ある日、
「迎え入れたばかりの子が、おとといまでは元気で食欲もあったのに、
昨日から急に元気がなくなって、食べなくなりました。
“かっかっかっ”と喉を鳴らすようなしぐさをしています」
という相談を受けました。
実際に診てみると、
飼い主さんは気づいていませんでしたが、はっきりした腹式呼吸。
呼吸数も多く、明らかに苦しそうな様子でした。
レントゲンを撮ると、肺に白くもやがかかった箇所が。
肺炎を疑う所見です。

エイズ・白血病ウイルス検査は陰性でした。
ただ、CBCを見ると、
骨髄抑制を起こしているような印象もあり、
単純な細菌性肺炎だけで説明できるかどうか、
少し引っかかる所見でした。

まずは感染症を想定し、
抗生剤と酸素管理で治療を開始しました。
通常、細菌性肺炎であれば、
適切な抗生剤が合っていれば、
24時間以内に何らかの変化が出てきます。
呼吸の力感が少し抜ける、
表情がやわらぐ、
体位が少し楽そうになる。
そういった、ごく小さな変化です。
ところがこの子は、
24時間たっても、48時間たっても、
状態に大きな変化が見られませんでした。
呼吸のしんどさも、表情も、
ほぼ同じまま。
3日目になっても状況は変わらず、
この時点で、
「細菌感染以外の病態が関与している可能性」
が頭をよぎりました。
ただ、まだはっきりした口呼吸ではなく、
感染を完全に否定できる状況でもなかったため、
その日は抗生剤を継続する判断をしました。
今振り返ると、
ここは判断に迷ったところです。
そして4日目。
状態は明らかに悪化し、
レントゲンでも肺の白さがさらに増していました。

この時点で、
抗生剤のみで経過を見るのは難しいと判断し、
ステロイド治療に切り替えました。
結果論としては、
もう少し早く切り替える選択肢もあったかもしれません。
一方で、初期からステロイドを使用することには
感染を悪化させるリスクもあります。
そのバランスをどう取るかは、
正直、判断に迷いました。
ステロイド投与日深夜2時ごろ、
少し横になっていると、物音で目が覚めました。
実は当院には宿直室がないため、
夜間は受付などにマットを敷いて布団をかぶり、
ジャックと一緒に寝ています。
そのジャックが、にゃ、にゃと
何だがざわついていました。(※どんな猫ちゃんにもフレンドリーです。)
処置室の酸素室を見に行くと、
それまでずっと奥で動かなかったその子が、
自分で前に出てきていました。
フードを入れると食べ、
しばらくして見に行くと、また食べる。
凄く元気になったわけではありませんが、
それまでとは明らかに反応が違っていました。
抗生剤では変化が見られなかった状態が、
ステロイド開始後に動き始めました。
この経過から、
今回の主な問題は
「菌そのもの」よりも
「炎症反応」が主体だった可能性が高いと考えました。
これは、
菌が減った結果というより、
炎症が抑えられたことによる変化です。
抗生剤が適切に作用していれば、
多くの場合、24時間以内に何らかの反応が見られます。
それが見られない場合、
病態を一度整理し直す必要があります。
そして、
抗生剤で2〜3日変化がない場合、
治療方針の再検討を行う。
これは、今回の症例を通して
改めて感じた点です。
食欲回復後3日目改めてレントゲン撮影とCBCのチェックを行いました。

※肺の白さは改善傾向。ただし一部に含気不良が残存
完全に正常とは言えませんが、
呼吸状態や全体の様子を合わせて考えると、
回復過程に入っていると判断しました。

※WBCは上昇しているが、臨床状態からは回復期反応と判断
WBCの上昇は数値だけを見ると感染悪化にも見えますが、
食欲や呼吸の改善を踏まえると、回復に伴う反応と考えています。










