「最近、うちの猫が3日に1回くらいしかうんちをしないんです。出てもコロッとしてて、量も少なくて…。お腹が張っている気がして」と、腎臓病の猫ちゃんの飼い主さまからご相談をいただきました。
猫の便秘といえば「水分不足」がよくある原因のひとつ。
特に腎臓病の猫ちゃんは脱水しやすく、それが便秘につながることがあります。
でも今回の猫ちゃん、脱水はそれほどひどくありません。
なのに、お腹に明らかな張りがある…これはただの便秘じゃないかもしれない、そんな違和感がありました。
お腹に「しこり」?検査で見えてきたもの
実際に触診してみると、お腹の中に大きなしこりのようなものがありました。
レントゲン検査を行ったところ、腎臓がはっきりと大きくなっていたのです。

半年前のレントゲン

「あれ? もしかして…」と、思い当たる節がありました。
というのも、半年ほど前のエコー検査で腎臓に気になる所見があり、「腎リンパ腫(じんリンパしゅ)」の可能性をお伝えしていたのです。
ただ、そのとき飼い主さまは
「高齢だし、たとえリンパ腫とわかっても積極的な治療はしないつもりです」
とのご判断で、これ以上の精密検査は行わず、現状維持の治療を続けてきました。
腎臓を包む膜の中に、水がたまっていた
今回、再度エコー検査を行ったところ――
腎臓そのものは、構造自体は比較的保たれており、その周囲に「液体を含んだ膜」が取り囲んでいました。
その液体を針で抜いて調べてみると、無色透明でさらさらした「漏出液(ろうしゅつえき)」というタイプの液体でした。

これは、炎症や腫瘍などの強い異常が原因でない可能性を示してくれています(もちろん、絶対とは言い切れませんが)。
こうした状態を「腎被膜下嚢胞(じんひまくかのうほう)」と呼びます。
つまり、腎臓とそれを包む膜の間に水がたまる病気です。
もしかすると、あのとき気になっていた所見は、この嚢胞の初期だったのかもしれません。
腸を押して、便秘に?
腎臓が大きくなると、すぐそばを通る腸に物理的な圧迫がかかります。
そのせいで腸の動きが悪くなり、便秘のような症状が出ていた――今回の便の回数減少は、そんなふうに考えられました。
今後はどうする?できるだけ静かな生活を
飼い主さまのお考えは「できるだけ静かに、無理のない生活を」とのこと。
そこで今回は、便をやわらかくして出しやすくするための水薬だけを処方しました。
その後も排便の回数自体は3日に1回のままですが、
「便がやわらかくなって、量も増えてきました」とのお声をいただいています。