みなさまに心の安らぎをご提供できる「かかりつけ動物病院」を目指しています。茨木市のハリマウ動物病院

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猫のフィラリア症予防 再度のご提案③

カテゴリ : 感染症・予防



先週の続き今回はご提案の最終回で予防方法についてです。

ワンちゃんでは1月毎に錠剤や散剤、おやつタイプのお薬の内服、液体のお薬を皮膚に滴下、1年に1回の注射などいくつかの方法があります。

一方猫ちゃんでは今のところ日本国内で承認されているお薬は液体の皮膚滴下タイプのみで1月毎に投与します。



この皮膚滴下タイプのお薬はフィラリアの他にもノミやマダニなどの外部寄生虫、回虫などの消化管内寄生も同時にターゲットにしているためフィラリア予防を目的とすると必要のないお薬の成分が別に2つ入っています。

少し抵抗感を感じるかと思いますが安全性は確立されています。

少しでも余計なお薬は投与したくないということであれば猫ちゃん用の消化管内寄生虫駆除薬として販売されているお薬がフィラリア予防には認可外(海外ではフィラリア予防の認可が下りています)ですが利用できます。

ただこのお薬にもミルベマイシン、プラジクアンテルという2つの成分が入っておりこのうちプラジクアンテルはフィラリア予防には必要ありません。

ところでワンちゃんの飼い主様であればフィラリア予防薬の投与を開始する前に血液検査をして現在フィラリアに感染していないかどうかのチェックが必要な事はご存じですよね。

これは万が一フィラリアに感染していて血液中にミクロフィラリアがたくさん泳いでいる状態の子に予防薬を投与してしまうとたくさんのミクロフィラリアが一斉に死滅しショック症状をおこす可能性がありそれを避けるためです。

猫ちゃんでは先週のブログでも話題にしましたようにミクロフィラリアがたくさん血中を泳いでいる状態というのはなかなか考えづらく、そのため臨床現場では血液検査なしで処方されている事が多いのではないでしょうか?

当院では念のため健康診断時の血液検査項目にフィラリア抗原抗体検査(ゴールドスタンダードではありませんが)も含めておき感染の有無をチェックしています。
2024-04-10 07:00:00

猫のフィラリア症予防 再度のご提案②

カテゴリ : 感染症・予防

                          作画:当院スタッフ

先週の続きです。

今回はフィラリア症の診断方法についてお話しします。

その前にフィラリアの一生は

感染動物の心臓や肺動脈と呼ばれる血管内でミクロフィラリア(フィラリアの赤ちゃん)が誕生

ミクロフィラリアが感染動物の血と一緒に吸血され蚊の体内へ、第3期幼虫まで脱皮したところで蚊の口元まで移動

蚊がまた別の動物を吸血しその動物へ第3期幼虫が感染

皮下や筋肉内で過ごし第4期幼虫に、その後第5期幼虫になったところで血管内へ移動し心臓や肺動脈へ到達、成虫になる

オスとメスが出会いミクロフィラリアが誕生

という感じです。

それではフィラリアの診断方法について

※陰性結果の画像しか用意できませんでした。

①血液中にミクロフィラリアが泳いでいないかを顕微鏡で見てみる。



②フィラリアの成虫から出ているある成分(抗原といいます)を検査キットで検出。(ワンちゃん用ですが一応猫ちゃんにも利用できます。)



③フィラリアの幼虫を排除するために感染動物が作り出した武器(抗体といいます)が血液中に出ていないかを検査センターさんに血液を送り調べてもらう。
抗体検査は猫ちゃんのみの検査でいっしょに抗原も調べてくれます。



④胸部レントゲン撮影をおこない肺動脈と呼ばれる血管が太くなっていないか
を見てみる。フィラリアが感染していると肺動脈が肺静脈の2倍くらいの太さになっていることがあります。



⑤心エコー検査をおこない心臓や肺動脈にフィラリアが住み着いていないかを
見てみる。



以上の5つが考えられます。

ワンちゃんでは②の抗原検査キットを使用した方法がゴールデンスタンダードとして存在するのですが猫ちゃんでは以下の理由でどれも決定打にかけます。

①について、ワンちゃんではオス、メスが同時に心臓や肺動脈で成虫になりそこで出会いミクロフィラリアが誕生という経過は普通なのですが、猫ちゃんの体内ではフィラリアの幼虫が性成熟に達するまで成長することが難しく、成長してもオスだけメスだけということが多くミクロフィラリアが誕生しづらい

②について、この検査キットは主にメスのフィラリアが出している成分を検出するもので猫ちゃんではオスのフィラリアのみが寄生していることもありその時は検出できない。

③について、この検査は第四期幼虫までの幼虫に対して作られた抗体を検出するものでそれ以降の幼虫や成虫は検出できない。

④について、肺動脈が太いからと言ってフィラリア症とは限らない。フィラリア症で必ず太くなるわけではない。

⑤について、心臓や肺動脈に寄生している成虫のみ検出可能で幼虫は検出できない。フィラリア成虫の確認がエコー検査技術者の技量に左右される。私自身もワンちゃんではフィラリアが寄生している心臓や肺動脈は過去に何度も見たことはあるのですが猫ちゃんではありません。

実際に猫のフィラリア症を疑った場合の検査としては③、④、⑤などを組み合わせて行っていくことになります。

次週に続きます。
2024-04-03 07:00:00

猫のフィラリア予防 再度のご提案①

カテゴリ : 感染症・予防


毎年4、5月はフィラリア症予防の開始時期で茨木市内では11月頃まで月1回お薬を投与していきます。

フィラリアは蚊によって運ばれてくる寄生虫です。

蚊により運ばれてくるくらいですから最初はすごく小さいのですが成長するとそうめんのような形状になり心臓や肺に住み着き悪さをします。



この病気はワンちゃんの飼い主様の間ではほぼ知らない人がいないくらい有名ですが、猫ちゃんの飼い主様にはその恐ろしさも含めまだまだ知られていません。

知られていない理由としては我々獣医師側が積極的に飼い主様に予防の大切さをお知らせしてこなかった事が考えられます。

それでは何故積極的に予防をお勧めしてこなかったのでしょうか?

一つはフィラリアにとってワンちゃんの体内は住み心地が良いのですが、猫ちゃんの体内はあまり住み心地が良くありません。

蚊によって運ばれてきた小さな幼虫は成虫まで成長することが難しく(※直ぐに排除されてしまう)予防していなくても「大丈夫」となるケースがワンちゃんと比べて多いからです。

「大丈夫」となっているケースがワンちゃんに比べ多いので獣医師側も「ワンちゃんほど積極的に予防を勧めなくてもいいんじゃないかなぁ」という感じになってしまいます。

※この幼虫が排除される時に炎症反応がおき犬糸状虫随伴呼吸器疾患と呼ばれる咳・呼吸困難・嘔吐などの症状を伴った病気を発症することもあります(第一病期)。

またフィラリア症の診断方法はワンちゃんでは確立されていますが、猫ちゃんではまだまだ決め手となる方法がありません。

そのためフィラリア症が見過ごされてしまい、結果「猫のフィラリア症ってほとんど見ないよね。予防を積極的に勧める必要があるのかなぁ」となってしまうことも理由にあげられると思います。

予防意識の進んだ現在ではワンちゃんでも遭遇することの少なくなったフィラリア症ですが私が獣医師として駆け出しの頃はよく見かけました。学生時代を過ごした宮崎県は好発地域であり大学病院でそれこそ毎週のようにフィラリア症のワンちゃんに接していました。

一方猫ちゃんでは猫のフィラリア症についての知識を得た今になるとあれはフィラリア症だったのかなと思う経験はいくつかあるのですが自身でフィラリア症と診断したケースは未だありません。

「それでは予防しなくてもいいんじゃないのかなぁ」と皆さんなると思います。

ただワンちゃんに比べ数は少ないとは言え猫ちゃんもフィラリア症を発症する事はまぎれもない事実です。



しかもワンちゃんの場合はフィラリア症を発症しても例外はあるでしょうが通常容態は徐々に悪化していくのですが(治療施す猶予がまだ残されているという事です)、猫ちゃんの場合「突然死」という恐ろしい結果を招く事が知られています。

上の方で蚊によって運ばれてきた幼虫は直ぐに猫ちゃんの体内から排除されると書きましたが、ここをすり抜けた幼虫は肺動脈と呼ばれる心臓の右側と肺を連絡する血管の中に住み着き成虫になります。

フィラリアの成虫の寿命は猫ちゃんの体内では2,3年ほどと言われています。この成虫が生きている間はまだよいのですがこの成虫がいったん死ぬと様々な炎症反応がおき猫ちゃんに「突然死」を招いてしまうことがあります(第二病期)。



またこの「突然死」をおこさず炎症反応を乗り切ったとしても猫ちゃんの肺が
慢性的に取り返しのつかない状態になってしまうこともあります(第三病期)。

こういう事実がありながらあまり遭遇する機会が無いからと言って猫ちゃんの飼い主様にフィラリア症についてお知らせしないことは猫ちゃんおよび飼い主様にとって良くないことだと考え当院では猫ちゃんにもフィラリア症の予防をご提案しています。

次週に続きます。
2024-03-27 07:00:00

マグカップ

カテゴリ : その他


少し古い話題になるのですが1月は妻の誕生日でした。

去年は誕生日プレゼントを用意していなくて「これはどうしたものかなぁ」と思っていたら妻の友人から「猫柄の小皿セット」が送られてきていて良かったですみたいなお話をブログでしました。

今回もその妻の友人から誕生日プレゼントとしてマグカップが3つ送られてき
ていました。

この3つにはきちんと意味があってマグカップの柄を我が家の3匹の猫の柄に合わせてくれています。

我が家にはキジ・白ぶち猫の「なっとう」、サビ猫の「くぬぎ」、今年何回か話題にしました黒猫の「ジャック」がいます。

向かって左のカップは「なっとう」(※キジ・白ぶちの柄のマグカップはなかったようで黒・白ぶちとなっています)を



真ん中のカップは「くぬぎ」を



右側のカップは「ジャック」をそれぞれ表しています。



どうですかかわいいでしょ。

あっ、ちなみに今年は私もプレゼントをきちんと用意しましたよ。

2024-03-20 07:00:00

 糖尿病と血糖値モニターシステム・リブレ

カテゴリ : 内分泌:ホルモンの異常や糖尿病


ある日「4日前から食欲がおち、2日前から全く食べず、本日嘔吐しだしました。1週間くらい前までお水をたくさん飲みおしっこの量も多かった」との主訴で猫ちゃんが来院されました。

「お水をたくさん飲みおしっこの量が多い」状態を多飲多尿といいますが、このような猫ちゃんを目にした時には獣医さんはまず腎臓病や糖尿病がないかを気にします。

この猫ちゃんは血液検査で血糖値が600mg/dl以上(普通は100前後です)、尿検査で糖分が出ましたので糖尿病と診断しました。


※GLU = 血糖値

糖尿病は一般的には初期の頃は非常にお腹がすきますので病気なのに普通かそれ以上に食べており健康なように見えますが、同時におしっこをたくさんするようにもなります。

そのような状態が続くとやがて脱水をおこし元気・食欲がなくなってしまい治療が必要となります。

治療はインスリンを投与し血糖値を下げていきます。もう少し正確に言いますとインスリンを投与し体が血液中の糖分(エネルギー)を利用できるようにしていきます。

インスリンは糖分を体に取り込む手助けをしています。糖尿病とはインスリンが不足し体が糖分を取り込めない病気だと言えます。

糖尿病では体が糖分を利用できないので血液中が糖分でいっぱいいっぱいになり、おしっこにも糖分が出てきます。

糖分が利用できないので食べたものが身につかずに痩せてもきます。

詳しい理由は省略しますが血糖値が高い状態はのどが渇きます、またおしっこの量が増え水分がたくさん失われることもあわせてたくさん水を飲むようになります。

上の動画の猫ちゃんは血糖値を下げるために点滴で血管から持続的にインスリンを投与しています。

同時にエネルギーとなる糖分も点滴で流しています。

「糖尿病で血糖が高いのにさらに糖分を補充するの?」と思われるかもしれません。

もちろん治療開始時は生理食塩水の点滴のみで糖分は補充しないのですが、インスリンの投与をしばらくし続けると血糖値が下がって来ます、そのまま続けると今度は血糖値が下がりすぎてしまい利用できる糖分がなくなる低血糖という危険な状態になります。

「じゃあインスリンを切ればいいじゃないか」となりますがインスリンを切るとまた糖分を利用できずに血糖値が上がってきますので切ることができないのです。

そこで糖分も補充しつつインスリンを投与するということを行うのです。

これは食欲がもどり自身で糖分が補充できるようになるまで続けます。

食欲が出てきたらインスリンを皮下注射による投与に切り替え退院していただきます。

上の動画は治療3日目フードを食べだした瞬間を撮影したものです。

この後、糖分の点滴を終了しインスリンを皮下投与に切り替え5日目に退院していただきました。

ところで動画の猫ちゃんの背中をよく見ていただくと毛が刈られていますよね。

動画では分かりにくいのですが血糖値センサーを張り付けています。



下のリーダーを近づけるとその時点の血糖値を知ることができます。

また血糖の変化を折れ線グラフで図示する事も可能です。



これは非常に便利な検査機器です。

以前は血糖の変化を追っていくのにその都度ワンちゃんや猫ちゃんに我慢をしてもらい何回も採血しなければなりませんでしたが、これを利用することでその苦痛を無くしてあげることができるようになりました。

また退院していただいた直後はインスリンの量がまだまだその子にあった量では無いこともあり、血糖値が全然下がらなかったり逆に下がり過ぎてしまって体調が安定しないこともあります。

そのような時は再度入院をお願いし血糖値の変化を追わなければならなかったのですが、この検査機器が登場してからはセンサーを付けたまま退院していただいておりますので自宅で血糖の変化を追ってもらえるようになりました。

下の写真のように自宅での測定結果の画像を送っていただき「インスリンの量を増やしましょうか、減らしましょうか」と電話やメールでインスリン量調整のやりとりができるようになりました。



このセンサーは人間用ですので肌質の違うワンちゃんや猫ちゃんにそのまま使用すると以前は直ぐに取れてしまうこともあったのですが生体ボンドを利用することでその問題も無くなりました。
2024-03-13 07:00:00

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猫のフィラリア症ムービー(リンク先に動画があります)
https://www.nekomamo.com/parasite/filaria/movie/

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