先月の初め頃「今朝いつものようにご飯を欲しがらない。こたつからだして歩かせてみたら2歩くらいで倒れた」との事で高齢の猫ちゃんが連れてこられました。
来院時は高齢猫ちゃんなりのいつもの様子に見受けられましたが、異常に速い心拍と低体温を認めました。
下の動画は倒れた直後の様子を動画撮影されたものでオーナー様のご厚意で掲載させていただきました。
この様に失神してしまう病気はいくつか考えられるのですが心臓病もその一つです。
心臓が悪いと全身に血液がきちんと供給されず脳への血液の供給が途絶えた場合は気を失って倒れてしまいます。
そこでレントゲン撮影をしてみますと心臓が大きくなっており(青いラインで囲っています)それにより心臓病の存在が示されました。

猫ちゃんの正常な心臓の大きさはだいたいピンクのラインで囲ったくらいになります。

猫ちゃんの心臓病は心臓の壁(筋肉)が肥大しておこる肥大型心筋症とよばれるタイプのものが多いです。
今回もその病気を疑いそれを確かめるためにエコー検査を実施しました。
結果、心臓の壁(筋肉)の肥大は認められずそのかわりに心臓の壁が硬くなることで心臓の働きが損なわれる拘束型心筋症とよばれるタイプの心筋症が疑われました。
上に挙げたエコー動画がその時のものです。
今回は詳しい説明は省きますが心臓の壁が硬くなり心臓の拡張・収縮が充分に出来ていない様子がとらえられています。
別の日のエコー動画の方がより分かりやすので挙げておきます。
心拍動中の何回かに1回くらいしか拡張できていない様子やこれも詳しい説明は省きますが拘束型心筋症の特徴である左右両方の心房拡大も見られます。
ただいずれの動画も皆様には何のことだかとなると思いますので比較の為に正常な猫ちゃんの同じ場所のエコー動画も挙げてお行きます。
どうでしょうか上二つの動画の心臓と比べてやわらかく規則正しく心臓が拡張・収縮している様子がうかがえると思います。
治療には当初3種類の内服薬を使用していたのですが、もう1種類追加しようと考えその選択が妥当なものであるかどうか確信が持てませんでしたので二次病院を受診していただきました。
それにより私が考えていたものとは別の内服薬が追加となり現在経過を見守っています。