本年6月12日のブログで紹介しました糖尿病の猫ちゃんですが治療開始からおよそ一か月のフルクトサミン値を測定したところ以下の結果を得ました。
フルクトサミン値は簡単に言いますと過去2~3週間の血糖値の平均を表すような数値でその期間に糖尿病が上手にコントロール出来ていたかどうかを見る指標になります。
今回276μmol/Lという結果でこれはインスリンの投与が必要でなくなった可能性があります。
そこで一度インスリンの投与を中止するとともに再度リブレを装着し血糖値の変化を追いながら2週間後にもう一度フルクトサミンを測定してみました。
リブレで血糖値の変化を見てみますと治療を要するほどの高血糖になっている時間帯は無く、2週間後のフルクトサミン値は262μmol/Lでした。
以上の結果から糖尿病が寛解(完治ではありません)し現在のところインスリンの投与は必要なくなったと判断しました。
これは何故でしょうか?
猫ちゃんの糖尿病は人間の2型糖尿病に近いと言われています。2型糖尿病は生活習慣の乱れの結果(例えば肥満で)インスリンが出にくくなったりインスリンが効きにくくなったりすることで発症するのですが、自分の体からインスリンが全く出なくなったわけではありません。
インスリンは太るためのホルモン(体の細胞が糖分:エネルギーを取り込むためのホルモン)とも言われており、肥満の子は普通の体重の子に比べてインスリンが必要以上に分泌されている状態とも言えます。
そうするとやがてインスリンを分泌している膵臓が疲れてしまいインスリンの出が悪くなり血糖値がコントロールできなくなり糖尿病が引き起こされるのです。
猫ちゃんの場合は糖尿病の治療で外部からインスリンを投与してあげるとそれは膵臓を休憩させる時間をつくってあげることになります。その結果再度自身で十分なインスリンを出すことが可能になり糖尿病が寛解することがあるのです。
今回の猫ちゃんもインスリンの十分な分泌が再開されたものと考えられます。
前置きが随分長くなりましたが、このインスリンが分泌はされているという2型糖尿病の性質を利用した全く新しい糖尿病治療薬が9月1日より利用できるようになります。人では以前より普通に利用されています。
このお薬は血液中の余分な糖分をおしっこと一緒に捨てることで高血糖値状態が継続しないようにし膵臓を疲れさせないようにして自前のインスリンの分泌を程よく保っていきましょうという戦略のようです。
これは画期的なお薬になりそうです。
1日1回の内服薬となりますので今までのインスリン注射のように毎回猫ちゃんはチクっとされる必要がなくなり痛い思いをせずに済みオーナー様の心理的負担もかなり軽減されるのではないでしょうか。
また細胞への糖分:エネルギーの取り込みは自前のインスリンに頼りますので
インスリンの過剰投与によりおこる危険な低血糖の心配もないようです。
さらにインスリンの投与量はその子その子によって違うため適切な量が決まるまで時間がかかるのですがこのお薬は体重当たりで投与量が決まっているので余分な時間を省くことができます。
インスリン量決定の為にリブレなどを装着し血糖値の変化を追うようなことが基本必要ないという事になりそのための費用も節約できます。
現在インスリン投与中の猫ちゃんもこのお薬への切り替えが可能です。
このお薬は余分な糖分をおしっこに捨てる作用しかありませんので糖分の細胞への取り込みは自前のインスリンに頼らなければなりません。ですのでインスリンが全く出ていないいわゆる1型糖尿病のタイプ(ワンちゃに多い)の子には利用できません。
以上のお薬の作用についての説明は先日製薬メーカーに電話で問い合わせて聞いたものになります、9月にセミナーがありますのでメリット・デメリット合わせてさらに詳しいお話を聞いてこようと思います。