった症例でした。














