※緑の線は心電図です。
糖尿病で来院した猫ちゃんに著しい徐脈(心拍が遅くなること)が認められました。
その状況を確かめるため心臓のエコー検査を実施したところ、心臓の壁(筋肉)が分厚く、また左心房と呼ばれる場所が大きくなっていました。
上の動画はその時のものです。
下の2つの画像はその動画のある瞬間の静止画で心臓の壁(筋肉)の厚さと左心房のサイズを測っています。
少し専門的になりますが点線1では心室中隔と呼ばれる心臓の左と右を分ける壁(筋肉)の厚さを点線2では心臓の左側の壁の厚さをそれぞれ測っています
点線1は6.2mm 点線2は8.3mm とあり、ここが6.0㎜以上になってきたら心筋肥大があると考えます。
この場面では左心房と呼ばれるか場所のサイズを点線のところで測っています。
17.3㎜とありますが、17.0㎜を超えてきたら心不全をおこすリスクが高まると言われています。
ちなみにこのエコー動画の場面では(少し角度の違いはあるのですが)心臓が下の絵のように見えています。
※①心室中隔 ②左心室壁
また上の動画の右上にHR124とあります。これは心拍数が1分間に124回という事を示しています。
正常な猫ちゃんの心拍数は100~160と言われていますので一見正常なように思えますが、病院につれてこられた猫ちゃんや検査中の猫ちゃんは常にドキドキしていますので124は徐脈気味と考えます。
実際の聴診では80前後でした。
糖尿病はおしっこがたくさん出るため脱水をおこすのですが脱水が激しいと(詳しい説明は省きますが)1次的に心筋が肥大して見えることがあります。
今回も脱水による心筋の肥大が考えられました。
脱水改善のためには血管点滴を行えばよいのですが左心房と言う場所が大きくなっていますので慎重に点滴をしなければなりません。
これも詳し説明は省きますが「左心房の拡大」は「心不全をおこしていますよ」あるいは「慎重にしないと心不全をおこしますよ」というサインです。
この猫ちゃんの糖尿病の治療には血管点滴は必要不可欠です。
そこで点滴のスピードをものすごくゆっくりにし同時に循環不全を改善するお薬も持続点滴しました。
通常のスピードでそのまま点滴をすると心臓がパンクしてしまう可能性が高いからです。
ただ脱水の改善がはかどらなかったので途中から点滴のスピードを様子を見ながらあげていきました。
治療4日目のエコー動画です。
HR210とあり徐脈が改善しています、心臓の拍動のスピードが1地番上の動画と比べて速いですよね。
左心房サイズが12.3mm と正常に戻っています。
治療12日目のエコー動画です。(心電図にはつないでいません)
点線1が5.2㎜ 点線2が5.6㎜と心臓の壁の厚さが正常の6.0mm 以内に改善しています。
このことから初診時の心筋の肥大は一過性のものと考えられました。