
※IGF-1測定結果
7月23日のブログでご紹介した猫ちゃんのお話の続きです。
前回のブログでは、こんなお話をしました。
糖尿病が落ち着いていた猫ちゃんが、再びたくさん水を飲むようになり、体重も減ってきたので検査をしたところ、フルクトサミンの値が上がっていました。
そこで「インスリン抵抗性」が疑われ、原因としては膵炎による嘔吐や痛みのストレスがインスリンの働きを妨げているのではないかと考えました。
そのため膵炎への対応を行い、経過を見ていくことになった、という内容でした。
今回はその後についてです。
膵炎治療から3週間後の変化
膵炎への治療を始めてから約3週間。
飼い主様からは「嘔吐は少し落ち着いたように思うが、水を飲む量はまだ多く、体重も痩せてきている」とのお話がありました。
検査では、フルクトサミンはやや下がっていました。ただし糖尿病治療を始めたばかりの頃に比べると、水を飲む量や体重の変化、フルクトサミンの改善度は十分とは言えません。
つまり、まだ血糖コントロールは安定していない状況です。
IGF-1測定と末端肥大症の可能性
ここで、別の原因によるインスリン抵抗性を探るため、血液中の IGF-1(インスリン様成長因子) を測定してみました。
これは成長ホルモンの分泌状態を反映するもので、末端肥大症という病気の診断に使われます。
この数値が高いときは末端肥大症の可能性があると考えます。
末端肥大症とは?
脳の奥にある下垂体という箇所が腫れて成長ホルモンが過剰に出る病気で、体のいろいろな部分がゆっくり大きくなっていきます。
顔や手足といった“末端”に症状が現れやすいため、この名前がついています。
過剰に分泌された成長ホルモンが内臓や心臓にも負担をかけ、さらにインスリンの邪魔をし糖尿病を治りにくくするのも特徴です。
実際にIGF-1を測定したところ、基準値が 138~673 のところ 1900 と、非常に高い数値が出ました。(※最初の画像)
つまり、この猫ちゃんがインスリンの効果を得にくいのは、末端肥大症による可能性が高いと考えられました。
ちなみにこの猫ちゃんは顔や手足の末端には見た目の著しい変化はありませんでした。
必ずしも見た目の変化が起こると言うわけではありません。
今後の治療選択肢
インスリンの効果を高めるには、次のような選択肢があります。
①放射線療法で下垂体を小さくする
根治療法となり、インスリン治療が不要になる可能性もあります。
費用や施設の問題はありますが、北摂地域には施術可能な施設があります。
②成長ホルモンの分泌を抑えるカベルゴリンというお薬を試してみる。
末端肥大症では高用量が必要になることが多いため、まだ増量の余地があり
ます。
④インスリンの種類を変える。
などです。
飼い主様との話し合いで、まずはインスリンの種類を変更し経過を追っていくこととなりました。
まとめと次回予告
今回の経過で、この猫ちゃんの糖尿病の難しさの背景に「末端肥大症」が強く関与している可能性がわかりました。
またこの猫ちゃんは初診時に心不全様の症状も出ていたのですが、これも末端肥大症と関係しているかもしれません。
その点については次回詳しくお話しますね。
猫の糖尿病やインスリン抵抗性について不安なことがあれば、どうぞご相談くださいね。