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アムロジピン単独では不十分だった猫の高血圧症例 ― テルミサルタン併用で安定した一例

カテゴリ : 循環器

     ※入院翌朝の血圧で来院時直ぐのものではありません。

猫が、突然の嘔吐と元気消失を主訴に来院しました。

診察時に血圧を測定したところ、200mmHgを超えていました。

この猫には、もともと血圧を下げるお薬をだしていました。

入院とし、まずはこれまでと同じ内容(アムロジピン)で投薬を行い、経過を観察しました。

翌朝(2月3日8時)の血圧も202mmHg(最初の画像)で、大きな変化はありませんでした。

この時点で、今までの治療だけでは血圧が下がりきっていないと判断し、作用の仕組みが異なるテルミサルタンを追加しました。

アムロジピン2.5mg錠を1/4錠で1日2回、テルミサルタン20mg錠を1/4錠1日1回としました。


同日17時半の血圧は182mmHgでした。



翌日(2月4日朝)の血圧は185mmHgでした。

まだ十分な低下とは言えなかったため、アムロジピンを1/2錠1日2回に増量し、テルミサルタンは同量で継続しました。



同日16時前の血圧は156mmHgまで低下しました。



翌日(2月5日朝9時半)の血圧は150mmHgでした。

この時点では、アムロジピンの増量で血圧が安定しているのであれば、テルミサルタンは不要かもしれないと考え、一度中止しました。



同日夜の血圧は174mmHgに再上昇しました。



翌朝(2月6日9時前)の血圧も174mmHgでした。

この経過から、アムロジピン単独では血圧を維持できていない可能性が高いと判断し、テルミサルタンを再開しました。



同日夕方の血圧は146mmHgでした。

確認後退院としました。

この推移から、この猫ではアムロジピン単独では不十分で、テルミサルタンの併用が血圧の安定に大きく関与していると判断しました。

また今回詳しい説明は省略させていただきますが、初診時の検査で、胸水の貯留や左心房の拡張など、一般的には心臓の病気を示すことが多い所見が認められました。




そして血液検査では心臓に負担がかかっていることを示す指標であるproBNPの高値も確認されていました。



ただし今回の経過をみる限り、心臓そのものの病変というより、血圧が高い状態が続いたことによる影響が、これらの所見として現れていたと考えています。

血圧が安定するにつれて、嘔吐や元気消失といった初診時にみられた症状は改善し、退院時には認められなくなっていました。

あわせて、初診時に認められていた上記の画像所見についても、退院時には改善傾向が確認されました。




2026-02-11 06:00:00

──映画『Flow』を観て

カテゴリ : その他


お正月に、
Amazon Primeで何となく気になっていた
アニメーション映画を観ました。

映画『Flow』という作品です。

動物が出てくるアニメーションです。

正直、最初は「動物のアニメか」
くらいの軽い気持ちでした。

ところが、
観終わってからも妙に頭に残ってしまって、
結局、DVDまで買ってしまいました。

動物アニメというと、
どうしても
「友情」とか
「助け合い」とか
「分かり合う」
みたいな話になりがちですが、
この作品は少し違う印象を受けました。

ペットを飼っている人なら、
一度は思ったことがあると思います。

「この子とは気持ちが通じている」
「分かり合えている」
正直、
そう思いたいですよね。

私も、
飼い主さんがそう感じておられる気持ちは、
よく分かりますし、
それを否定するつもりもありません。

『Flow』に出てくる動物たちは、
一緒に行動し、助け合ってはいますが、
本当にお互いを理解しているかというと、
正直、そうは見えません。

それぞれがそれぞれのままで、
たまたま同じ船に乗り、
同じ状況を生きている。

でも、それで物語は進んでいきます。

日々動物を診ていると、
ときどき思うことがあります。

私たち人間は、
「分かり合えている」と思うことで、
自分が安心したいだけなのではないか、と。

動物の気持ち以上に、
こちらの気持ちを
強く重ねてしまっている場面も、
少なくないのかもしれません。

ただ、これは
「分かり合えていないからダメ」
と言っているわけではありません。

むしろ、
分かり合えていないかもしれないけれど、
それでも一緒にいる
という関係のほうが、
動物との関係としては
自然なのではないかと感じることがあります。

この感覚は、
終末期医療の場面でも、
よく頭をよぎります。

「この選択を、この子はどう思っているのか」
「苦しくないだろうか」
「分かってくれているだろうか」
はっきりした答えが出ることは、
正直ほとんどありません。

それでも、
飼い主さんは悩みながら、
決断をされます。

『Flow』の動物たちも、
言葉で分かり合うことはありません。

でも、
同じ時間を過ごし、
同じ状況の中にいます。

それを見ていて、
動物との関係は、
本当はそれで十分なのかもしれない、
そんなことを考えました。

「分かり合っている」と
言い切れなくてもいい。
一緒にいることを選び続ける。

そんな関係のほうが、
案外、良いのかな、
と思うことがあります。
2026-02-04 04:00:00

猫の咳、喘息だけではありません ― 駆虫治療に反応した一例 ―

カテゴリ : 呼吸器


昨年12月、飼い主様だけで来院され「猫が咳をしている」とのご相談を受けました。

スマフォの動画を拝見すると、首を前方に伸展させるような姿勢で
「コホッ、コホッ」と咳をしており、頻度は毎日ではなく、3日に1回程度とのことでした。

この時点では「喘息や気管支炎のように見えますね」とお話しし、実際の受診をお願いしました。

数日後に猫ちゃんが来院され、検査を実施しました。



レントゲン検査では、肺野の一部に小さな結節陰影を1つ認めました。



血液検査では、好酸球の上昇がみられました。

ここで少し疑問に感じたのは、レントゲン像が典型的な猫喘息や気管支炎で見られる、びまん性に広がる所見ではなかったこと、また咳は出るものの持続的ではなかったことです。

そこで、以前セミナーで聞いた「肺吸虫」という肺に寄生する虫の話を思い出しました。

好酸球は、喘息などのアレルギー様疾患だけでなく寄生虫感染でも上昇することがあり、この点も肺吸虫を疑った理由のひとつです。

もっとも、現在は完全室内飼育が一般的となり、肺吸虫に遭遇する機会はかなり少なくなっています。

外に出る猫がサワガニなどを捕食することで感染する寄生虫だからです。

この猫ちゃんは3歳半、保護・譲渡猫でした。

ここ2年近くは完全室内飼育であり、症状が出てきたのも最近でした。

一見すると辻褄が合わないように感じますが、肺吸虫による咳は感染から数年後に症状が出ることも珍しくありません。

肺吸虫の診断は、便中に寄生虫感染の証拠が出ることがあるため検便を行ったり、肺洗浄液を用いたPCR検査によって行われます。

ただし、検便は検出率が高い検査ではなく、また肺洗浄液のPCR検査は全身麻酔下で行う侵襲的な検査であるため、通常はいきなり選択する検査ではありません。(当院では実施できません。)

後日、便を持参していただき検便を行いましたが、結果は陰性でした。
しかし、検出率の低い検査であるため、これだけで完全に否定することはできません。

一方で、ここで安易に「喘息」「気管支炎」と診断してしまうと、それはこの子の生涯にわたって関わってくる問題になります。

そこで飼い主様と相談のうえ、まずは駆虫薬を1か月間隔で2回投与し、
その反応を見る方針としました。

2回目の投与後に再来院され、お話を伺うと、ほとんど咳をしなくなったとのことでした。



レントゲン検査では結節陰影に大きな変化はありませんでしたが、これは寄生虫が駆除され刺激はなくなったものの、炎症反応の名残として陰影が残っているものと考えました。

今回、肺吸虫感染が検査で証明されたわけではありません。

しかし、咳の出方、検査所見、そして駆虫薬投与後の明らかな症状改善という反応から、肺吸虫が何らかの形で関与していた可能性が高いと考えました。

念のため、さらに1か月後にもう一度、駆虫薬を投与することを提案しました。
2026-01-28 05:00:00

抗生剤が効かなかった肺炎で、考え直したこと

カテゴリ : 呼吸器


ある日、
「迎え入れたばかりの子が、おとといまでは元気で食欲もあったのに、
昨日から急に元気がなくなって、食べなくなりました。
“かっかっかっ”と喉を鳴らすようなしぐさをしています」
という相談を受けました。

実際に診てみると、
飼い主さんは気づいていませんでしたが、はっきりした腹式呼吸。

呼吸数も多く、明らかに苦しそうな様子でした。

レントゲンを撮ると、肺に白くもやがかかった箇所が。

肺炎を疑う所見です。



エイズ・白血病ウイルス検査は陰性でした。

ただ、CBCを見ると、
骨髄抑制を起こしているような印象もあり、
単純な細菌性肺炎だけで説明できるかどうか、
少し引っかかる所見でした。



まずは感染症を想定し、
抗生剤と酸素管理で治療を開始しました。

通常、細菌性肺炎であれば、
適切な抗生剤が合っていれば、
24時間以内に何らかの変化が出てきます。

呼吸の力感が少し抜ける、
表情がやわらぐ、
体位が少し楽そうになる。
そういった、ごく小さな変化です。

ところがこの子は、
24時間たっても、48時間たっても、
状態に大きな変化が見られませんでした。

呼吸のしんどさも、表情も、
ほぼ同じまま。

3日目になっても状況は変わらず、
この時点で、
「細菌感染以外の病態が関与している可能性」
が頭をよぎりました。

ただ、まだはっきりした口呼吸ではなく、
感染を完全に否定できる状況でもなかったため、
その日は抗生剤を継続する判断をしました。

今振り返ると、
ここは判断に迷ったところです。

そして4日目。
状態は明らかに悪化し、
レントゲンでも肺の白さがさらに増していました。



この時点で、
抗生剤のみで経過を見るのは難しいと判断し、
ステロイド治療に切り替えました。

結果論としては、
もう少し早く切り替える選択肢もあったかもしれません。

一方で、初期からステロイドを使用することには
感染を悪化させるリスクもあります。

そのバランスをどう取るかは、
正直、判断に迷いました。

ステロイド投与日深夜2時ごろ、
少し横になっていると、物音で目が覚めました。

実は当院には宿直室がないため、
夜間は受付などにマットを敷いて布団をかぶり、
ジャックと一緒に寝ています。

そのジャックが、にゃ、にゃと
何だがざわついていました。(※どんな猫ちゃんにもフレンドリーです。)

処置室の酸素室を見に行くと、
それまでずっと奥で動かなかったその子が、
自分で前に出てきていました。

フードを入れると食べ、
しばらくして見に行くと、また食べる。

凄く元気になったわけではありませんが、
それまでとは明らかに反応が違っていました。

抗生剤では変化が見られなかった状態が、
ステロイド開始後に動き始めました。

この経過から、
今回の主な問題は
「菌そのもの」よりも
「炎症反応」が主体だった可能性が高いと考えました。

これは、
菌が減った結果というより、
炎症が抑えられたことによる変化です。

抗生剤が適切に作用していれば、
多くの場合、24時間以内に何らかの反応が見られます。

それが見られない場合、
病態を一度整理し直す必要があります。

そして、
抗生剤で2〜3日変化がない場合、
治療方針の再検討を行う。

これは、今回の症例を通して
改めて感じた点です。

食欲回復後3日目改めてレントゲン撮影とCBCのチェックを行いました。


※肺の白さは改善傾向。ただし一部に含気不良が残存

完全に正常とは言えませんが、
呼吸状態や全体の様子を合わせて考えると、
回復過程に入っていると判断しました。


※WBCは上昇しているが、臨床状態からは回復期反応と判断

WBCの上昇は数値だけを見ると感染悪化にも見えますが、
食欲や呼吸の改善を踏まえると、回復に伴う反応と考えています。
2026-01-21 06:00:00

AIM注射薬のニュースについて ― 猫の腎臓病に新しい治療の選択肢が見えてきました ―

カテゴリ : 腎・泌尿器



AIM注射薬のニュースについて


2026年1月7日、猫の腎臓病に関する新薬(AIM注射薬)が、承認申請に向けて動いているという報道がありました。

この話題は突然出てきたものではなく、数年前から研究が進み、獣医療の世界では注目されてきた流れの延長線上にあります。

私自身も約4年前に、このテーマをブログで取り上げています。

今回のニュースを見て、「研究で終わらず、医薬品として形にしようとする段階に入ってきたな」というのが正直な印象です。


そもそもAIMとは何か


AIMとは、体の中で老廃物の処理や掃除に関わるタンパク質です。

本来は、不要になったものを片づける役割を持っています。

体の中では、こうした“掃除役”がきちんと働くことで、臓器にゴミが溜まりにくい状態が保たれます。


なぜ猫ではそれが問題になるのか


猫では、このAIMが体の中に作られているにもかかわらず、自由に動けない形で縛られやすい構造になっていることが分かってきています。

AIMはIgMという大きな分子と結びついたままの形になりやすく、その状態では、腎臓の中の老廃物処理の現場まで届きにくい。

つまり、AIMが無いわけではないけれど、働きたい場所に行けない状態に置かれやすい、というのが猫の特徴です。

その結果、老廃物がうまく片づかず、腎臓に負担が蓄積しやすくなる。

「なぜ猫はこんなに腎臓病が多いのか」という長年の疑問に対して、
AIMが“働けない形で縛られている”という構造が、一つの説明として注目されています。


AIM注射薬は何を狙っているのか


このAIMの働きを直接補おうという発想から研究されているのが、AIM注射薬です。

猫の体内にあるAIMは、構造的に縛られて動きにくい形になりやすいため、その影響を受けていない形のAIMを、外から直接投与するという考え方になります。

AIMタンパク質そのものを体内に入れることで、老廃物処理の仕組みに直接介入しようという治療の発想です。

今回の報道は、このAIM注射薬が承認申請に向けて動いているという内容でした。

研究段階の話ではなく、実際の医薬品として形にしようとする段階に入ってきた、という点がポイントです。





一方で、市販フードにAIM30があります


一方で、市販のフードとして「AIM30」という商品があるのもご存じの方が多いと思います。

同じAIMという言葉が使われているため、混同しやすい部分でもあります。

「まず大前提として、AIM30はAIM入りではありません」

AIM30は名前にAIMが入っていますが、AIMというタンパク質そのものを含んでいるフードではありません。

AIM30に入っているのは、メーカーが「A-30」と呼ぶ特定のアミノ酸組成です。

ここは、はっきり整理しておく必要があります。


AIM注射薬とAIM30の違い


簡単に整理するとこうなります。

AIM注射薬は、縛られて動けない構造の影響を受けていない形のAIMを、外から直接投与する医薬品です。

AIM30は、AIMを直接入れるものではなく、体の状態に対して働きかける総合栄養食です。

同じAIMという言葉が使われていますが、立っている場所も、役割も違います。


AIM30は何をしているフードなのか


ここが一番つまずきやすいところです。

AIM30は、AIMを増やすフードでも、AIMを解放するフードでも、AIMを動かすフードでもありません。

AIMに直接何かをするのではなく、体のコンディション側に対して働きかける設計です。

もう少し噛み砕くと、

体の中がゴチャゴチャしている状態

軽い炎症寄りの状態

老廃物が溜まりやすい流れ

こうした「荒れた環境」を、少し落ち着く方向に寄せようとする発想です。

その結果として、AIMが足を引っ張られにくくなり、邪魔されにくい状態になる。

AIMを操作するフードではなく、体の土台を整えるフードと考えるのが一番近いと思います。


フードと薬の違いは時間軸


この話は、どちらが上という話ではありません。

考え方の軸が違います。

AIM30は、予防やメンテナンス寄りの発想です。

AIM注射薬は、すでに病気として進行している状態に介入する治療寄りの発想です。

役割が違うだけです。


注意点として


AIM30は総合栄養食であり、従来の腎臓療法食とは目的が異なります。

すでに腎臓病が進行している猫では、自己判断で療法食から切り替えることはおすすめできません。

必ず獣医師に相談してください。


A-30を薬にすればいいのでは、という疑問について


この疑問は自然だと思います。

ただ、A-30は体の環境に寄せる設計であり、構造そのものに介入するものではありません。

そのため、病気が進行した段階では、構造的に限界があります。
設計思想そのものが、治療薬とは違います。

だからこそ、現在もっとも注目されているのがAIMタンパク質製剤、つまり注射薬です。


ねこ内科としての考え


AIM注射薬は、猫の腎臓病に対して、
これまでとは違う角度からの“治療の選択肢がひとつ増えたと捉えています。

だからといって、腎臓が元に戻るとか、壊れた細胞が復活するといった話ではありません。

あくまで、猫の腎臓病という病態に対して、
これまでとは違う仕組みから介入しようとする治療が出てきた、という位置づけです。

新しい選択肢が出てきたからといって、
これまでの管理が無意味になるわけではありません。

むしろ、早期発見と日常管理の重要性は変わりません。


最後に


AIM30は、日常の中で腎臓の未来を考える入り口になります。

AIM注射薬は、治療の選択肢のひとつとして加わってきた存在です。

役割が違うだけで、どちらも位置づけは違います。

過度に期待する必要もありませんし、
かといって無関係な話でもありません。

ねこ内科としては、
これまでの管理を大切にしながら、
新しい動きは冷静に受け止めていく、というスタンスで考えています。

また進展があれば、当院の視点で分かりやすくお伝えします。
2026-01-14 06:00:00

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