
慢性腎臓病の猫ちゃんを診ている中で、初めての血圧測定で著しい高血圧症が見つかった子がいました。
猫ちゃんの正常な血圧は、一般的に140mmHg以下とされており、160mmHgを超えると治療の検討が必要になってきます。
この子は初回測定で200mmHg超え。何度測ってもほとんど変わらず、びっくりしました。
もちろん、猫ちゃんは緊張や動きで実際より高めに出やすいので、そこから10〜20くらい差し引いて考えることも多いです。
それでも180mmHg前後と見積もられ、「高いことは間違いない」と判断しました。
数日かけて慎重に判断
1日の測定だけで「高血圧症」と決めるのは避けたいので、何日かに分けて繰り返し測定しました。
その結果、毎回やはり高値が続いていたため、この子には高血圧症と診断し、治療を開始することにしました。
最初に使ったのはテルミサルタン
猫ちゃんの高血圧治療薬には、
- アムロジピン(Ca²⁺拮抗薬)
- テルミサルタン(ARB系)
の2種類がよく使われます(場合により併用もあり)。
この子のオーナー様が「液状のお薬がいい」とご希望されたため、テルミサルタンを選びました。
※アムロジピンは日本では錠剤しか入手できません。
一時的な改善と再上昇
テルミサルタンを開始してから1週間ほどで、血圧は170〜180mmHg台に。
数値としてはまだ高めですが、以前の200台からは改善が見られたので、そのまま継続。
しばらくは160台で安定していましたが、徐々に再び上昇してきました。
アムロジピンへの切り替えを決断
この子は比較的おとなしく血圧測定に協力的なので、数値は信頼できるものでした。
再び180〜190台が続いたため、オーナー様にアムロジピンへの切り替えを提案しました。
実は、アムロジピンは猫の高血圧における第一選択薬ともされており、特に180mmHgを超えるような場合に有効性が高いとされています。

薬剤名 |
主な作用 | 血圧への影響 |
テルミサルタン | アンギオテンシンⅡをブロックして、腎臓の血管を先に拡張 → 全身の血圧をゆるやかに低下させる | 間接的・ゆるやか |
アムロジピン | カルシウムが血管の筋肉に入るのをブロック → 血管の収縮を防いで広げる | 直接的・強力 |
※VASDILATION(血管拡張)
血圧が140台まで改善
アムロジピンへ切り替えてしばらく経ったころ、再度測定すると血圧が140台に!
ようやく正常範囲に近づきつつあることが確認できました。
まとめ
猫ちゃんの血圧は、一度測っただけでは判断できないことが多く、繰り返し測定しながら慎重に診ていく必要があります。
また、お薬にもそれぞれ得意な場面・働き方があり、その子に合わせた選択が大切になります。
「うちの子も血圧測った方がいいのかな?」と気になる方は、ぜひ一度ご相談くださいね。