ある日「お世話をしている地域猫が自宅の門のところでうずくまって動かない。呼吸が苦しそう」との事でクロ猫さんが運ばれてきました。
診察台に乗せ観察してみますと深く速い呼吸をお腹でしていました。
レントゲンで胸部を撮影してみますと、胸の中に何らかの液体が溜まっている像が映し出されました。

←頭側 猫ちゃんの胸部を横から見ています。
※レントゲンでは空気は黒く写ります。ですので空気を含んだ肺は黒く写ります。液体やその他の臓器は 白く写ります。
上のレントゲン画像に説明を入れてみます。

本来は肺がふくらむための空間に液体がたまり肺がふくらむジャマをしています。
それでこの猫さんはできるだけ肺をふくらませ空気を取り込もうと深く速い呼吸になっていたのです。
このような時獣医師は呼吸の改善と検査のために胸にたまった液を抜く作業をします。
上の動画はその時の様子です。酸素をかがせながら胸に針を刺し注射ポンプで液体を吸引しています。
吸引された液体は「膿」で膿胸との診断に至りました。膿胸とは何らかの理由で膿が胸の中にたまってしまう病気です。
吸引後のレントゲン画像です。

説明を入れてみます。

液体(膿)が占める範囲が小さくなり逆に肺が占める範囲が広くなっています。
膿で隠れていた心臓も一部確認できるようになりました。
この吸引処置により来院時よりもだいぶ呼吸が楽になりました。
膿胸の治療はこれで終わりではありません。化膿した場所を洗浄していかなければなりません。洗浄場所は胸の中ですから洗浄液を送り回収するためのチューブを胸に設置しなければなりません。
チューブ設置翌日に洗浄をしているところです。チューブの先端は胸の中に入っています。お皿の中のクリーム状の液体が膿です。

※チューブ設置は北摂夜間救急動物病院に依頼しました。
1日2回洗浄処置をするのですが、お皿の中の液体が透明になるまで何日間か続けていきます。
この猫ちゃんの場合、注入し回収される洗浄液がほぼ透明になるまで2週間を要しました。
2週間後の回収液です。

その日のレントゲン画像です。

チューブが写っています。
回収液の中にバイキンも見られなくなっていましたのでチューブを抜きました。
抜いた後のレントゲン画像です。

チューブを抜いてから1週間後のレントゲン画像です。
ほぼ膿がなくなっています。

元気よく回復し現在はお家の中で飼っていただけることになりました。