前回(1月15日)の続きです。
内服薬での治療に行き詰ったところでカルテを見直していてオーナー様からこのようなお話があったことを思い出しました。
「糖尿病になる前はこのような皮膚病を発症したことはなかった。糖尿病発症後グレインフリー(主なタンパク源:マグロ、カツオ)を与えたことがあるのですがそのフードが怪しいように思う。前の病院で糖尿病食として勧められたロイヤルカナン:糖コントロールドライも一緒に与えていました。」
上記のお話から食物アレルギーの関与が疑われましたので治療の方向性を
猫アトピー性皮膚症候群(FASS)から猫食物アレルギー(FAD)に切り替えてみることにしました。
この時点で糖コントロールドライの他にもいくつかのフードを当院でも紹介しており
ビルバック
体重&糖質制限ドライ(主なタンパク源:豚および家禽)
スペシフィック
FRWウェット(豚肉、魚類)
FRDドライ(トウモロコシ蛋白)
ピュリナ
OMドライ(コーングルテン、小麦グルテン、脱脂大豆、家禽ミール)
などが利用されていました。
そこでこれらのフードを一切やめアレルギー食(主なタンパク源 コーンスターチ 加水分解フェザーミール)のみを与えて頂くことにしました。加水分解フェザーミールとは特殊な製法でフェザー(羽毛)から作られたタンパク源で理論上アレルギーを起こさないようになっています。ただ今回詳しい説明は省きますが4型アレルギーというタイプのアレルギーには効果がありません。
それから2週間後アレルギー食への切り替えは済んだが症状は悪化していました。(画像を残し忘れました)
この事実を見てまた「やはりFASSも関与しているのかなぁ」との考えが頭をめぐり投薬方法をご指導したうえで抗アレルギー薬(錠剤)の再開をお願いしました。
1週間後やはり内服は難しくアレルギー食も全く食べなくなり体重がさらに300gほど落ちていました。
これでは食べないことで起こる別の問題(詳しい説明は省きますが脂肪肝など)が心配となってきましたので内服はもちろんアレルギー食も止めることにしました。
「糖尿病前はこのような皮膚病を発症したことはない。様々な市販フードを利用していた。」との事でしたので市販フードを色々試して頂きとりあえず猫ちゃんに食べてもらうことを優先しました。
驚くことに市販フードへ変更後わずか2日で口の症状が和らぎました。
下あごの腫れが無くなりました。分かりづらいですが赤みは少し残っています。
潰瘍の範囲が小さくなりました。前回のブログと比べてみてください。
効果のあった市販フードはタンパク源がカツオのもので症状の緩和を見た後にチキンがタンパク源のものを与えたところ痒みが出たそうです。
オーナー様の最初のおはなしから「グレンフリーのフード(主なタンパク源がマグロ、カツオ)が怪しい。お魚系タンパクがアレルギーの原因では」と考えていたのですが「チキンがタンパク源のフードのものを与えたら痒みが出た」とのお話からアレルギーを引き起こしていたのは糖尿病に良かれと思って一緒に与えていた糖コントロールの方であった可能性が高まりました。
糖コントロールの主なタンパク源は鶏・七面鳥・ダックだからです。
その後色々試されて豚肉やエビがタンパク源のフードも痒みが出たようです。
糖尿病療法食の多くがチキンや豚肉がタンパク源となっており痒みを誘発するなか唯一トウモロコシ蛋白がタンパク源のフード(FRD)は痒みがでなっかたそうです。
これで経験上豚や鳥さんなどのお肉系や甲殻類は駄目でお魚系は大丈夫ということが分かりました。
食物アレルギーを改善させるはずのアレルギー食が駄目だったのはタンパク源に加水分解フェザーミールが使われているためだと考えました。
フェザーは羽毛の事で一応鳥さん系だです。
アレルギー反応を極力起こさせないように加水分解という製法でタンパク源を今回のフードならフェザーを処理しているのですが4型アレルギーというタイプのアレルギーには効果がありません。
ですので今回の猫ちゃんは鳥さん系のタンパク源に対しては4型アレルギーをもっているものと考えられます。
市販フードへ切り替えおよそ3週間後お口の症状はほぼ改善
太ももの後ろ側や下腹の脱毛も少しわかりづらいですが改善傾向が見られました。