作画:当院スタッフ
先週の続きです。
今回はフィラリア症の診断方法についてお話しします。
その前にフィラリアの一生は
感染動物の心臓や肺動脈と呼ばれる血管内でミクロフィラリア(フィラリアの赤ちゃん)が誕生
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ミクロフィラリアが感染動物の血と一緒に吸血され蚊の体内へ、第3期幼虫まで脱皮したところで蚊の口元まで移動
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蚊がまた別の動物を吸血しその動物へ第3期幼虫が感染
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皮下や筋肉内で過ごし第4期幼虫に、その後第5期幼虫になったところで血管内へ移動し心臓や肺動脈へ到達、成虫になる
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オスとメスが出会いミクロフィラリアが誕生
という感じです。
それではフィラリアの診断方法について
※陰性結果の画像しか用意できませんでした。
①血液中にミクロフィラリアが泳いでいないかを顕微鏡で見てみる。
②フィラリアの成虫から出ているある成分(抗原といいます)を検査キットで検出。(ワンちゃん用ですが一応猫ちゃんにも利用できます。)
③フィラリアの幼虫を排除するために感染動物が作り出した武器(抗体といいます)が血液中に出ていないかを検査センターさんに血液を送り調べてもらう。
抗体検査は猫ちゃんのみの検査でいっしょに抗原も調べてくれます。
④胸部レントゲン撮影をおこない肺動脈と呼ばれる血管が太くなっていないか
を見てみる。フィラリアが感染していると肺動脈が肺静脈の2倍くらいの太さになっていることがあります。
⑤心エコー検査をおこない心臓や肺動脈にフィラリアが住み着いていないかを
見てみる。
以上の5つが考えられます。
ワンちゃんでは②の抗原検査キットを使用した方法がゴールデンスタンダードとして存在するのですが猫ちゃんでは以下の理由でどれも決定打にかけます。
①について、ワンちゃんではオス、メスが同時に心臓や肺動脈で成虫になりそこで出会いミクロフィラリアが誕生という経過は普通なのですが、猫ちゃんの体内ではフィラリアの幼虫が性成熟に達するまで成長することが難しく、成長してもオスだけメスだけということが多くミクロフィラリアが誕生しづらい
②について、この検査キットは主にメスのフィラリアが出している成分を検出するもので猫ちゃんではオスのフィラリアのみが寄生していることもありその時は検出できない。
③について、この検査は第四期幼虫までの幼虫に対して作られた抗体を検出するものでそれ以降の幼虫や成虫は検出できない。
④について、肺動脈が太いからと言ってフィラリア症とは限らない。フィラリア症で必ず太くなるわけではない。
⑤について、心臓や肺動脈に寄生している成虫のみ検出可能で幼虫は検出できない。フィラリア成虫の確認がエコー検査技術者の技量に左右される。私自身もワンちゃんではフィラリアが寄生している心臓や肺動脈は過去に何度も見たことはあるのですが猫ちゃんではありません。
実際に猫のフィラリア症を疑った場合の検査としては③、④、⑤などを組み合わせて行っていくことになります。
次週に続きます。