みなさまに心の安らぎをご提供できる「かかりつけ動物病院」を目指しています。茨木市のハリマウ動物病院

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猫のフィラリア予防 再度のご提案①

カテゴリ : 感染症・予防


毎年4、5月はフィラリア症予防の開始時期で茨木市内では11月頃まで月1回お薬を投与していきます。

フィラリアは蚊によって運ばれてくる寄生虫です。

蚊により運ばれてくるくらいですから最初はすごく小さいのですが成長するとそうめんのような形状になり心臓や肺に住み着き悪さをします。



この病気はワンちゃんの飼い主様の間ではほぼ知らない人がいないくらい有名ですが、猫ちゃんの飼い主様にはその恐ろしさも含めまだまだ知られていません。

知られていない理由としては我々獣医師側が積極的に飼い主様に予防の大切さをお知らせしてこなかった事が考えられます。

それでは何故積極的に予防をお勧めしてこなかったのでしょうか?

一つはフィラリアにとってワンちゃんの体内は住み心地が良いのですが、猫ちゃんの体内はあまり住み心地が良くありません。

蚊によって運ばれてきた小さな幼虫は成虫まで成長することが難しく(※直ぐに排除されてしまう)予防していなくても「大丈夫」となるケースがワンちゃんと比べて多いからです。

「大丈夫」となっているケースがワンちゃんに比べ多いので獣医師側も「ワンちゃんほど積極的に予防を勧めなくてもいいんじゃないかなぁ」という感じになってしまいます。

※この幼虫が排除される時に炎症反応がおき犬糸状虫随伴呼吸器疾患と呼ばれる咳・呼吸困難・嘔吐などの症状を伴った病気を発症することもあります(第一病期)。

またフィラリア症の診断方法はワンちゃんでは確立されていますが、猫ちゃんではまだまだ決め手となる方法がありません。

そのためフィラリア症が見過ごされてしまい、結果「猫のフィラリア症ってほとんど見ないよね。予防を積極的に勧める必要があるのかなぁ」となってしまうことも理由にあげられると思います。

予防意識の進んだ現在ではワンちゃんでも遭遇することの少なくなったフィラリア症ですが私が獣医師として駆け出しの頃はよく見かけました。学生時代を過ごした宮崎県は好発地域であり大学病院でそれこそ毎週のようにフィラリア症のワンちゃんに接していました。

一方猫ちゃんでは猫のフィラリア症についての知識を得た今になるとあれはフィラリア症だったのかなと思う経験はいくつかあるのですが自身でフィラリア症と診断したケースは未だありません。

「それでは予防しなくてもいいんじゃないのかなぁ」と皆さんなると思います。

ただワンちゃんに比べ数は少ないとは言え猫ちゃんもフィラリア症を発症する事はまぎれもない事実です。



しかもワンちゃんの場合はフィラリア症を発症しても例外はあるでしょうが通常容態は徐々に悪化していくのですが(治療施す猶予がまだ残されているという事です)、猫ちゃんの場合「突然死」という恐ろしい結果を招く事が知られています。

上の方で蚊によって運ばれてきた幼虫は直ぐに猫ちゃんの体内から排除されると書きましたが、ここをすり抜けた幼虫は肺動脈と呼ばれる心臓の右側と肺を連絡する血管の中に住み着き成虫になります。

フィラリアの成虫の寿命は猫ちゃんの体内では2,3年ほどと言われています。この成虫が生きている間はまだよいのですがこの成虫がいったん死ぬと様々な炎症反応がおき猫ちゃんに「突然死」を招いてしまうことがあります(第二病期)。



またこの「突然死」をおこさず炎症反応を乗り切ったとしても猫ちゃんの肺が
慢性的に取り返しのつかない状態になってしまうこともあります(第三病期)。

こういう事実がありながらあまり遭遇する機会が無いからと言って猫ちゃんの飼い主様にフィラリア症についてお知らせしないことは猫ちゃんおよび飼い主様にとって良くないことだと考え当院では猫ちゃんにもフィラリア症の予防をご提案しています。

次週に続きます。
2024-03-27 07:00:00

マグカップ

カテゴリ : その他


少し古い話題になるのですが1月は妻の誕生日でした。

去年は誕生日プレゼントを用意していなくて「これはどうしたものかなぁ」と思っていたら妻の友人から「猫柄の小皿セット」が送られてきていて良かったですみたいなお話をブログでしました。

今回もその妻の友人から誕生日プレゼントとしてマグカップが3つ送られてき
ていました。

この3つにはきちんと意味があってマグカップの柄を我が家の3匹の猫の柄に合わせてくれています。

我が家にはキジ・白ぶち猫の「なっとう」、サビ猫の「くぬぎ」、今年何回か話題にしました黒猫の「ジャック」がいます。

向かって左のカップは「なっとう」(※キジ・白ぶちの柄のマグカップはなかったようで黒・白ぶちとなっています)を



真ん中のカップは「くぬぎ」を



右側のカップは「ジャック」をそれぞれ表しています。



どうですかかわいいでしょ。

あっ、ちなみに今年は私もプレゼントをきちんと用意しましたよ。

2024-03-20 07:00:00

 糖尿病と血糖値モニターシステム・リブレ

カテゴリ : 内分泌:ホルモンの異常や糖尿病


ある日「4日前から食欲がおち、2日前から全く食べず、本日嘔吐しだしました。1週間くらい前までお水をたくさん飲みおしっこの量も多かった」との主訴で猫ちゃんが来院されました。

「お水をたくさん飲みおしっこの量が多い」状態を多飲多尿といいますが、このような猫ちゃんを目にした時には獣医さんはまず腎臓病や糖尿病がないかを気にします。

この猫ちゃんは血液検査で血糖値が600mg/dl以上(普通は100前後です)、尿検査で糖分が出ましたので糖尿病と診断しました。


※GLU = 血糖値

糖尿病は一般的には初期の頃は非常にお腹がすきますので病気なのに普通かそれ以上に食べており健康なように見えますが、同時におしっこをたくさんするようにもなります。

そのような状態が続くとやがて脱水をおこし元気・食欲がなくなってしまい治療が必要となります。

治療はインスリンを投与し血糖値を下げていきます。もう少し正確に言いますとインスリンを投与し体が血液中の糖分(エネルギー)を利用できるようにしていきます。

インスリンは糖分を体に取り込む手助けをしています。糖尿病とはインスリンが不足し体が糖分を取り込めない病気だと言えます。

糖尿病では体が糖分を利用できないので血液中が糖分でいっぱいいっぱいになり、おしっこにも糖分が出てきます。

糖分が利用できないので食べたものが身につかずに痩せてもきます。

詳しい理由は省略しますが血糖値が高い状態はのどが渇きます、またおしっこの量が増え水分がたくさん失われることもあわせてたくさん水を飲むようになります。

上の動画の猫ちゃんは血糖値を下げるために点滴で血管から持続的にインスリンを投与しています。

同時にエネルギーとなる糖分も点滴で流しています。

「糖尿病で血糖が高いのにさらに糖分を補充するの?」と思われるかもしれません。

もちろん治療開始時は生理食塩水の点滴のみで糖分は補充しないのですが、インスリンの投与をしばらくし続けると血糖値が下がって来ます、そのまま続けると今度は血糖値が下がりすぎてしまい利用できる糖分がなくなる低血糖という危険な状態になります。

「じゃあインスリンを切ればいいじゃないか」となりますがインスリンを切るとまた糖分を利用できずに血糖値が上がってきますので切ることができないのです。

そこで糖分も補充しつつインスリンを投与するということを行うのです。

これは食欲がもどり自身で糖分が補充できるようになるまで続けます。

食欲が出てきたらインスリンを皮下注射による投与に切り替え退院していただきます。

上の動画は治療3日目フードを食べだした瞬間を撮影したものです。

この後、糖分の点滴を終了しインスリンを皮下投与に切り替え5日目に退院していただきました。

ところで動画の猫ちゃんの背中をよく見ていただくと毛が刈られていますよね。

動画では分かりにくいのですが血糖値センサーを張り付けています。



下のリーダーを近づけるとその時点の血糖値を知ることができます。

また血糖の変化を折れ線グラフで図示する事も可能です。



これは非常に便利な検査機器です。

以前は血糖の変化を追っていくのにその都度ワンちゃんや猫ちゃんに我慢をしてもらい何回も採血しなければなりませんでしたが、これを利用することでその苦痛を無くしてあげることができるようになりました。

また退院していただいた直後はインスリンの量がまだまだその子にあった量では無いこともあり、血糖値が全然下がらなかったり逆に下がり過ぎてしまって体調が安定しないこともあります。

そのような時は再度入院をお願いし血糖値の変化を追わなければならなかったのですが、この検査機器が登場してからはセンサーを付けたまま退院していただいておりますので自宅で血糖の変化を追ってもらえるようになりました。

下の写真のように自宅での測定結果の画像を送っていただき「インスリンの量を増やしましょうか、減らしましょうか」と電話やメールでインスリン量調整のやりとりができるようになりました。



このセンサーは人間用ですので肌質の違うワンちゃんや猫ちゃんにそのまま使用すると以前は直ぐに取れてしまうこともあったのですが生体ボンドを利用することでその問題も無くなりました。
2024-03-13 07:00:00

高血圧症に伴う肥大型心筋症フェノタイプ

カテゴリ : 循環器


先週の続きです。

上のエコー動画は先週ご紹介したものと同じものです。心臓の壁(筋肉)が著しく肥大しており肥大型心筋症になっています。

詳しい説明は省きますが左心室という場所に異常な構造物も認められ、それは将来「拘束型心筋症」と呼ばれるタイプの心臓病の症状が出てくる可能性を示しています。

下にこれも先々週に紹介した猫ちゃんの正常な心臓のエコー動画をもう一度掲載しておきます。心臓の壁の幅を上のエコー動画と比べてみてください。



それでは心筋症が見つかった場合治療はどうしていくのでしょうか?

先ずは心臓から大動脈に流れていく血液の速度に注目します。

心筋症で特に今回の猫ちゃんのような肥大型の場合は病期が進むとこの場所の血液速度が速くなることがあります。

それは猫ちゃんにとっては良くない事なので速度を調整するためのお薬を使用します。

下の画像はこの場所の血液の速度を測定している場面です。



この場所の血液の速度は2.548m/s(254.8cm/s)となっておりこれは正常速度の2倍強の値です。

治療は3.5m/sあたりを超えてきたら必要と言われています。

次に心臓の左心房という場所の大きさに注目し心筋症のステージング(病期の進行度を確かめる事)をします。

下の画像の場面で左心房のサイズを測定しています。



少し過小評価してしまっているのですが左心房のサイズは8.8㎜と正常範囲内です。

このサイズが17㎜を超えてきたら対応が必要と言われています。

心筋症のステージはステージA、B₁、B₂、C、Dと分かれます。

A  心筋症の素因があるが、心筋症に罹患していない
  ※アメショー、スコティッシュ、ノルウェージャン、ブリティッシュ
   ・ショートヘアー、ペルシャ(ヒマラヤン)、ベンガル、メインクーン
    、ラグドールさんなどは遺伝的に心筋症になる素因があります。

B₁ 心筋症に罹患しているが症状はなく、左心房サイズが正常から軽度拡大

B₂ 心筋症に罹患しているが症状はない、ただし左心房サイズが中等度から
  重度に拡大している。

C 現在あるいは過去に心筋症に伴う臨床症状を発現している

D 難治性

治療は一般的にステージB₂から必要と言われています。

今回の猫ちゃんは左心房サイズが正常でしたのでステージB₁と診断しました。

それでは今回の猫ちゃんには何も治療を行わなかったのでしょうか?

猫ちゃんの心筋症は循環器の専門の先生に聞かれると言葉足らずで怒られるかもしれませんが「本当の心筋症」と「何かの病気により引き起こされる心筋症」に分けることができると言えます。

肥大型心筋症は高血圧症や甲状腺機能亢進症に伴い引き起こされることが知られています。

今回この猫ちゃんは甲状腺に異常はなかったのですが、最高血圧が174mmHg
と治療が必要とされる160mmHgを上回っており高血圧症が認められましたので、それが心筋症の引き金になったのではと考えています。

現在、血圧を下げるお薬を飲んでいただいております。

二次的な心筋症の場合は病名にフェノタイプとつけて区別をするようです。

ですので今回の猫ちゃんは「高血圧症に伴う肥大型心筋症フェノタイプ」との診断名にしました。
2024-03-06 07:00:00

NT-proBNP

カテゴリ : 循環器


当院では全ての年齢層のワンちゃんや猫ちゃんに対して年1~2回の健康診断をお勧めしています。

健康診断は問診、身体検査、血液検査、尿検査、レントゲン検査、エコー検査などを状況に応じ組み合わせて行っています。

それらの結果により専門医を紹介させていただく事もあります。

上の画像はある猫ちゃんの血液検査の結果の一部ですが、最近猫ちゃんのオーナー様にはオプションとしてNT-proBNPという項目の検査も提案しています。

NT-proBNPは心臓病の検出に役立ちます。

ワンちゃんでは心臓病が始まるとたいてい心臓に雑音が生じますのでそれを聴診器でとらえることで心臓病を検出することが可能です。

またある程度心臓病が進行している状態ですと心臓の形に変化が生じていますのでそれをレントゲン検査でとらえることも比較的容易です。

が猫ちゃんの心臓病は心臓がかなり悪い状態になっていてもワンちゃんのように心臓に雑音が生じていなかったり、レントゲン検査でも正常な心臓となんら変わりない形をしている事も多いです。

猫ちゃんの心臓病を確かめる為にはエコー検査で心臓内部の状況、血液の流れを直接見ることが1番なのですが、その前段階の検査としてNT-proBNP検査を実施しています。

猫ちゃんの心臓病では心臓の壁(筋肉)に問題が生じることで発症する心筋症が多く見られます。

心筋症があると心臓の壁に負担がかかります。

血液中のNT-proBNPは心臓の壁に負担がかかると高くなってきます。

この検査結果の猫ちゃんは心雑音は無いのですが、NT-proBNPの値が1431.8pmol/Lと基準値の100pmol/Lを大幅に上回っており心筋症の存在が疑われました。

そこでエコー検査により心臓の状態を見てみました。




下の画像はエコー動画のある瞬間の静止画です。




点線1は心臓の右側と左側を分ける壁(筋肉)の、点線2は心臓の左側の壁の幅をそれぞれ測定しています。 点線1は9.8㎜、点線2は8.6㎜となっています。これらの壁の幅が6㎜を超えてきたら肥大型心筋症とよばれるタイプの心臓病を疑います。

今回聴診による心音は正常だったのでNT-proBNP値の数値が高いことがエコー検査をオーナー様に勧める説得材料となり、それが肥大型心筋症を診断するきっかけとなりました。

エコー検査は猫ちゃんにとっては多少のストレスを伴いますが痛みはほぼありませんので健康診断時に心エコー検査を組む合わせることも考えてみてください。

それでもエコー検査に抵抗のある方は、まず血液検査時にNT-proBNPを検査項目に加えて見られてはどうでしょうか?


※NT-proBNPは万能の検査ではなく、この値が正常にもかかわらず心筋症 
 になっている猫ちゃんもいます。

次週に続きます
2024-02-28 07:00:00

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猫のフィラリア症ムービー(リンク先に動画があります)
https://www.nekomamo.com/parasite/filaria/movie/

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