
今回は糖尿病の治療でインシュリンの投与が必要でなくなった猫ちゃんのお話です。
糖尿病は何らかの理由でインシュリンというホルモンが作られなくなり発症します。
インシュリンは血液の中を流れている糖分(エネルギー)を体(細胞)の中に取り込む働きをしています。
そのインシュリンが無くなってしまうと体はエネルギーを利用することができなくなり弱っていきます。
利用されなくなった糖分は血液中で増えていきます。血液中の糖分が増えるとのどが渇きお水をたくさん飲みます。
そして行き場を失った糖分は最終的におしっこといっしょに捨てられてしまいます。本来おしっこのなかにはないはずの糖分が現れるので糖尿病と呼ばれます。
フードを必要以上にあたえていたりすると、よぶんなフード言い換えれば糖分(エネルギー)のぶんもどんどんインシュリンが利用されやがて無くなってしまいます。
インシュリンを作る工場が疲れてしまい生産をやめてしまうからです。
ワンちゃんでは糖尿病を発症しインシュリンの投与が必要になると生涯投与を続けなければならないことがほとんどですが、猫ちゃんではインシュリンが体の中で再度作られるようになりインシュリンの投与が必要でなくなる子もいます。
先月「急にお水をたくさん飲むようになりおしっこの量が増えた」という猫ちゃんがいました。
当院が休診であったため別の動物病院さんで糖尿病との診断をうけ数日間入院のあと無事退院され、その後当院で引継ぎをさせていただきました。
別の動物病院さんでの血液検査の結果です。

血糖値(GLU:グルコース)が大幅に基準値を超えています。尿検査でも尿中に糖分が出現していました。
治療は以下のインシュリン製剤が投与されていました。

通常インシュリンは1日2回の投与が必要な事が多いのですが、オーナー様のお仕事の時間が不規則なものできちんと時間をきめて2回投与することが困難であったため1日1回の投与としました。
同時に糖尿病用のフードも利用して頂きました。
糖尿病の治療が上手にできているかがご自宅で確認できる目安としてお水の飲む量が正常かどうかみておくというのがあります。
今回の猫ちゃんは1日1回の投与に切り替えても飲水量は正常のままでした。
別の動物病院さんを受診されてからおよそ1か月後の血液検査結果です。

FRU(フルクトサミン)という成分の値を測定しています。フルクトサミンはおおざっぱに言いますと過去2~3週間の血糖値の平均値と考えてください。
結果は309でわずかに<300の判定基準から外れますが、総合的に判断して「インシュリン非依存状態に戻った」言い換えますと、再び自分でインシュリンが生産できるようになり外からインシュリンを注射しなくてもよくなったと考えました。
そこでオーナー様と話し合い、糖尿尿用フードは継続しインシュリンの投与を中止してみることとしました。
経過は良好で投与中止からおよそ2週間後のフルクトサミンの値です。

数値は269でさらに安定していました。
フードの継続、飲水量のチェック、定期的な血液・尿検査をお願いいたしました。
糖尿病用フードは療法食メーカーから何種類か発売されています。
今回利用しました糖コントロールは食後の急激な血糖値上昇をおさえるように開発されているようです。
食後の急激な血糖値上昇はインシュリン生産工場に負担をかけ糖尿病発症のリスクを高めます。