
当院では全ての年齢層のワンちゃんや猫ちゃんに対して年1~2回の健康診断をお勧めしています。
健康診断は問診、身体検査、血液検査、尿検査、レントゲン検査、エコー検査などを状況に応じ組み合わせて行っています。
それらの結果により専門医を紹介させていただく事もあります。
上の画像はある猫ちゃんの血液検査の結果の一部ですが、最近猫ちゃんのオーナー様にはオプションとしてNT-proBNPという項目の検査も提案しています。
NT-proBNPは心臓病の検出に役立ちます。
ワンちゃんでは心臓病が始まるとたいてい心臓に雑音が生じますのでそれを聴診器でとらえることで心臓病を検出することが可能です。
またある程度心臓病が進行している状態ですと心臓の形に変化が生じていますのでそれをレントゲン検査でとらえることも比較的容易です。
が猫ちゃんの心臓病は心臓がかなり悪い状態になっていてもワンちゃんのように心臓に雑音が生じていなかったり、レントゲン検査でも正常な心臓となんら変わりない形をしている事も多いです。
猫ちゃんの心臓病を確かめる為にはエコー検査で心臓内部の状況、血液の流れを直接見ることが1番なのですが、その前段階の検査としてNT-proBNP検査を実施しています。
猫ちゃんの心臓病では心臓の壁(筋肉)に問題が生じることで発症する心筋症が多く見られます。
心筋症があると心臓の壁に負担がかかります。
血液中のNT-proBNPは心臓の壁に負担がかかると高くなってきます。
この検査結果の猫ちゃんは心雑音は無いのですが、NT-proBNPの値が1431.8pmol/Lと基準値の100pmol/Lを大幅に上回っており心筋症の存在が疑われました。
そこでエコー検査により心臓の状態を見てみました。
下の画像はエコー動画のある瞬間の静止画です。
点線1は心臓の右側と左側を分ける壁(筋肉)の、点線2は心臓の左側の壁の幅をそれぞれ測定しています。 点線1は7.5㎜、点線2は7.9㎜となっています。これらの壁の幅が6㎜を超えてきたら肥大型心筋症とよばれるタイプの心臓病を疑います。
今回聴診による心音は正常だったのでNT-proBNP値の数値が高いことがエコー検査をオーナー様に勧める説得材料となり、それが肥大型心筋症を診断するきっかけとなりました。
エコー検査は猫ちゃんにとっては多少のストレスを伴いますが痛みはほぼありませんので健康診断時に心エコー検査を組む合わせることも考えてみてください。
それでもエコー検査に抵抗のある方は、まず血液検査時にNT-proBNPを検査項目に加えて見られてはどうでしょうか?
※NT-proBNPは万能の検査ではなく、この値が正常にもかかわらず心筋症
になっている猫ちゃんもいます。
次週に続きます