当院では7歳以上の猫ちゃんやワンちゃんには年1~2回の健康診断を、当然万能の検査ではないのですがその入り口の検査としてまずは血液検査をお勧めしています。
昨年末健康診断の血液検査の結果を聞きに来られた12歳の猫ちゃんのオーナー様から「昨日から急に嘔吐し始めた、食欲はあります。」との相談を受けました。
この猫ちゃん血液検査では何も異常がありませんでした。急な嘔吐ですと肝臓やすい臓といったところを血液検査では注目しますが問題ありませんでした。
オーナー様との話し合いでまずは毛玉症や胃炎のお薬、療法食で様子を見ることとしました。
それで症状は一度おさまったのですがしばらくして再発してしまいました。
このように「シニア世代の猫ちゃん・ワンちゃんが食欲はあり比較的元気なのに嘔吐が続いている、血液検査では問題ない」と言った場合は要注意なことがあります。
それは血液検査では調べることができない胃や腸に何か大きな問題、具体的には腫瘍性の疾患がが隠れていることがあるのです。
そのような時はエコー検査や内視鏡による病理検査、CT検査などを組み合わせ診断を進めていきます。
当院ではエコー検査までは可能なのですがその他の設備がありませんので、今回の猫ちゃんには2次病院を受診していただきました。
内視鏡による病理検査の結果以下の診断が得られました。
十二指腸と回腸に小型のリンパ球の浸潤が認められ小細胞性リンパ腫の可能性が高いとの診断でした。
「リンパ腫の可能性が高い」と表現され「リンパ種です」と断言されていないのは何故でしょうか?
それはリンパ球は炎症反応でもその部位に浸潤してきますので、さらに炎症性の反応か腫瘍性の反応かを鑑別しなければならないからです。
鑑別の為、リンパ球クロナリティー検査と呼ばれる検査を行います。
「クロナリティーあり」との結果は「腫瘍性の反応ですよ」と言うことになります。
以上から「十二指腸・回腸の小細胞性リンパ腫」との診断にたどり着きます。
今回「小細胞性」との診断でしたので上記画像のお薬とステロイドを服用していけばで予後は良いものと思われます。
ちなみに「大細胞性」の場合は複数の抗がん剤の注射や内服薬を組み合わせた治療が必要になります。