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原因不明の脱毛・・ アトピー?膀胱炎?

カテゴリ : 皮膚病


昨年10月30日のブログで糖尿病の猫ちゃんで心因性の外傷性脱毛が見られたとのお話をしました。

心因性とは心の問題に起因するという事、外傷性脱毛とは過度に自分の体を舐めることによってまるで自分を傷つけるようにおこる脱毛の事です。

今回お話する猫ちゃんもそのブログの糖尿病の猫ちゃんと同じような箇所で毛が薄くなっていました。

「1か月前から毛が抜けてきた」とのご相談でした。

画像では分かりにくいのですが左右わき腹と太ももの外側の毛が薄くなっており見た感じは外傷性脱毛が疑われました。

分かりやすく範囲を青いラインで囲ってみます。


それで真っ先に「ストレスに起因する心因性の外傷性脱毛かなぁ」と思ったのですが「いやいや待てよ最近目を通した雑誌(Veterinary Board 59号)で心因性の外傷性脱毛は過剰に診断されているとの研究発表を見たぞ」と思い直し問診を始めました。

研究発表をまとめると過去に心因性脱毛症と診断された猫21頭中12頭(57%)で食物アレルギーを認め、心因性脱毛症だけを認めた猫は2頭のみだった。また3頭(14%)には心因性脱毛症に痒みが伴っていた(※心因性脱毛は痒くありません)との内容でした。

お話を聞いてみますと「ストレスとなるような環境の変化も考えられずフードもずっとおなじものを食べている」との事で「ん-心因性でも食物アレルギーでもないのかぁ、んーアトピー?」となりました。

ちなみに外部寄生虫やバイキン、カビの問題はなさそうでした。

で一番頭を悩ませのは外傷性脱毛の時にオーナーの口からよく出てくる「ずっと体をなめている」というワードが出てこなかった事です。

原因が心因性にしろ食物アレルギーやアトピーによる痒みにしろ外傷性脱毛の時にはこのワードがよく出てくるのです。

それでも「それ程ひどいとは思いませんがなめているかと聞かれればなめている」との事でしたので少しは痒いのかなと考え「痒みをコントロールしてみましょう」と提案し痒み止めとしてある抗アレルギー薬を処方しました。


投薬2週間目脱毛がやや改善してきました。



そこからさらに2週間後



そこからさらに1か月後(治療開始2か月後) 分かりづらいと思いますが毛の長さは正常な場所と比べまだ少し短いのですが脱毛はほぼ改善しました。


オーナー様のお話から推察すると内服開始しばらくしてから体をなめている機会が少なくなったようで現在は通常の毛づくろい程度のなめかただと思われます。

お薬を内服していなくても脱毛は治っていたのかもしれませんが環境の改善やフードの変更は行わずに抗アレルギー薬(痒みをおさえる)を内服させてから症状の改善がみられたので今回の脱毛は猫アトピー性皮膚症候群(一般的に痒みを伴います)の症状だったのかなと考えていたところ・・・・

しばらくして「2日前から血尿です」と再度病院にやってこられました。

膀胱炎などを疑いエコー検査をしてみますと膀胱粘膜の一部に盛り上がっている箇所が認められました。



分かりやすく図示してみます。



青いラインの箇所が膀胱粘膜が盛り上がったように見えた箇所ですがこれですと炎症ではなくて腫瘍の可能性も考えなければなりません。

オーナー様との話し合い先ずは膀胱炎を疑いお薬の内服で反応を見ることにしました。

1週間後、血尿も膀胱粘膜が盛り上がって見えた箇所も無くなっていました。



外傷性脱毛についての教科書を読んでいますと「膀胱炎などお腹の異変を気にしてなめていることもある」との記載があります。

私自身そういう猫ちゃんに出会った経験がなく今までは「そんな事あるのかなぁ」と思っていたのですが今回のケースがそうだったのかもしれません。

※今回内服薬で膀胱粘膜の盛り上がりが消失しましたので炎症と考えましたが腫瘍性の可能性も残っていますので引き続き膀胱の経過は見ていかなければなりません。
2025-01-29 07:00:00

食物アレルギー②

カテゴリ : 皮膚病
前回(1月15日)の続きです。

内服薬での治療に行き詰ったところでカルテを見直していてオーナー様からこのようなお話があったことを思い出しました。

「糖尿病になる前はこのような皮膚病を発症したことはなかった。糖尿病発症後グレインフリー(主なタンパク源:マグロ、カツオ)を与えたことがあるのですがそのフードが怪しいように思う。前の病院で糖尿病食として勧められたロイヤルカナン:糖コントロールドライも一緒に与えていました。」

上記のお話から食物アレルギーの関与が疑われましたので治療の方向性を
猫アトピー性皮膚症候群(FASS)から猫食物アレルギー(FAD)に切り替えてみることにしました。

この時点で糖コントロールドライの他にもいくつかのフードを当院でも紹介しており

ビルバック
体重&糖質制限ドライ(主なタンパク源:豚および家禽)

スペシフィック

FRWウェット(豚肉、魚類)
FRDドライ(トウモロコシ蛋白)

ピュリナ
OMドライ(コーングルテン、小麦グルテン、脱脂大豆、家禽ミール)

などが利用されていました。

そこでこれらのフードを一切やめアレルギー食(主なタンパク源 コーンスターチ 加水分解フェザーミール)のみを与えて頂くことにしました。加水分解フェザーミールとは特殊な製法でフェザー(羽毛)から作られたタンパク源で理論上アレルギーを起こさないようになっています。ただ今回詳しい説明は省きますが4型アレルギーというタイプのアレルギーには効果がありません。

それから2週間後アレルギー食への切り替えは済んだが症状は悪化していました。(画像を残し忘れました)

この事実を見てまた「やはりFASSも関与しているのかなぁ」との考えが頭をめぐり投薬方法をご指導したうえで抗アレルギー薬(錠剤)の再開をお願いしました。

1週間後やはり内服は難しくアレルギー食も全く食べなくなり体重がさらに300gほど落ちていました。

これでは食べないことで起こる別の問題(詳しい説明は省きますが脂肪肝など)が心配となってきましたので内服はもちろんアレルギー食も止めることにしました。

「糖尿病前はこのような皮膚病を発症したことはない。様々な市販フードを利用していた。」との事でしたので市販フードを色々試して頂きとりあえず猫ちゃんに食べてもらうことを優先しました。

驚くことに市販フードへ変更後わずか2日で口の症状が和らぎました。

下あごの腫れが無くなりました。分かりづらいですが赤みは少し残っています。


潰瘍の範囲が小さくなりました。前回のブログと比べてみてください。


効果のあった市販フードはタンパク源がカツオのもので症状の緩和を見た後にチキンがタンパク源のものを与えたところ痒みが出たそうです。

オーナー様の最初のおはなしから「グレンフリーのフード(主なタンパク源がマグロ、カツオ)が怪しい。お魚系タンパクがアレルギーの原因では」と考えていたのですが「チキンがタンパク源のフードのものを与えたら痒みが出た」とのお話からアレルギーを引き起こしていたのは糖尿病に良かれと思って一緒に与えていた糖コントロールの方であった可能性が高まりました。

糖コントロールの主なタンパク源は鶏・七面鳥・ダックだからです。

その後色々試されて豚肉やエビがタンパク源のフードも痒みが出たようです。

糖尿病療法食の多くがチキンや豚肉がタンパク源となっており痒みを誘発するなか唯一トウモロコシ蛋白がタンパク源のフード(FRD)は痒みがでなっかたそうです。

これで経験上豚や鳥さんなどのお肉系や甲殻類は駄目でお魚系は大丈夫ということが分かりました。

食物アレルギーを改善させるはずのアレルギー食が駄目だったのはタンパク源に加水分解フェザーミールが使われているためだと考えました。

フェザーは羽毛の事で一応鳥さん系だです。

アレルギー反応を極力起こさせないように加水分解という製法でタンパク源を今回のフードならフェザーを処理しているのですが4型アレルギーというタイプのアレルギーには効果がありません。

ですので今回の猫ちゃんは鳥さん系のタンパク源に対しては4型アレルギーをもっているものと考えられます。

市販フードへ切り替えおよそ3週間後お口の症状はほぼ改善




太ももの後ろ側や下腹の脱毛も少しわかりづらいですが改善傾向が見られました。



2025-01-22 07:00:00

FIP:猫伝染性腹膜炎の治療薬について緊急のご報告

カテゴリ : 感染症・予防
昨年5月8日、5月15日、9月18日のブログで「FIP猫伝染性腹膜炎の治療に当院ではモルヌピラビルというお薬の海外(具体的にはインド産)ジェネリック薬品を使用しています」との話題をしました。

その中の9月18日のブログで最後の方に赤字で「このお薬を処方する事に私自身葛藤があります。」という事を書きました。

葛藤の理由はいくつあるのですがその一番の理由は「このお薬が日本では未承認薬」でありまた「このお薬はパテントを無視したお薬では」とのご指摘を受けることがあるからです。

新薬の開発には莫大な研究費がかかります、その会社のパテントを無視することはこの研究費を圧迫することにつながりそれは新薬の開発を待たれている患者様の利益を削ぐことにつながってしまいます。

このお薬の正規品はラブゲリオという製品名で販売されている本来は人間のコロナウイルス感染症に対して使用されるお薬で米国の製薬メーカーが開発しました。

本来はとても高価なお薬なのですが所得の低い国々の人たちにも利用できるように米国の会社がインドの製薬会社にジェネリック薬品の製造を(おそらく)パテント料を下げて許可することによって安価での供給を可能にしたと聞いています(少し解釈に間違いがあるかもしれません)。それはパンデミックに対応しないといけないからです。

※当院が使用していたインド産ジェネリック薬品はインドのH社が製造しているのですがこの会社が米国の製薬メーカーから低所得者向けジェネリック薬品製造の許可を得ているかどうかははっきりしていません。インドには特許への緩い考え方?があってそれに基づいて製造されているだけかもしれません。


FIPの正規薬品はどれも高価で多くのオーナー様がその価格に驚かれそのために治療をためらわれてしまいます。

そこでこのH社のインド産ジェネリック薬品のお話をすると皆さん変な表現ですが経済的にほっとされ治療を受け入れてくださいます。

ただ昨日1月20日にFIP猫伝染性腹膜炎についてのセミナーに参加したのですがやはり講師の先生もこのH社のインド産ジェネリック薬品の使用には否定的なご意見でした。

今まで自身には葛藤がありながらも「人間と同じように経済的に苦しい猫ちゃんが助かるならこれでいいんだ」と言い聞かせていましたがやはり無理があるかもしれません、というのもFIPはパンデミックが起こっているわけではないですしまたH社が製造許可を得ているかどうかもわかりませんので。

今後は当院でも正規品のご利用を勧めていく形となりそうです。
2025-01-21 10:00:00

食物アレルギー①

カテゴリ : 皮膚病


画像は去年ブログでご紹介しました糖尿病が一旦改善しインスリンの投与を中止できた猫ちゃんの顔です。

インスリンの投与を中止する少し前の出来事になるのですが「3日前から下あごが腫れてきた。」との事で連れてこられました。

見た瞬間「(少し説明口調にになりますが)あれ猫アトピー性皮膚症候群(FASS)の代表的な4つの皮膚症状の一つ好酸球性肉芽腫群じゃないかなぁ」と感じました。

そこで下あごの張れた部分に針を刺しその細胞を採取し検査にだすとともに治療としては抗アレルギー薬(FASSはアレルギー疾患なので)を処方しました。

結果は好酸球性炎症でこれは好酸球性肉芽腫群で観察されます。

検査結果からよりFASSの疑いが深まりましたので抗アレルギー薬の内服を継続することとなりました。

投薬開始およそ3週間後症状は改善するどころか悪化していました。

下あごの張れた箇所の範囲が広がり


痒みによるひっかき傷やかさぶたも見られました。

頭部~首にかけての痒みもFASSの特徴なので「診断は間違ってないよなぁ」と思いつつオーナー様が「錠剤の内服が上手くできない」とおっしゃったのでそれが原因かなぁと考え錠剤の内服を中止し液体のお薬に変更してみることにしました。


都合により実際に液体の内服薬をお渡しできたのはそれからおよそ2週間後でした。

その時にはあらたな病変部が発生しました。無痛性潰瘍と言って上唇の内側がただれるのです、なぜか痛みは伴いません。

分かりやすくピンクで塗ってみます。

この症状もFASSの時によく見られますのでオーナー様には「内服がうまくできていなかったのでFASSの改善がとぼしいのかもしれません。内服をがんばりましょう」とお話し治療を継続しました。

それから2週間弱さらにあらたな病変部が・・・太ももの後ろ側や下腹に外傷性脱毛がみられました。




この頃になると液体の内服薬を混ぜるとフードを一切食べなくなるとの事で体重が300gほど落ちていました。

ここに至っては治療方針を改めなければなりません。

次週に続きます。
2025-01-15 07:00:00

ブラウニー

カテゴリ : その他


皆さんそろそろお正月ボケは取れてきましたか、今回お休みが長い人では9連休だったそうですね一体どのように過ごされていたのでしょうか。

私は普段となんら変わりなく二日の日は茨木神社に初もうでに行くも人出の多さに参拝をあきらめお正月料理にも飽きてきた三日の日には阪急ロサビアに外食に出かけたくらいです。

その帰りロサビアの1階をぶらぶらしている時に妻が可愛い箱のブラウニーを見つけ「買って帰って紅茶を入れて食べよう」となりました。



それでブラウニーを取り出すにはギザギザから縦に袋を手で裂けばよいのですがそれだとどうしても猫ちゃんを一緒に割いてしまいそうでしたのでハサミで袋の上を切ることにしました・・・この後食べ終わったら袋はゴミ箱に捨てちゃうんですけどね。

ブラウニーはミルク味とビター味でとてもおいしかったです。
2025-01-08 06:00:00

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猫のフィラリア症ムービー(リンク先に動画があります)
https://www.nekomamo.com/parasite/filaria/movie/

  1. 動物園勤務から病院へ
  2. プロフィール
  1. 週齢はどれくらい?
  2. まず行うこと
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  2. 寄生虫予防
  3. 避妊去勢
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  5. 体重管理・食事管理
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