みなさまに心の安らぎをご提供できる「かかりつけ動物病院」を目指しています。茨木市のハリマウ動物病院

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猫の介護ハンドブック

カテゴリ : その他

本のご紹介です。

相棒猫ジャックですが今年の四月に推定ですが1歳となりました。

まだ1歳になったばかりだというのに深夜にジャックの寝顔をみていると
「ジャックが死んでしまったらどうしよう」とふと考えてしまうことがあります。

自身の年齢から考えるとその生涯をきちんと見届けてあげられる最後の猫になりそうな事と、今まで8匹の猫と暮らしてきたのですが一緒に出勤するなど今までのどの子よりも親密な時間を過ごしている事がそういうふうにふと思わせてしまうのもしれませんね。

少し寂しい事実なのですが今までの子はどちらかというと妻によりなついていたのじゃないかなぁと思います。

妻は猫に好かれる何かが自然と体から出ており僕はそれを「魔法」と呼んでいます。

ジャックはその魔法をかいくぐって僕に寄って来てくれます。

妻にはよく「魔法をかけないでね」とお願いしていますが・・・

皆さんも一度は自分のペットの最後の時について考えたことがあるのではないでしょうか?

あるいは今まさにその最後の時に向き合われている方もいらっしゃるのでは・・・・

最後の時は必ずどの子にも等しくやってきます。

この本はまだまだ若く元気なペットの飼い主様にはその時が来ても慌てない心構えを示し、今その最後の時に向き合っている飼い主様には心強い助言を与えてくれることでしょう。

介護のさまざまな場面で役立つケア方法が具体的にわかりやすく紹介されています。また弱りゆく動物と向き合い何かと気弱になりがちな飼い主様に執筆者の先生がところどころでかけられる言葉がとても暖かく慈愛に満ちたもので前向きな気持ちにさせてくれます。

第1章の終わりに心に残る言葉がありました。

「私は、最期を迎えるこの子に何をしてあげたらいいのか」というマインドではなく「私は、最期を迎えるこの子に何をしてあげたいか」というマインドへの切り替えが大切ですという言葉です。

これは人はある困難に直面した時に「どうしたらいいんだろう」って色々考えますよね、それでその答えを求めて色々な情報を集め、特に今の時代ならネットに答えを求めることも多いですよね。

それで色々な情報が頭に入って来て、あれもしてあげなきゃこれもしてあげなきゃってなって、それがしてあげられたならまだいいのかもしれませんが、そうでないと自分はあれもしてあげられないこれもしてあげられないって、してあげられたらしてあげられてで本当にこれで良かったのかなって、後悔ばかりですよね。

そうではなくて「こうしたい」って心構えのほうが前向きな気持ちになりそのために本当にすべきことに的がしぼれ、すべきと思い行ったことにも後悔はあるかもしれませんが 、前向きな気持ちで選択した行いですからきっと肯定的な気持ちが心に残るはずです。

執筆者の先生が伝えたかったこととは少しニュアンスが違っていると思いますが僕はこのようにとらえました。実際のニュアンスは皆さん本で確認してみてください。

介護と向き合われている飼い主様はもちろんですが、(各章を通して若いころからの備えの大切さが示されており)今まさに猫ちゃんワンちゃんのお世話を始めた飼い主様にこそお勧めの本です。
2024-06-05 07:00:00

一過性の心筋肥大

カテゴリ : 循環器

※緑の線は心電図です。

糖尿病で来院した猫ちゃんに著しい徐脈(心拍が遅くなること)が認められました。

その状況を確かめるため心臓のエコー検査を実施したところ、心臓の壁(筋肉)が分厚く、また左心房と呼ばれる場所が大きくなっていました。

上の動画はその時のものです。

下の2つの画像はその動画のある瞬間の静止画で心臓の壁(筋肉)の厚さと左心房のサイズを測っています。



少し専門的になりますが点線1では心室中隔と呼ばれる心臓の左と右を分ける壁(筋肉)の厚さを点線2では心臓の左側の壁の厚さをそれぞれ測っています

点線1は6.2mm 点線2は8.3mm とあり、ここが6.0㎜以上になってきたら心筋肥大があると考えます。



この場面では左心房と呼ばれるか場所のサイズを点線のところで測っています。

17.3㎜とありますが、17.0㎜を超えてきたら心不全をおこすリスクが高まると言われています。

ちなみにこのエコー動画の場面では(少し角度の違いはあるのですが)心臓が下の絵のように見えています。


※①心室中隔 ②左心室壁

また上の動画の右上にHR124とあります。これは心拍数が1分間に124回という事を示しています。

正常な猫ちゃんの心拍数は100~160と言われていますので一見正常なように思えますが、病院につれてこられた猫ちゃんや検査中の猫ちゃんは常にドキドキしていますので124は徐脈気味と考えます。

実際の聴診では80前後でした。

糖尿病はおしっこがたくさん出るため脱水をおこすのですが脱水が激しいと(詳しい説明は省きますが)1次的に心筋が肥大して見えることがあります。

今回も脱水による心筋の肥大が考えられました。

脱水改善のためには血管点滴を行えばよいのですが左心房と言う場所が大きくなっていますので慎重に点滴をしなければなりません。

これも詳し説明は省きますが「左心房の拡大」は「心不全をおこしていますよ」あるいは「慎重にしないと心不全をおこしますよ」というサインです。

この猫ちゃんの糖尿病の治療には血管点滴は必要不可欠です。

そこで点滴のスピードをものすごくゆっくりにし同時に循環不全を改善するお薬も持続点滴しました。

通常のスピードでそのまま点滴をすると心臓がパンクしてしまう可能性が高いからです。

ただ脱水の改善がはかどらなかったので途中から点滴のスピードを様子を見ながらあげていきました。

 

治療4日目のエコー動画です。

HR210とあり徐脈が改善しています、心臓の拍動のスピードが1地番上の動画と比べて速いですよね。



左心房サイズが12.3mm と正常に戻っています。




 

治療12日目のエコー動画です。(心電図にはつないでいません)



点線1が5.2㎜ 点線2が5.6㎜と心臓の壁の厚さが正常の6.0mm 以内に改善しています。

このことから初診時の心筋の肥大は一過性のものと考えられました。
2024-05-29 07:00:00

神戸から健診に、多発性嚢胞腎の遺伝子検査

カテゴリ : 腎・泌尿器


先週、神戸から妻の友人が猫を連れて遊びに来てくれました。

 茶白ぶちのどちらかというとエキゾチックロングヘアーっぽいのがペルシャ猫のナツ君、白色のどちらかというとペルシャ猫っぽいのがエキゾチックロングヘアーのハル君で二人ともおとなしい性格のかわいい男の子です。

ハル君はスッタドテイルの話題の時にもしっぽだけ登場してくれていました。

遠いところから車に揺られて到着したばかりで本人たちはきょとんとしていましたが早速健康診断を実施しました。

エコー検査もおこなったのですがワンちゃん猫ちゃんはゴソゴソ動いてしまい検査が難しくなることも多いなか、この子たちは二人ともびっくりするくらいおとなしく検査しやすかったです。

ところで純血種の猫ちゃん達にはそれぞれの種類によって心配になってくる病気がいくつか存在します。

エキゾチックやペルシャ系の猫ちゃんは多発性嚢胞腎と呼ばれる病気も心配になるものの一つです。

この病気は腎臓に嚢胞と呼ばれる水を蓄えた袋がたくさんできてしまう病気です。

この病気にかかりやすいかどうかは血液を検査材料にして遺伝子検査で調べることができます。

ある遺伝子に変異があるとこの病気を発症するリスクが高まることが分かっているのですが、検査はその遺伝子の変異の有無を調べます。

健診がてら一緒に検査してみたのですが幸い二人とも変異無しとの結果でした。

2024-05-22 07:00:00

FIP:猫伝染性腹膜炎の診断と治療

カテゴリ : 感染症・予防

 
ある日「2,3週間前から体調が悪い。お腹が出てきており昨日から食欲がない」との事で10歳の黒猫さんが連れてこられました。

診断について

画像(エコー検査のために毛を刈っています)ではお伝えしにくいのですが、一目でお腹が張っている様子が分かりエコー検査で腹水が確認されました。

※画面の上で波打って見えているのが腸、右下に一部見えているのが腎臓、途中に画面の左側から肝臓が見えてきます。その間で見えているのが腹水ですが健康な子ではこのように多量には認められません。



↑エコーの静止画です。楕円形に見えているのが腎臓でその前後(画面左側が前側です)で黒く見えている箇所が腹水です。

お腹に針を刺してみますと黄色い液体が吸引されました。



このような黄色い液体が吸引された場合はFIP(猫伝染性腹膜炎)が強く疑われます。

またFIPは多頭飼育の猫ちゃんで発症リスクが高まることが知られているのですがこの子も他6匹と同居していました。この事もFIPを強く疑がわせる根拠となりました。

少し専門的になりますがFIPは今回のように①胸やお腹の中にお水が溜まるタイプと②お水は溜まらずに腎臓など内臓にお肉のかたまりができるタイプと③眼の症状や神経の症状を伴うタイプに分けて考えます。

このタイプ分けは抗ウイルス薬の内服量を決める際に重要になって来ます。ただ最近は①と②は併発することもあるので分けて考えないこともあるようです。

FIPとの確定診断を得るために、エコー以外の検査も実施し以下の結果を得ました。

↓血液のTP、ALB


↓腹水のTP、ALB


↓AGP検査、猫コロナウイルス抗体検査、猫コロナウイルス遺伝子検査


詳しい解説は今回省略させていただきますが以上の結果からFIPと確定診断しました。

治療について

今回のケースでは前々日まで食べていたとのことでしたので内服薬の使用が可能と判断し当院で治療を引き受けさせていただきました。

食欲が完全に廃絶し何日間か経過しているような子の場合は抗ウイルス薬の注射を利用できる病院で治療を受けていただいた方が良いかと思います。

AGP検査や抗体検査、遺伝子検査の結果が出そろい確定診断を得るまでは2,3日かかります。

それまでの期間はFIPと仮診断しステロイドの内服薬を処方しました。FIPは全身性の炎症性疾患です。ステロイドには炎症を抑える作用が期待できるからです。

この黒猫さんはステロイド内服開始の翌日には食べ始めました。

確定診断ののち抗ウイルス薬の内服を開始しました。

内服開始およそ3週間後のエコー動画です、上の動画と同じ箇所ですが腹水がほとんど消失しています。



↑エコーの静止画です。腎臓の前後で見えていた黒い箇所が消失し腹水が減少したことが分かります。

現在、お腹の張りも無くなり元気・食欲も旺盛です。
2024-05-15 07:00:00

FIP:猫伝染性腹膜炎の治療費用について

カテゴリ : 感染症・予防


FIP(猫伝染性腹膜炎)は猫コロナウイルスによって引き起こされる感染症です。

以前はこれと言った特効薬がなく致死的な恐ろしい病気と考えられていたので
すが、数年前に抗ウイルス薬を使用した治療法が発表され回復の見込める病気
となってきました。

当院では抗ウイルス薬としてモルヌピラビルというお薬のジェネリック薬品を在庫しています。

抗ウイルス薬としては他にGS-441524やレムデシビルというお薬があり海外からの輸入になるのですがとても高価なお薬で当院のような個人病院では在庫しておくことが難しいです。

モルヌピラビルについては先発品の取り扱いが日本であるのですがやはり高額
なため在庫しておけません。

いずれの抗ウイルス薬も84日間投与が必要です。

当院ではモルヌピラビルのジェネリック薬品を現在のところ1日分600円で処方しております。(現時点では1ボトル7000円くらいで入手可能ですのでそこから考えますとかなり高い価格設定になっています。将来的にはもう少し抑えられればと考えています。)

FIPの診断には血液検査、レントゲン検査、エコー検査、胸水・腹水検査などを組み合わせ行うのですが確定をするまでに4~5万円くらいかかります。

ですので合計の費用は抗ウイルス薬以外の内服薬、治療効果判定のための追加検査費用なども含めて考えますと3か月間でおよそ15~20万円くらいになります。

「投薬により体調が回復してきていますので追加の検査を省略しましょうか」あるいは「一部の検査を省略しましょうか」ということでよろしければもう少し費用を節約することが可能です。12~15万円くらいの範囲に収まるかと思います。(できれば追加の検査は受けていただいたほうが良いのですが・・)

治療を希望される方はまずはお電話でご相談ください。

注意事項

①モルヌピラビルのジェネリック薬品を使用します。

②現在いくつかの理由でモルヌピラビルの使用については否定的な意見があり
ます。

③モルヌピラビルは内服薬になりますので食欲が完全になくなってしまった猫
ちゃんには使用が難しいです。

④モルヌピラビルの在庫は1~2匹分となり常に確保できているわけではあり
ません。

⑤今後モルヌピラビルの取り扱いを中止することもあります。

次週は実際にモルヌピラビルを使用した猫ちゃんについてお話をします。
2024-05-08 07:00:00

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猫のフィラリア症ムービー(リンク先に動画があります)
https://www.nekomamo.com/parasite/filaria/movie/

  1. 動物園勤務から病院へ
  2. プロフィール
  1. 週齢はどれくらい?
  2. まず行うこと
  1. ワクチン接種
  2. 寄生虫予防
  3. 避妊去勢
  4. デンタルケア
  5. 体重管理・食事管理
  6. 定期健診

詳しくはこちら
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