「1か月ほど前から夜鳴きがひどい。夜11時から1時頃になると外出を催促する」とのご相談を受けました。
15歳の老猫ちゃんでしたので、まず「認知機能不全症いわゆる認知症」が頭に浮かびました。
夜鳴き・徘徊は猫ちゃんの認知症でよく見られる症状です。
ただ老猫ちゃんでは甲状腺機能亢進症という病気や高血圧症でも夜鳴きや徘徊をすることがあります。
また外出の催促は、腎機能の衰えにより尿量が増えそのため尿意を催す機会も増えたからかもしれません。
そこで上記の点をチェックしてみましたが特に異常は認めませんでした。飼い主様には「認知症の疑いもあります」とお伝えしました。
認知症では他の病気とは異なる1面が出てきます。
それは例えば夜鳴きがあると、ご近所への騒音や飼い主様自身が寝ることができないといった問題が毎日のように続くことです。
問題解決のために基本的な対策をアドバイスさせていただくのですが、どれも即効性を伴うものではありませんし必ず効果を発揮するとも限りません。
相談に来られる時点で飼い主様は相当に思い詰めておられます。
そのような時、当院では当座の処置として飼い主様の了承を得てになりますが鎮静効果のある飲み薬をお渡しすることがあります。
まずは飼い主様に一息ついていただきます。すると次に「ずっとこのお薬を使用していていいのかな」となりますので、そこで基本的な対策を実施していただくこととなります。
生活環境の改善や頭を働かせる遊びの導入、認知機能改善のためのサプリメントの使用、不安をやわらげる効果があるとされているフェロモン製剤の使用といったところです。
今回も生活環境の改善・昼間の運動・フェロモン製剤の使用をこころみたのですが、めぼしい効果は得られませんでした。
そこでメラトニン製剤を使用してみました。メラトニンには様々な作用があるのですが、一つは規則的な睡眠がおとずれるよう体を調整しています。
睡眠ホルモンと呼ばれたりもします。ワンちゃんでは毛生え薬として使用されることがあります。
副作用と呼ばれるものが比較的少なく、サプリメントに成分の一つとして含まれていることもあります。
1日1回で使用していただきました。
完全に夜鳴きがおさまったわけでありませんが、鳴く回数が減少し以前のご近所迷惑になるような声量もなくなりある程度御満足いただけたようです。
また猫ちゃんも睡眠をとることができ良い結果が得られたのではと考えています。
※猫ちゃんの認知症に対する薬物療法は確立されたものがまだありません。今回のメラトニンも比較的副作用が少ない事を理由に、飼い主様に提案させていただきました。また全ての猫ちゃんに効果が期待できるわけではありません。