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尿閉と高カリウム血症:猫を襲う静かな心臓の危機

カテゴリ : 循環器


二日前からおしっこが出ていない、食欲がなく吐いている――そんな主訴で雄の猫ちゃんが来院しました。

診察室に入ってきたときにはぐったりと横たわっており、固く緊張感のある膀胱が触診されたことから尿閉が強く疑われました。

血液検査では尿毒症に加え、カリウムが8.4mEq/L(基準値はおよそ3.7〜4.6)と非常に高い値を示していました。

これは非常に危険な状態です。

カリウムと心臓

というのはカリウムは心臓の電気を整える役割を持つ大切なミネラルなのですが、増えすぎると電気の流れが乱れて心臓のリズムが崩れ、心停止に至ってしまうのです。

今回の猫ちゃんも、心拍数は130台と健康な猫にしては遅く、すでに高カリウム血症による影響が心臓に現れていました。

心電図の変化

心電図を装着すると、まず目に入ったのは尖って高くなったT波でした。



心電図にはいくつかの波がありますが、その中でもT波はカリウムの影響を受けやすく、血液中のカリウムが高いと大きく形が変わります。

心電図のT波が高いのは危険なサインです。


治療の流れ

治療はまず酸素を吸わせ、静脈路を確保し、心電図で心臓の動きを監視するところから始まりました。

尿閉の根本治療は尿道にカテーテルを通すことですが、この子は重度の高カリウム血症で心臓が不安定だったため、鎮静をかけて行うのは命に関わるリスクがありました。

そこで、まずは心臓を守る治療を優先しました。

最初に投与したのは グルカゴン です。

グルカゴンは心臓の細胞に働きかけてカルシウムの出入りを増やし、心臓の収縮力を後押しします。

カルシウムは心臓が力強く動くために欠かせない物質であり、この働きで拍動を支えました。

次に 膀胱穿刺 を行い、尿を抜いて腎臓への圧力を下げ、余分なカリウムが体に戻るのを防ぎました。

この二つの処置によって、治療開始から30分ほどで心電図に変化が現れました。

T波はまだ完全に正常とは言えないものの、明らかに低下し改善がはっきり分かる状態になったのです。





ここで次の段階として GI療法 を開始しました。

手順は、まず20%ブドウ糖をボーラス投与し、その直後にインスリンを投与、その後は5%ブドウ糖を持続点滴しました。

インスリンは血液中のカリウムを細胞内へ移動させ、ブドウ糖は低血糖を防ぐために一緒に投与します。

GI開始から1時間半後の血液検査では、カリウムは7.4mEq/Lに下がり、心拍数も160台に回復。

この時点ではT波が逆に小さくなりすぎて、はっきり判別できないほどでした。






このとき、根本治療であるカテーテル通過を試みました。

本来は鎮静をかけて行う処置ですが、依然として鎮静のリスクは大きいと判断し、「強い抵抗を示したらすぐに中止する」という前提で鎮静なしで慎重に行いました。

すると思いのほかスムーズに通過し、排尿を確保することができました。

さらに30分後には心拍数は200台に上がり、T波は陰性化(波の山が逆転)しました。

猫では陰性T波も正常範囲に見られるため、この時点で心臓の急性危機は一旦脱したと判断しました。






まとめ

尿閉は、単に「おしっこが出ない」だけの病気ではなく、尿毒症や高カリウム血症によって命を脅かす危険があります。

今回のケースでは、心電図の波形が治療に応じて変化していく様子を目の当たりにしました。

残念ながらこの子は別の要因により最終的に助けることはできなかったのですが、少なくとも心臓の危機は一度は脱することができました。

こうした経験を通じて、尿閉の怖さを少しでも多くの方に知っていただきたいと思います。
2025-09-24 04:00:00

【猫が突然倒れることも】心臓の病気が原因かもしれません

カテゴリ : 循環器


うちは朝の早い時間にも診察を受け付けています。

ただしその時間は私ひとりですので、重症例には十分な対応が難しい場合もあります。

そんな朝に、「猫が水を吐いて倒れました。すごく苦しそうなんです」というお電話がありました。

「私ひとりでの対応になりますが、それでもよろしければ」とお伝えすると、
「とにかく診てもらえたら」とおっしゃったので、受け入れることにしました。
 
呼吸していない。でも心臓は動いている
 
キャリーに入れられてやってきた猫ちゃんは、すでに意識がなく、呼吸も止まっていました。

口や鼻のまわりには泡のような液体がついており、体の右側の毛もびしょびしょに濡れています。

もう厳しいかもしれない、と思いながらも聴診器を当ててみると、心臓の音はまだしっかり聞こえました。

ただし、かなり強い雑音も混じっています。「やっぱり心筋症だな」と思いました。

気管チューブを入れて人工呼吸をするのが理想ですが、一人ではすぐには難しい。

とにかく酸素を早く届けたかったので、酸素ホースを口に当ててみました。
表現はよくないですが、ぐっと差し込むような形です。

すると、数十秒後に自発呼吸が戻り、しばらくして自力で伏せる姿勢が取れるようになりました。

そこからはフェイスマスクでの酸素供給に切り替え、利尿剤の注射を行いました。
 
吐いたのは胃液や腸液ではなく「肺に溜まった水分」
 
飼い主さまには、こう説明しました。

「おそらく心臓の病気が関係しています。

吐いたのは胃の内容物ではなく、肺に溜まった水分かもしれません。

嘔吐ではなく、喀出(かくしゅつ)といって、肺に水がたまることで起こる症状です」
「えっ、さっきまで普通だったのに」と、飼い主さまは信じられない様子でした。

でも、動物は本能的に不調を隠そうとします。

猫も例外ではなく、どうしても発見が遅れがちになります。

特に心臓病は、外からの変化がとても分かりにくい病気です。
 
心臓から肺へ「血液の渋滞」が起きていた
 
その後、簡易的に心臓のエコー検査を実施しました。

一人で行ったものなので十分な画質とはいえませんが、ある程度の情報は得られました。

前出の動画ですが心臓の左心室から血液が大動脈へ流れる左室流出路という部分に、「モザイク血流」と呼ばれる乱れた血流が見られました。

これは通路が狭くなっており、血液の流れに抵抗があることを示しています。
また、左心房には血栓のような影も見えました。

このように心臓から血液がスムーズに流れないと、「血液の渋滞」が起こります。

その結果、心臓のすぐ後ろにある肺に水分がにじみ出てしまい、まるで溺れたような状態になってしまうのです。

肺エコーでも「Bライン」と呼ばれる所見が確認され、これは肺水腫のサインのひとつとされています。




 
利尿剤で肺の水を抜きたい。でも体がもたない
 
治療の第一歩は、肺に溜まった水を尿として体の外へ出すことです。

そのために利尿剤を使います。

ただし、前提として全身の血液循環がある程度保たれていなければ、薬は腎臓まで届きません。

尿も作れませんし、水分も排出されません。

この子の体温は35℃とかなり低下しており、全身の循環がかなり悪い状態でした。

利尿剤を投与しても60分経っても尿は出ず、膀胱も空っぽ。

もう一度投与しても、反応はありませんでした。

最終的に、循環を助ける薬を最低用量で持続投与しました。
(この薬は、左室流出路に狭窄のある猫では悪化することもあるため、最初からは使いにくい薬です)

案の定、呼吸がさらに苦しそうになったため、投与速度を落としながら様子を見ました。

飼い主さまに状況をお伝えしていた最中に、呼吸が止まり、残念ながらそのまま旅立ってしまいました。
 
心臓病は「突然」のように見えることもあります
 
腎臓病や糖尿病、甲状腺の病気などは、

  • 水をよく飲む
  •  
  • 尿が多い
  • 食べているのに痩せてきた


などのわかりやすいサインが出ることが多いのですが、心臓病はそうではありません。

  • 呼吸が少し速い?
  •  
  • 横になるのを嫌がる?
  •  
  • 抱っこすると嫌がる?
  •  
といったサインがある場合もありますが、それが見える頃には病気がかなり進んでいることも。

また今回のように、本当に突然、発症するケースもあります。
 
じゃあどうすればいいの?
 
やはり定期的な健康診断がいちばんの予防になります。

  • 聴診で心雑音がないかをチェック
  •  
  • 心エコー検査で構造や血流の異常を確認
  •  
  • 血液検査で心臓マーカーを調べる(最近はこれも可能になってきました)
  •  
年齢や品種によっては、心筋症のリスクが高い猫もいます。

「なんとなく元気だけど……」というときこそ、早めに診ておくのがおすすめです。

心臓の病気は、本当に「見た目ではわからない」ことが多いです。

でも、早く見つけられれば対処できることもあります。

「ちょっと気になるな」「定期検査しておいた方がいいかな」と思ったら、
お気軽にご相談くださいね。
 
2025-06-18 07:00:00

ごはんを食べたあとにフラつく猫ちゃんの話【迷走神経反射かも?】

カテゴリ : 循環器


「ごはんを食べだしてしばらくするとふらつくんです。ささえていないと倒れてしまうくらいの感じです。」

ある日、そんなご相談を受けました。

「えっ、そんなことあるのかな。何かあったかな。」
そう思いながら、飼い主さんが持参された動画を見てみると……まさにおっしゃっていた通りのことが起こっていました。

体の状態を調べてみることに

正直そのときは「いったい何なんだろう」と思いながらも、まずは検査をして今の体の状態を確認しましょうとお話しました。

というのも、この猫ちゃんには持病として「拘束型心筋症」と「甲状腺機能亢進症」があったからです。

このふたつの病気、どちらも「心臓がドキドキしやすくなる」特徴があります。

心臓が過剰に働くと、ふらつきや失神の原因になることがあるんですが、それがうまくコントロールできていないのかなと思ったんです。

でも、「なぜごはんのときにだけ?」という疑問は残りました。

迷走神経反射?と思い至るまで

検査日までの間、いろいろと考えていた中で「ひょっとして、迷走神経反射(めいそうしんけいはんしゃ)かも?」と気づきました。

ごはんを食べると、食べ物が喉を通ったり胃が広がったりすることで「迷走神経」という神経が刺激されます。

すると、体はリラックスモードに入ります。

この反応は、健康な体にとってはすごく自然で有益なことです。

エネルギーを効率よく吸収するために、体が無理をしないようにしてくれているんですね。

でも、この猫ちゃんはすでに「心臓を落ち着かせるお薬」を2種類のんでいました。

そこに迷走神経反射が加わると、心臓の動きが抑えられすぎてしまったのかもしれません。

お薬を調整してみると…

検査の結果、持病の心筋症や甲状腺の状態はちゃんとコントロールできていました。

やっぱり今回のふらつきは「迷走神経反射」の影響が強かったと考えられます。

そこで、お薬のうちのひとつをいったん中止してみました。

すると――
ごはんを食べたあとにふらつく様子は、ほぼ見られなくなったんです。

おわりに:ちょっと不思議な「食後のふらつき」

「ごはんのあとにフラつく」という少し不思議なご相談から始まった今回のケース。

迷走神経反射自体は健康な体にも起こるものですが、持病やお薬の影響が重なると、ちょっとしたことで体のバランスが崩れることもあります。
2025-05-14 06:00:00

初めての血圧測定で見えたこと

カテゴリ : 循環器
【訂正と補足】

この記事執筆当時は「テルミサルタンは腎臓の輸出細動脈を拡張して腎に特異的に効く」と理解していましたが、現在は「全身のAT1受容体をブロックする薬」であると認識を改めています。

その作用の中で腎糸球体圧を下げる効果が臨床的に目立つため「腎の薬」と紹介しましたが、正しくは「全身的に血圧・心臓・腎臓を守る薬」と考えるのが正確です。

ただし『アムロジピンに比べ降圧効果はゆるやか』という記述は正しい内容です。

なお、ブログ本文は公開時のまま残していますので、当時の理解に基づいた表現が含まれていることをご承知おきください。

令和7年8月26日





慢性腎臓病の猫ちゃんを診ている中で、初めての血圧測定で著しい高血圧症が見つかった子がいました。

猫ちゃんの正常な血圧は、一般的に140mmHg以下とされており、160mmHgを超えると治療の検討が必要になってきます。

この子は初回測定で200mmHg超え。何度測ってもほとんど変わらず、びっくりしました。

もちろん、猫ちゃんは緊張や動きで実際より高めに出やすいので、そこから1020くらい差し引いて考えることも多いです。

それでも180mmHg前後と見積もられ、「高いことは間違いない」と判断しました。
 
数日かけて慎重に判断

1日の測定だけで「高血圧症」と決めるのは避けたいので、何日かに分けて繰り返し測定しました。

その結果、毎回やはり高値が続いていたため、この子には高血圧症と診断し、治療を開始することにしました。
 
最初に使ったのはテルミサルタン
 
猫ちゃんの高血圧治療薬には、

  • アムロジピン(Ca²⁺拮抗薬)
  • テルミサルタン(ARB系)

  • 2種類がよく使われます(場合により併用もあり)。

この子のオーナー様が「液状のお薬がいい」とご希望されたため、テルミサルタンを選びました。

アムロジピンは日本では錠剤しか入手できません。
 
一時的な改善と再上昇
 
テルミサルタンを開始してから1週間ほどで、血圧は170180mmHgに。

数値としてはまだ高めですが、以前の200台からは改善が見られたので、そのまま継続。

しばらくは160台で安定していましたが、徐々に再び上昇してきました。
 
アムロジピンへの切り替えを決断


 
この子は比較的おとなしく血圧測定に協力的なので、数値は信頼できるものでした。

再び180190台が続いたため、オーナー様にアムロジピンへの切り替えを提案しました。

実は、アムロジピンは猫の高血圧における第一選択薬ともされており、特に180mmHgを超えるような場合に有効性が高いとされています。


薬剤名

主な作用 血圧への影響
テルミサルタン アンギオテンシンをブロックして、腎臓の血管を先に拡張全身の血圧をゆるやかに低下させる 間接的・ゆるやか
アムロジピン カルシウムが血管の筋肉に入るのをブロック血管の収縮を防いで広げる 直接的・強力
  
※VASDILATION(血管拡張)


血圧が140台まで改善



アムロジピンへ切り替えてしばらく経ったころ、再度測定すると血圧が140台に!

ようやく正常範囲に近づきつつあることが確認できました。
 
まとめ

 猫ちゃんの血圧は、一度測っただけでは判断できないことが多く、繰り返し測定しながら慎重に診ていく必要があります。

また、お薬にもそれぞれ得意な場面・働き方があり、その子に合わせた選択が大切になります。

「うちの子も血圧測った方がいいのかな?」と気になる方は、ぜひ一度ご相談くださいね。
 
2025-05-07 07:00:00

猫の心雑音と心臓肥大、その原因は甲状腺かもしれません

カテゴリ : 循環器
【追記とお詫び】心筋症の「フェノタイプ」という表現について

本ブログ公開時は「フェノタイプ」が原因の病気にかかると理解し記事を書いていました。

しかし、「フェノタイプ」という言葉は 原因ではなく、“心筋の形態(肥大型・拘束型など)” にかかるものです。


したがって、より正確には

  • 「肥大型心筋症フェノタイプ(甲状腺機能亢進症に伴う)」
  • 「末端肥大症に関連した肥大型心筋症フェノタイプ」
などと表現するのが適切です。

誤解を招く表現をしてしまい、読んでくださった方には申し訳ありません。

今後はより正確な情報をお伝えできるよう努めます。

※ブログ記事は公開時のままです。




3月5日のブログでご紹介した猫ちゃんの続きになります。

下痢と体重減少を主訴に来院され診察中に心雑音を認め、血液検査で甲状腺機能亢進症と診断した猫ちゃんです。

今回はその後に実施したレントゲンやエコー検査からわかってきた「心臓の状態」についてのお話です。

1 心筋症にはタイプがあります

(真の心筋症と、ほかの病気が原因で起きる心筋症)

2月19日のブログでは

①心筋症にはもともと心臓に問題があって発症する真の心筋症と何か先行する原因が合ってそれにより引き起こされる二次的な心筋症に分ける事が出来ます。

②先行する原因としては高血圧症、甲状腺機能亢進症、末端肥大症、脱水、腫瘍などが考えられます。

③先行する原因が高血圧症による肥大型心筋症なら「高血圧症に伴う肥大型心筋症フェノタイプ」というように最後にフェノタイプという言葉をつけて真の肥大型心筋症と区別します。

というようなお話をしました。

2 今回の猫ちゃんも“フェノタイプ”でした

(甲状腺機能亢進症が先にあったケース)

今回のエコー動画の猫ちゃんも肥大型心筋症の疑いがあるのですが甲状腺機能亢進症が先行する原因と考えられましたので「甲状腺機能亢進症に伴う肥大型心筋症フェノタイプ」と診断しました。

実はこのエコー動画は3月5日のブログでお話しをしました甲状腺機能亢進症を発症した猫ちゃんのものです。

3 血液検査で見えてきた心臓の負担

(pro-BNPとTT4の高値)

エコー検査に先立って聴診器で心雑音を、血液検査でpro-BNPおよびT4値の上昇を認めていました。

pro-BNPは心臓に負担がかかると血液中で増える成分です。

下の画像はpro-BNP値の上昇を検出する簡易キットです。向かって右側の青い丸のほうが濃ゆく出るとpro-BNP値が上昇していることを示します。

※画像は別の猫ちゃんの結果です


TT4は甲状腺のホルモンです。基準値が0.8-4.7のところ20.0以上となっています。



4 レントゲンでわかった心拡大

(数値で見ても明らかな心臓の大きさ)

これらの結果から甲状腺機能亢進症に伴う心筋症が疑われましたのでレントゲンおよびエコー検査も行いました。

レントゲン検査です。胸部を左横からながめている感じですがが心臓が大きくなっていました。

心臓の縦の長さ(ピンク)と横の長さ(ブルー)をそれぞれ測り、それぞれの長さがが4番目の胸椎の先頭(イエロー)から胸椎何個分になるかを調べます。

この子のケースでは縦の長さ(ピンク)は胸椎5.5個分、横の長さ(ブルー)は4.8個分でした。

その数値を足し算すると10.3となりました。

猫ちゃんではこの数値は7.5前後が基準とされていますので10.3はかなり心臓が大きくなっていることを表しています。



比較の為に正常な猫ちゃんのレントゲン画像も載せておきます。ピンクの長さは4.3個分、ブルーの長さは3.1個分、足し算すると7.4で基準値に近い値でした。


5 エコー検査でわかった壁の厚みと左心房の拡大

(心筋の肥大)

次に心臓の内部の様子を見るためにエコー検査をおこないました。上の動画がその時のものです。

下の画像は上の動画で心臓が一番拡張した時の静止画です。点線1では心臓の右と左を分ける壁(筋肉)の厚さを、点線2(黄色の点線)では左側の心臓の壁(筋肉)の厚さをそれぞれ測っています。

点線1は5.3㎜、点線2は6.1㎜でした。心臓の壁の厚さが6.0㎜を超えてきたら心筋の肥大を疑いますので血液検査の結果と合わせて「甲状腺機能亢進症に伴う肥大型心筋症フェノタイプ」と診断しました。



次の画像は上の動画で心臓の左心房とよばれる場所に一番血液が流入した時の静止画です。

点線部でその時の左心房の幅を測っているのですが19.5㎜で基準値の上限と言われている17.0㎜を超えてきています(左心房拡大)。これは心臓の負担がそれなりに進行していることを示しています。

また左心房の拡大は左心房内での血流の乱れがあることも示しており血流の乱れは血栓(血のり、血の固まったもの)を生じさせる可能性があります。

血栓が心臓を飛び出し大事な血管を詰まらせると大変なことになります。

※左心房の拡大が認められますが血栓はありません。


6治療と今後の注意点

(甲状腺と血栓予防の薬について)

治療は甲状腺ホルモンの働きをブロックするお薬と血栓を予防するお薬を処方しました。

甲状腺の病気が見つかって治療を始めたことで見た目の症状が落ち着いてきたように見えても実際には体の中で心臓に負担がかかっていることもあります。

今回の猫ちゃんのようにひとつの病気が他の臓器にも影響を与えることがあるため、状況に応じて定期的な検査や経過の確認が大切になります。

気になることがあればいつでもご相談くださいね。
2025-04-02 09:00:00

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