みなさまに心の安らぎをご提供できる「かかりつけ動物病院」を目指しています。茨木市のハリマウ動物病院

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新入り猫には症状がないのに、先住猫に出た皮膚糸状菌

カテゴリ : 皮膚病

※真菌培養検査 真菌(カビ)が生えると黄色い寒天培地が赤く変色します。


新しく迎えた猫ちゃんをワクチン接種のために連れて来院された飼い主さんがいました。

その子は少し鼻炎がありましたが、全身状態は安定しており、予定通りワクチンを打つことができました。


※新しく迎えられた猫ちゃんです。ワクチン接種証明書用の写真しか残していませんでした。

診察中の相談


そのとき、飼い主さんがスマートフォンの写真を見せてくれました。

写っていたのは先住猫の耳で、毛が抜けているとのことでした。

「一度連れてきてください」とお伝えしました。


翌日の来院




翌日、実際に連れて来られたのは別の先住猫でした。

その子の耳にも脱毛があり、ウッド灯で調べると鮮やかに蛍光反応を示しました。



皮膚糸状菌症(真菌症)です。真菌培養も陽性でした。(最初の画像)

おそらく写真で見せてもらった最初の子も、同じ真菌症だったのでしょう。




不思議な点


不思議なのは、新入り猫には皮膚の異常がまったくなかったことです。

にもかかわらず、先住猫2匹にだけ症状が現れました。

皮膚糸状菌は保菌していても発症しないことがあり、今回の新入り猫も無症状キャリアとして病原体を持ち込み、感受性のあった先住猫の方に症状が出たと考えられます。


まとめ


完全室内飼育だからといって病気の心配がないわけではありません。

新しい猫を迎え入れることで病気が家に持ち込まれることがあり、しかも今回のように「持ち込んだ新入りは無症状、先住猫にだけ症状が出る」というケースもあります。

皮膚糸状菌は環境に残りやすく、人にも感染する可能性があるため注意が必要です。

新しい猫を迎えるときには、その子だけでなく、先住猫たちをどう守るかという視点もぜひ持っていただきたいと思います。
2025-11-05 09:00:00

診察のあと

カテゴリ : その他


今日、診察が終わり、

スタッフが帰ったあと、ザ・スミスの “Asleep” を流していました。

ピアノの音が、器機の音や冷蔵庫のモーターといっしょに、

小さく、ゆっくり響いていました。

特に大きなことはありませんでしたが、

いくつかの顔が頭に浮かびます。

キャリーに戻っていく猫たちの後ろ姿。

キャリーの扉をそっと閉める飼い主さんの手。

モリッシーの声が遠くで流れています。

――――――――――――――――――――――――――――

足元でジャックが伸びをし、

曲は終わりに近づいていました。

ドアの外では、人の流れが途切れず、

駅から帰る人や、買い物帰りの人が行き交っています。

音が止まり、静かになりました。

少し息をつき、明かりを消しました。

――――――――――――――――――――――――――――

・・・・診察室はもう暗く、

外の灯りだけが壁をうすく照らしています。

・・・もう人通りはありません。

おやすみなさい
2025-11-05 01:00:00

FIP治療最終日に気づいたこと

カテゴリ : 感染症・予防


治療完走の日に


今回ご紹介する猫ちゃんは、シェルター出身で、引き取られてまもなくFIPを発症した子です。

そこから84日間の治療を続け、無事に最終日を迎えることができました。最終日の再診では検査値も安定しており、一区切りを確認できた日でした。

しかしその診察で、両前肢外側および下腹部から大腿内側にかけての外傷性脱毛を見つけました。飼い主さんも気づいておらず、私自身もこれまでの診察で記録していませんでした。




振り返ってみると──


初診時は転院で、すでに一通りの検査が終わっていたため当院ではほぼ問診のみ。

ただ中間日には腹部エコーも実施しています。それにもかかわらず、その時点で脱毛があったのかどうか、私自身の記憶があいまいです。

これは獣医師としての反省点だと感じています。


外傷性脱毛とストレス


外傷性脱毛は、掻痒や痛みを伴う皮膚疾患で見られることもありますが、多くはストレスが背景にある行動(舐め壊しや毛抜き)です。

猫はストレスを感じると、自分の体をなめることで気持ちを落ち着けようとします。

これは正常なセルフケア行動ですが、強いストレスが続くと過剰になり、毛が抜けてしまうほど激しく舐めることがあります。



その結果、今回のようになめやすい箇所に脱毛が生じることがあります。

今回のケースでは「いつからあったのか」が分からないため、2つの可能性を考える必要があります。

もしシェルター時代からあったとすれば、そこで強いストレスを受けており、それがFIP発症の誘因になった可能性も考えられます。

もし引き取られてから始まったものであれば、現在の生活環境にストレス因子があるかもしれません。

実際、引き取り先には元気なお子さんがおり、猫ちゃんを驚かせてしまう場面もあるようでした。

であるなら、これからの生活環境を一度見直していただく必要があります。

なぜなら、ストレスはFIPを再発させてしまうかもしれないからです。


まとめ


FIP治療のゴールは「投薬をやめられること」ではありません。

“再発なく穏やかに暮らせること”こそが本当のゴールです。

今回、最終日の再診で外傷性脱毛に気づいたことは、治療を完走したからこそ見えてきた新しい課題でした。

ストレスとFIPの関係を踏まえ、これからの生活環境を整えていくことが、この子の未来を守るために欠かせないと感じています。
2025-10-29 05:00:00

猫のパスポートを見せてもらった日

カテゴリ : その他


猫の狂犬病抗体検査という珍しい依頼


先日、少し珍しいご相談がありました。

「猫の狂犬病抗体検査をお願いできますか?」という内容です。

日本では猫に狂犬病ワクチンを接種する機会はほとんどありません。

ですので、最初は少し驚いてお話をうかがいました。


海外を行き来する猫ちゃん


その猫ちゃんは、2年間イタリアで暮らしていて、
今年日本に戻ってきたばかりだそうです。

そして年末にはまたヨーロッパに渡る予定があり、
出国の手続きに抗体検査の証明書が必要とのことでした。


ペットのパスポート


航空会社によっては、ペットを手荷物として機内に同伴できるそうで、
ヨーロッパの多くの空港では、空港内でペットを連れ出せるとのこと。

“空の旅”にも、国ごとの文化があるんだなと思いながら話を聞いていると――
飼い主さんが、あるものを見せてくださいました。

それは、ペットのパスポートでした。

そんなものがあるなんて、正直知りませんでした。

「えっ、そんなものあるんですね!」と思わず声が出て、
中を見せてもらいました。

ページには、狂犬病ワクチンの接種記録がしっかりと記載されていて、
さらに猫ちゃんのの写真まで貼られていました。



「へぇ、すごいですね。このこと、ブログに書いていいですか?
写真撮らせてもらってもいいですか?」

気づけば、そんな言葉が口から出ていました。


ジャックとの静かな午後


そのすぐ横では、うちのジャックが受付の椅子で丸くなって寝ていました。

「おまえもつくっておくか。ま、海外なんて行くことないけどね」と話しかけながら、
心の中で「おまえはなんか、ドメスティックっていうか、
日がな一日、僕のそばで丸くなってる、
平和そのものみたいやなあ」と思いました。

目の前の猫ちゃんは、小さな体で日欧をまたにかけて生きている。

同じ“猫”という生きものでも、
その世界の広さが、なんだかまぶしく見えました。


青い小さな旅の証

僕が見せてもらったのはイタリアで発給されたもので、
青い表紙に金色の星が並ぶその小さな冊子は、
まるで一匹の猫の“旅の証”のようでした。


後記


国や文化がちがえば、
動物と人との関わり方も少しずつ変わります。

でも、どこにいても、
猫たちが安心して暮らせる世界であってほしい――
そんなことを思った一日でした。
2025-10-22 06:00:00

猫の糖尿病をもう一度考える ―― 食パン1枚から見える、猫の代謝のふしぎ ――

カテゴリ : 内分泌:ホルモンの異常や糖尿病


朝食の食パンから始まった疑問

※今日はダラダラと長い文章が続きます・・・ごめんなさいね。

朝、いつもの食パンを食べながら、ふと思いました。

「食パン1枚だけでも、血糖スパイクって起こるのかな」と。

“血糖値スパイク”とは、食後に血糖値が急上昇し、
そのあと急激に下がる現象のこと。

こうした血糖の乱高下が糖尿病のリスクを高めるといわれています。

そんなことを思いながらパンをかじっていたら、
頭に浮かんだのは――猫の糖代謝のことでした。


猫は糖を「食べる」より「作って使う」


野生の猫は、炭水化物(糖)をほとんど食べません。

それでも体のエネルギー源として糖を使えるのは、
糖新生(とうしんせい)という仕組みが常に働いているからです。

糖新生とは、食べたたんぱく質を分解して得たアミノ酸から、
自分で糖を作り出す働きのこと。

つまり猫は、「糖を食べる動物」ではなく、
「糖を作って使う動物」なのです


この“糖を自前でまかなう”代謝設計こそ、
人や犬とはまったく異なる――
猫という生きものの生命戦略です。

食後も止まらない、猫の“燃料工場”


糖新生は猫だけの特別な仕組みではありません。

人や犬にもあります。

ただし、人や犬では食事をして血糖値が上がると、
「もう糖を作る必要はない」と肝臓が判断し、糖新生はいったん休止します。

ところが、猫ではそれが止まりません。

食後でも糖新生が続くことが知られています。

なぜかというと――猫はそもそも「糖を食べない」動物だから。

炭水化物が少ないため、食後に入ってくる糖が十分でないのです。

そのため、肝臓は「糖を作る」という仕事をやめられないのです。


犬と猫の“燃料工場”のちがい


犬にとっての主な燃料工場は腸。

食べた炭水化物を吸収して糖を得ています。

糖新生はあくまで“補助の工場”であり、
飢餓など非常時に稼働するバックアップの仕組みです。

いっぽう猫ではこの構図が逆。

糖新生こそが日常的に動き続ける“メインの燃料工場”。

つまり猫は、食べた糖に頼らず――
たんぱく質から自ら糖を生み出して生きているのです。


ドライフードと炭水化物


現代の猫たちは、ドライフード誕生前とはまったく違う食生活をしています。

ドライフードの誕生は、人間の“便利さ”のため。

保存性を高め、粒を成形するために、でんぷんなどの炭水化物が必要でした。

その割合はおおむね30〜40%前後。

つまり、本来ほとんど糖質を摂らなかった猫が、
毎日の食事から糖を摂るようになった――
それが現代の猫たちの代謝環境の変化です。

ただしこれをもって
「ドライフード中の炭水化物が糖尿病の直接原因」と言っているわけではありません。

しかし、炭水化物の多い食事は血糖を上げやすく、
それが長く続くとインスリンの効きが悪くなる――
つまりインスリン抵抗性を招くことがあります。


猫の糖尿病と


猫はもともと、炭水化物をあまり食べない動物です。

そのため、インスリンを使って糖を処理する力がもともと控えめ。

そこへ肥満や高カロリー食が加わると、
その控えめな仕組みに負担がかかり、インスリンが効きにくくなります。

体がインスリンに反応しにくくなると、血糖は高いまま。

すると体は「もっとインスリンを出せば下がるはず」と思い込み、
膵臓に過剰な負担をかけてしまいます。

高血糖の本当の原因はインスリンが“足りない”ことではなく、“効きにくい”ことなのに。

そのため膵臓は疲れ、やがてインスリンを作る力そのものが弱まります。

この2つが重なったとき――糖尿病が起こります。

しかし、猫の糖尿病には希望があります。

インスリンの「効きにくさ」が中心の病気であるため、
早期の治療と体重・食事管理によって、
膵臓が力を取り戻す寛解が期待できるのです。

いっぽう犬では、多くが膵臓のβ細胞が壊れるタイプ(1型)に近く、
残念ながら寛解は難しいとされています。


インスリン抵抗性とは


インスリンは、血糖を細胞の中に運ぶ鍵のようなホルモンです。

通常なら、鍵(インスリン)が鍵穴(細胞の受容体)に入るとドアが開き、糖が入ります。

しかし抵抗性の状態では、鍵穴がしぶく、なかなか回らない。

まるで、鍵穴の油が切れたような状態です。

鍵はある。

鍵穴もある。

でも、うまく回らない。

それが「インスリンが効きにくくなった」状態です。


猫では「油切れ」が戻せることがある


猫の糖尿病の多くは2型に近いタイプ。

鍵穴(受容体)が壊れているわけでも、
鍵(インスリン)を作る力が完全に失われたわけでもありません。

適切なインスリン治療と食事・体重管理により、
鍵穴の動き(感受性)が改善し、
膵臓の疲れが回復することで、
再び自力で血糖を保てるようになることがあります。

報告によって差はありますが、
およそ20〜40%の猫で寛解が見られるとされています。


ケトン体と代謝のバランス


糖尿病が進むと、「糖があるのに使えない」状態になります。

細胞はエネルギー不足と勘違いし、脂肪をどんどん分解し始めます。

そのとき生まれるのがケトン体。

ケトン体は糖の代わりに使われる“もうひとつの燃料”。

猫はもともと炭水化物をあまり食べないため、
脂肪からエネルギーを得る仕組みが日常的に動いています。

つまり猫は、ケトンを作る工場が低速で常に稼働している動物。

それ自体は正常です。

ただし、糖が使えなくなるとこの仕組みが暴走し、
血液が酸性に傾く糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)に進むことがあります。

猫はこの「ケトン工場」が常に動いているぶん、
バランスを崩すとDKAに進むスピードが速いともいわれます。

静かで繊細な代謝の世界が、
ほんの少しの崩れで一気に暴走する――
それが猫の糖尿病の怖さです。


まとめ


・猫は「糖を食べる」より「糖を作る」動物。

・糖新生は食後も続き、日常代謝の一部になっている。

・ドライフードの炭水化物は血糖を上げやすく、
 長期的にインスリン抵抗性や膵臓疲弊を助長しうる。

・「インスリンに鈍い」とは、鍵穴の油切れのような状態。

・猫では、その“油切れ”が治療で戻ることがある(=寛解)。

・ケトン体は正常代謝の一部だが、暴走すると危険。


結び



猫の糖尿病は、血糖を下げることだけに注力していれば治る病気ではありません。

数字の向こうで、少し重くなった代謝の歯車を整えていく――
それが、この病気の本当の治療です。

焦らず、時間をかけて、
猫が本来もっているリズムを取り戻していく。

その積み重ねが、治療のすべてです。

猫は、静かに体の中で、今日も確かに
糖を作り、燃やし、また作りながら、生きるリズムを刻んでいます。

私たちができるのは、そのリズムを壊さずに見守ることです。
2025-10-15 06:00:00

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