
先週のブログでは白猫さんの扁平上皮癌についてのお話でしたが、今回は「白」ではなく「黒」にまつわる腫瘍のお話です。
ある日「巻き爪が指に食い込んで怪我をしている」とのことでキジ猫さんが連れてこられました。
診てみますと前肢の指の爪が巻き爪状態になり先端が肉球に食い込んでいました。
これは頻繁に見かけるトラブルでこのような場合は爪を切り消毒、(状況により)化膿止のお薬の投与を行えば1週間くらいで傷はよくなります。
1週間後オーナー様から「傷口が乾いてきてよくなってきている」との電話連絡があり「あーそうですか良かったですね」となりました。
すかりその事が頭から離れていたさらに1週間後「まだすっきりしない」との連絡があり「おかしいなぁ」と診せていただいたのが上の画像です。(爪の食い込みはよくあるトラブルなので特に初診時は状況をカルテに記載したのみで画像は残していませんでした)
肉球の爪の食い込んでいた箇所がまだグジュグジュしています。
オレンジのラインで囲ってみます。

少し嫌な予感がしました。
それはメラノサイトという細胞(メラニン色素を作る細胞)が腫瘍化しているのではと思えたからです。
メラノサイトが腫瘍化したものをメラノサイト腫瘍と呼ぶのですがそれには悪性のものもあれば良性のものもあります。
それで先ずはメラノサイト由来の腫瘍であるかどうかを確かめるためにスタンプ細胞診という簡易検査を実施しました。
この検査では悪性、良性の区別は出来ません。

結果はメラノサイトが由来の腫瘍でした。
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オーナー様には悪性、良性の判断や治療方針の決定のために腫瘍科のある二次病院を受診していただきました。
※二次病院受診の結果、腫瘍は猫ちゃんではまれな「皮膚の悪性黒色腫(メラノーマ)」との診断でリンパ節への腫瘍細胞の浸潤(あまり良くない出来事)も認められました。
外科切除が実施されました。
