
うちの猫、もう年ですけどワクチンって本当に必要ですか?
そんなご相談をよく受けます。
そんな時にご提案しているのが、
ワクチン抗体価検査という方法です。
ワクチンの“備え”が残っているかを調べる検査
抗体というのは、猫ちゃんがワクチン接種によって手に入れた
“病気に対する備え
”のようなものです。
この抗体がまだ十分に体に残っているかどうかを確認できるのが「抗体価検査」なんですね。
備えがしっかり残っていれば、「今回はワクチンの接種は見送りましょう」と判断することもできます。
検査の前に知っておきたい“免疫”の3つの仕組み
少しだけ難しい話になりますが、ワクチンと関わる免疫の仕組みをざっくり
3つに分けてご紹介しておきますね。
① 液性免疫(えきせいめんえき)血液やリンパ液の中に溶け込んだ抗体(主に
IgG)が病原体をやっつける仕組み。
→ ワクチンで得られる代表的な免疫です。
② 細胞性免疫(さいぼうせいめんえき)
T細胞と呼ばれる細胞が、病原体そのものを記憶し、再び出会ったときに直接戦ってくれます。
③ 局所免疫(きょくしょめんえき)鼻や目、口、腸などの粘膜表面で働く免疫。
IgAという抗体が関わります。
→ ワクチンでは増やしにくく、過去に自然に病原体に触れた経験によって備わることが多いです。
抗体価検査でわかること
「
3種混合ワクチンの抗体価検査」では、以下のウイルスに対する
IgG抗体の量がわかります。
- 猫パルボウイルス(FPV)
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- 猫カリシウイルス(FCV)
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- 猫ヘルペスウイルス(FHV)
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ですが、ここで一番注目するのは
猫パルボウイルスの抗体価です。
なぜ猫パルボだけ注目するの?
実は、猫カリシや猫ヘルペスに対しては、液性免疫だけでは十分に防御できません。
これらのウイルスに対しては、
細胞性免疫や
局所免疫の働きがとても重要とされていて、
抗体価(
IgG)が低くても、体の中ではしっかり備えができていることが多いんです。
そのため、抗体価の高低だけで「安心・安心じゃない」とは判断しづらいウイルスなんですね。
では、ワクチンを打つべきか?
よくあるご相談への答えはこのようになります
- 猫パルボの抗体価が高ければ → 接種を見送る選択もあり
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- 猫パルボの抗体価が低ければ → ワクチン接種をおすすめします
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- カリシやヘルペスが低いだけなら → 生活環境や既往歴をふまえて判断します
まとめ
高齢の猫ちゃんにワクチンが必要かどうか
――
それを考えるうえで、抗体価検査はとても有効な手段のひとつです。
猫ちゃんの体に残る
“備え
”をきちんと確認したうえで、
必要なタイミングだけワクチンを接種してあげる。
そんな選択肢があることを、ぜひ覚えておいてくださいね。
気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。